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短編・エッセイらしきもの

トイレに

作者: 本谷文途

くだりが書きたかっただけ。

「はぁ〜トイレトイレ──」


 再放送のドラマを見終わり、希久(きく)はトイレに向かった。


 ──ガチャ


 トイレに入り、鍵をかける。

 そして、トイレのフタを開けようと手をかけた瞬間──


「ヤッホー! はじめまして!」


 勢いよくフタが開き、中から金髪でフワフワした髪をした男性が出できた。

 上半身だけ。それも裸。


「…………」

「んー? どうしたのかな!? あ、急にイケメンが出てきてびっく……痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い──!!」


 ガンッと希久は、フタを思い切り閉めようとする。

 男性は、バタバタと手をばたつかせる。


「何だお前! 人ん家のトイレで何してんだ! 変態!」

「待て待て待て! オレは、ここのトイレの王子だ!」

「……王子?」


 と希久はフタを押さえるのを止める。


「そうそう! トイレ王国の王子なんだよ! 毎日定期的にこっちの世界に顔を出すんだ。それで、清潔かどうか──」

「信じられるかバカ! キモいんだよ! 変態! 出てけ!」


 とまたフタを押さえつける。


「ちょっ、痛い! マジで! マジ痛いから!」

「うるさい! 黙れ!」

「……っんの子供だからって甘く見てりゃ……っ──ぬおああああ!」

「っ──?!」


 自称王子が、フタを押し上げる。

 そして、


「このオレに楯突(たてつ)くってことはなあ、こういうことなんだよっ──」


 とトイレの水を、希久に向かってかける。

 見事それは、希久の顔面に直撃した。

 ポタポタと顔から水が垂れる。


「……」

「ブハハハハハ! ざまあみろざまあみろ!」

「…………」

「何も言えねえってか?」

「………………」


 希久は、自称王子の言葉が遠くに聞こえていた。

 頭の中で、今起こった事を理解しようとする。


(今顔についている水は……いつも家族が排出するために使っている水で……トイレで……この水は……うっ──)


 やっと理解した時、希久の顔は真っ青になっていく……


「うっ……」


 そして口を押さえる。


「……え? ちょ待って、ごめんマジごめん。だからちょっ──」


 もちろん希久は、止めることもできず……


「うおえええええぇぇぇぇぇ──」

「ギャアアアアアアアアアアアア──」


         *


「……悪かった」

「いや……ぼくもごめん。しかも頭から──」

「言うな……泣きそうだから──」

「…………うん──」


         *


 あなたの家のトイレ、学校、または会社にも、もしかしたらいるかもしれません。

 だからくれぐれも、怒らせないようにしてください。

 希久と同じ目にあってしまうかもしれませんから──


まともな話を期待していたならすいません……。

くだりがやりたかっただけです……すいません……。

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