捩れた戦慄は戦場に響く
「くそ・・・」
ガンボーイが壁に激突した
「新手か?」
体制を立て直すと砂煙の中を覗き込むように
目眼を向けた
砂煙の中から灰色の機体が姿を現した
額に<ACS−000>と記されている
「<000>?」
「スコーフ・・・あれか?」
「あぁ・・・」
灰色のサイバーポッドはブースターを全開にして突っ込んだ
「同じ手が通じると思うな」
ガンボーイが左に滑りながら回避する
サイバーポッドは基本的に飛べないのだ
ガンボーイがマシンガンを連射する
しかし、灰色の機体は驚異的なスピードで反転し左へ走った
「おい!誰かラトルと通信つなげ!!」
「つなぎました!!」
スコーフが無線機を受け取る
「おい!聞こえるか?」
「「聞こえます!!この機体武器ないんですか??」」
「おちつけおちつけ、いいか?・・・武器はねぇ!!」
「「えぇ!!!??」」
「あったりめーだろ!?まだテスト段階だぞ?
だが安心しろ
左腕の爪は使えるぞ!!」
「「接近戦ですか!!?」」
「贅沢言うな、あいつは迎撃するだけでいい!!」
「「迎撃・・」」」
「敵討ちなんて今はかんがえるな!いいな!!」
「「・・・はい」」
灰色の機体は異常なスピードで突撃する
ガンボーイの機動力では捕らえきれない
爪が右腕をかすめた
「ちっ・・・」
赤い目眼が線を描く
突然、何かが外れる音がした
灰色の機体の背部のメインブースターが落ちた
「「なっ・・・!!」」
「しまった!整備不十分か!!」
「もらった!!」
ガンボーイが前に現れた
「「やられるか!!」」
灰色の機体は地面を蹴って横へ飛んだ
サブブースターで飛距離を伸ばす
「遅い!!」
ガンボーイの左腕だけが向けられた
無数の弾が着弾する
「「うわぁぁ!!!」」
灰色の機体が崩れるように壁に当たる
一発の銃声がハッキリと聞こえた
ユミルがガンボーイに傷をつけた
「あ?」
一瞬、ガンボーイの動きが止まる
「「!!!」」
使えるブースターをフルに使って突っ込んだ
爪が、まともに中心部を引き裂いた
「くそ・・・!!」
ガンボーイが後ずさる
そこへ追撃する
「「ん・・・」」
身体が妙な感覚を感じる
灰色の機体は突然後退した
ガンボーイがこれ幸いと突っ込んで来る
銃口がコックピットに接触した
「終わりだ!!!」
しかし、弾は発射できなかった
ガンボーイの腕を黒い光が包み込む
銃腕の先端は地面に落ちた
「空乏層!!?こんな時に・・・」
ガンボーイは右腕をもぎ取られたまま
来た穴から脱出する
「クロム・・・なさけないなぁ・・・」
「目的は達成した」
「だが・・・あの機体はここで討ったほうがいいだろう・・・」
ガンボーイの後ろから別のサイバーポッドが現れた
「最悪だ・・・」
「どうした」
ミドルが頭を抱え込むようにうつむいている
「あれは対サイバーポッド用の機体ですよ・・・」
「どいつだ?」
「ACSー021 スパイラルソード・・・向こうの三大機の一体です」
「まじか??」
「「問題・・・ないと思います・・・」」
「は?」
スパイラルソードが突っ込んでくる
しかし、穴は黒い光に包まれた
「な!空乏層??
クロム!!別の穴開けろ!!」
「弾切れだ・・・退くぞ」
「ちっ」
2機のサイバーポッドは背を向けることなく後退し、去っていった
朝日が真上に昇る
しかし、雰囲気は暗い
あたりはメチャクチャに荒らされている
この襲撃で、17人の命が奪われた
「・・・・」
ユミルは持っていた銃を落としてしまう
そのまま地面に崩れる
「おいラトル?そいつはそこに置いといていいから一旦降りて来い」
「「はい・・・」」
顎の少し下にある扉が開いた
「ご苦労さん!!!」
スコーフが降りてきたラトルに叫んだ
その声が無駄に響き渡る
「お前のおかげで被害は少なかったぞ?あははははは!!!」
しかし、声が出ない
その目線の先でユミルが泣いている
「気持ちまでは変わらなくても、声ぐらいは出せよ?」
「え?」
急にボリュームが変わった
「こういうときは、男が行かないとな!!
それが世界のお約束・・・だ!!」
ドンッと背中をおされて息がつまった
「は、はい」
無理やりに声を出して駆け出した
「スコーフ・・・」
ソルイドが歩み寄ってくる
「素朴な疑問なんだが・・・なぜ彼がこれを操縦できたんだ?」
「さぁな・・・」
「それだけじゃありません」
ミドルがソルイドの隣に立った
「彼は、恐らくーーーーーーー」
高台の上でユミルがうつむいている
「あの・・・」
「なに?」
即答だった
もはや反射でしゃべっているのだろう
「え〜と・・・・とりあえず・・・」
言いかけた瞬間
遺体が無いことに気がついた
「あの、エミリーさんは?」
「死んだ・・・見てなかったの・・・」
「いえ・・・身体は?」
「ずっと前に消えたわよ!!当然でしょ!!!」
(遺体が消える・・・?)
しばらく、その疑問が頭から離れなかった
「・・・失った時間は取り戻せるんですよ?」
「は?」
「ですから、失った時間は取り戻せるんです」
「そんなわけ無いでしょう!!!」
「いえ・・・えっとこの場合の時間は思い出って意味で・・・え〜と、忘れなければ永遠にその人は生きてる・・・・みたいな・・?」
漫画やドラマで言っているのはよく聞く台詞だが
実際に言うのは非常に恥ずかしかった
「意味がわからないいんだけど・・・」
「えっと・・・つまりですね・・・・」
「ま、云おうとしてることはわかったから・・・・」
立ち上がると、金色の髪が風に流される
「レーンの様子見てくる」
そういって通り過ぎて行った
「これで・・・よかったのかな?」
微妙な感じだったが、どうすることもできなかった
夜
亡くなった17人の葬式が行われた
誰もが涙を流す
それは遺族だけではない
この拠点にいる皆が、お互いのことをよく知っている
この場で涙を見せないのはラトルだけだった
(遺体が消える・・・黒い光・・・)
そんなことを考えている
突然、空から鐘の音が響き渡った
「なんですか?この音は?」
「黄金鐘と呼んでいるんだが・・」
説明してくれたのはスコーフだった
「この音が鳴る前か、鳴ってる間か、鳴りおわった後かに不思議なことがおこるんだ・・・」
漆黒の空に
鐘の音は響き渡った
だんだんSFっぽくなっていきます
ACS−000 パトリオット
この作品の主役機
原子社が企画廃棄処分にした機体をソルイド軍が回収し独自の技術で完成させた。
この機体の特徴はスピードとスタミナで
ケミストリー・リバース・システムとギガフリーズにより半永久的に最大火力で機動できるようになった
ACS−021 スパイラルソード
番号の一番右は戦闘距離をあらわしており
この機体は名前からもわかるように接近型である
また、ヒット&アウェイが基本のサイバーポッドを討ち取るための対サイバーポッド機体である




