失いたくないモノを失った時、愛国者は立ち上がる
「つっ・・・」
「ユミ姉!!血が!」
階段の前に来てようやく気がついた
地面に赤い雫が落ちる
「入ってスグ右に医者がいるから呼んできて!!!」
「は、はい」
ラトルは云われるがままに、階段を駆け出した
そして、入り口に駆け込んだ・・・・・つもりだった
「うわ!!」
なぜか壁のような物にぶつかった
そのまま、階段を転げ落ちた
「あんた馬鹿!!?なんで通行制限機器に突っ込むのよ!!!?」
ユミルが包帯とガーゼを取り出した
「私が行くから、止血しといて!!!」
ラトルに渡すと
階段を走っていく
入り口の前で立ち止まると
赤かったランプが緑に変わった
それから、数分と経たないうちにユミルが医者らしき人を呼んできた
「腕に弾が残ってるな・・・」
エミリーはゆっくりと階段を登っていく
「私達も中に入るわよ」
エミリーが登りきったのを確認すると
荷物を持って歩き始めた
「あの・・・腕、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫!!」
一時間経たないうちに手術は終った
腕に包帯が巻いてある
「さて・・・みんなに紹介しないとね・・・」
「え?」
食堂に入る
そこには大勢の人達がいた
「みんなー!ちょっと注目!!!]
全員が振り返る
「この子はラトル君って言って
しばらく手伝いをしてくれるから!!」
そんな話聞いていない
しかし、そのつもりでいたので問題はない
戦場で助けてもらったのに、タダで帰るわけにはいかない
「よ・・・・宜しくお願いします」
丁寧にお辞儀をする
「おう!よろしくな!!!」
タンクトップのオッサンが腕を上げて叫んだ
「ラトル君、あの人がエンジニアのスコーフさん
それで、え〜と・・・そこに座っているのが
偵察隊隊長のミドルさん」
「どうも」
眼鏡をつけた青年が振り向いて軽く頭を下げた
それから、一人一人紹介してもらった
しかし、覚え切れない
「んじゃあ!ここの掃除頼むわ!!」
スコーフが大きな倉庫に案内してくれた
「了解です!」
「お!いい返事だ!!!」
掃除するのは一人ではない
エンジニア総動員で掃除する
床は鉄粉でいっぱいだった
掃除が終ると
なにやら巨大なパーツが運ばれてきた
「な・・・なんですか・・・これは?」
「これか?これは、サイバーポッドの腕だ!!
こいつを取り付ければ
新型機の完成だ!!!」
次に
さらに巨大なパーツが運ばれてきた
夜になると
食堂はお祭り騒ぎだった
とても今戦争をしている風景には見えない
「君か・・・ラトル君は・・・」
上質な服を着た男性が近寄ってくる
「あ・・・はい」
「私はソルイド、この軍の指揮官だ」
「は・・・はじめまして!!!」
「指揮官と総大将でしょ?」
エミリーが後ろから話に入ってきた
「まぁ細かい事は気にするな
今後、よろしく頼むよ」
「はい・・・あの・・・いいんでしょうか?」
「ん?」
「もしかしたらボク・・・敵のスパイかもしれないのに・・・」
「あははははは!!!
その事なら心配しなくていいさ
通行制限機器に突っ込んで階段から転げ落ちるような人間が、アトミックなわけないからな!!!」
そう云ったのはスコーフだった
「スコーフさん?そんな言い方ないでしょう!?」
「あははは!!すまんすまん!!」
みんなが笑っていた
「そうそう・・・ソルイド・・・あれが完成したぜ・・・テストはまだだけどな・・・」
「そうか・・・」
イヤに静かな声で話していた
「ここ使っていいからね」
案内されたのは、意外に整えられた部屋だった
「なんでコイツがここにいるの?」
風呂を済ませたユミルが入ってきた
隣に見知らぬ女の子がいる
「いいでしょ?無駄に広いんだから」
どうやら、ここはこの3人の部屋らしい
見知らぬ女の子がこちらを凝視していた
「そういえば紹介してなかったわね
ラトル君
この子はレーン
妹みたいなものだから
よろしくね」
「あ、はい!」
「そっちで寝てね」
ユミルが使われていないベッドを指差した
「は、はい」
「それじゃあ、あたしはまだやることがあるから!
オヤスミ」
「おやすみなさい」
月明かりが差し込むせいか
妙に目がさえる
外に出る
ここは見晴らしがいい
外壁より高い場所にあるので
下界を見渡すと
結構美しいものだ
遠くを見れば
崩れた街が見える
「あそこが首都だったのよ」
エミリーがカップにコーヒーを入れて
隣に立った
「どうして、あんなことに?」
「あれは・・・サイバーポッドが壊したの」
「サイバーポッド?」
「そぅ・・・倉庫で、巨大な機体が組み上げられていたでしょう?」
「はい・・・」
「あれが、サイバーポッド
人型の機体で
主に拠点破壊が主流なの
サイバーポッド同士で戦うのは効率が悪いから・・・」
「壊して逃げる・・・が基本なんですか?」
「そうそう」
しばらく、時間が流れた
「ごめんね」
「え?」
「なんだかワケのわからない内に
戦争に巻き込んじゃって・・・・」
「いえ・・・むしろ感謝しています
あのままあそこにいたら
今頃どうなっていたか・・・」
「・・・」
「・・・」
「もぅ・・・寝ましょうか・・・」
「は・・・・はい」
部屋に入ると
2人の少女が同じベッドで眠っていた
「まだまだ子供ね」
笑いながらそう云った
「目標を確認した・・・」
「もう少し待ってろ」
「時間が無い・・・・先に行くぞ」
午前4時
突然爆発音がした
警報が鳴り響く
「なに?」
ユミルが起き上がり
窓の外を見た
「!!!!
敵襲!!!?」
外壁が壊されて
サイバーポッドが進入していた
「あの機体・・・」
ユミルは部屋を飛び出した
「増幅機器を用意しろ!!!」
「撃て!!」
電子砲がいくつも線を描いてサイバーポッドに狙いを定める
しかし光学放射砲よりもはるかに遅い電子砲は地面を焦がすだけだった
手がマシンガンになったサイバーポッドが
城壁付近の施設を破壊していく
幸い
まだ死傷者は少ない
「これ以上被害をだすな!」
ソルイドが指揮をとる
「まさか、通行制限機器を突き抜けるとは・・」
「あれは、前の機体じゃない!
強化されてる・・・」
「なるほど・・・おい!まだ準備はできないのか!!?」
「まだ準備中です!!」
「ナパームだけでも使えないのか??」
「弾の補充がすんでいません!!!」
「くそ・・・」
地面を滑りながらサイバーポッドはマシンガンを連射する
「あれはなんですか???」
ラトルが叫ぶように聞いた
「敵のサイバーポッドだ・・・」
すると
ミドルが携帯パソコンを持って近づいてきた
「あれの正体がわかりましたよ
ACS−117 ガンボーイ2フロンティアです」
「ACS?]
「ACSだ」
ガンボーイと呼ばれるサイバーポッドは
次々に施設を破壊していく
突然、大きな発射音があった
サイバーポッドの腕に小さな穴があいた
「ユミル!!」
エミリーが見る方向にユミルが対物狙撃銃をもっていた
「あの子・・・あんなところに居たら・・・」
エミリーは駆け出した
「まて!エミリー!!!」
ソルイドを無視してエミリーが走り出した
「おい!ラトル!!これ運んでくれ!!!」
スコーフが大きな大砲のようなものを引きずってきた
「これは!?」
「増幅機器だ!
こいつで注意をそらせるんだ!!」
「わかりました!!」
高台の端っこに設置して
小型の電子砲を撃った
すると
増幅機器を貫通する
しかも、非常に大きな電子砲になっていた
しかし、ガンボーイは簡単に避けた
そこへ、ユミルの一発が機体の中心部に当たる
「この餓鬼・・・」
突然、進路を変えて
ガンボーイの小型マシンガンの銃口がユミルに向けられた
ユミルは硬直した
銃口が火を吹いた
ユミルは死を覚悟した
しかし、身体に異常はない
恐る恐る眼をあけた
「!!!!」
朝日が昇り
眼の前に影があった
目がなれていくにつれ
一つの感情が芽生え始める
影がゆっくりと
倒れた
「ユミ姉!!!」
その身体には無数の穴があいていた
「ユミ姉!!!ユミ姉!!!!!」
「そんな・・・・」
ラトルは何もできない自分に嫌気がさした
「次は貴様だ・・・」
別方向から電子砲が飛んでくる
「ちっ・・・」
ガンボーイは一旦後退する
すぐに医者が、エミリーの側に駆けつけた
「マレーンさん!!!ユミ姉は!!!」
「・・・・」
医者は首を横に振った
「そんな・・・まだ間に合うかもしれな」
「即死だ・・・」
医者はエミリーから離れないユミルを気遣って
危険な前線に残る
「ボクは、またなにもできないのか・・・」
エミリー達と出会ったあの夜も
自分はなにもできなかった
いや・・・まだ何かできるかもしれない・・・・
「スコーフさん・・・あの機体ってテストできるように準備してましたよね・・・」
「あ?あぁ・・・」
それを聞いてラトルは走り出した
「まて!!ラトル!!!おまえ!!」
次々に砲台が破壊されていく
あらゆる施設が炎上している
「さぁ・・・終わりだ・・・」
再びガンボーイがユミルに振り向く
「一緒にあの世に送ってやるよ」
次に向けられたのは
主砲のマシンガンだった
「ユミル!!立て!」
医者が叫んだが
ユミルは精魂尽きている
「くそっ・・・」
突然、巨大な影が空を飛んだ
そのままガンボーイに激突する
「くっ・・・なんだ!!?」
砂煙がたつ
砂煙の中に影が映っていく
目眼が赤く光った
機体の説明です
ACS−117 ガンボーイ2フロンティア
ガンボーイを強化したサイバーポッド
両手をマシンガンにしたため、拠点破壊力と装弾数の増加に成功した
ただし、あくまで拠点攻略用なので狙いどうりに弾が飛ぶ事は少ないため、対サイバーポッドには向かない