運命の糸はからみつく
「すまねぇな・・・」
「いえ、別にかまいませんよ」
「それじゃあ行ってきます」
「行ってきます・・・」
ラトルはゲートで見送りに来た数名の技術班主体の軍勢に手をふった
レジスタンスは国ではないため食料などは自給自足だ
しかし、それでは間に合わない部分も多々存在する
そういうときは悩まずさっさと買出しに行くのだ
レジスタンスの本拠地は黄国の近くにあるためいつもここに買出しに行く
しかし、近いといっても軽く20Kmはある
なので乗り物を利用する必要がある
しかし、サイバーポッドを使うわけにはいかない
そこでいつも装甲車両を軽装化したものを使う(今回運転免許は持っていないことは内緒)
荒野は基本的に無法地帯なのでいくら飛ばしてもかまわない
可能最大速度で走れば1時間かからずに黄国領土へ侵入できる
黄国は建国30年ほどしかたっていないため
無法地帯付近での検問はない
なので黄国への侵入は容易だ
そのかわり、町に入るときに武器を所持していないかチェックされる
が、買出しに来ただけなのでこれは問題ない
「さて・・・まずは・・・工具」
ラトルが買い物リストを広げていった
B4サイズの紙にメモがビッシリ書いてある
「貸して」
ユミルが紙を受け取るとそれを半分に切った
「こっちお願い
私達はこっち買ってくるから」
そう云うと車から降りてレーンの手をとった
「行ってきます・・・」
レーンが顔だけ振り向いていった
それに笑顔で手を振って紙をみた
ザっと目を通してわかったことがある
重量級の荷物しか書いていない
やられた
と思ったが、まぁ女の子二人に重い荷物を運ばせるのも忍びない
ラトルは地図を見ながらリストの一番上にある工具を買いに車を走らせた
「ついでだからなんかうまいもんでもつまんできなよ」
といってアカネが持たせてくれたお金でユミルはレーンにソフトクリームを買った
「ユミル姉さまは?」
「ん?私はいいよ、他のやつ食べるから♪」
別に食べるつもりはないがレーンに気を使わせるわけにはいかないので軽いウソを言う
キョロキョロとあたりを見渡して雑貨屋を探した
レジスタンス本拠地周辺には黒鉛を掘り出せる炭鉱はもちろん、木一本すらない
エンピツや紙などの文具も買ってこなければならない
「毎度ありー」
重たい工具を地面スレスレの高さでぶら下げてラトルは車につんだ
「ふぅ〜」
中に入っているのは大量のネジやクギだ
リストの一番上を切り取って丸めた
次は重油だ
ついでに帰り用の燃料も補給しなければならない
「はぁ〜ってかなんでこんなにお金あるんだろぅ?」
疑問を口にしながらラトルは車を走らせた
「んだ?てめぇ!!?」
「おぅ上等だ!!!オモテにでろ!!」
「ここがオモテだろがバァ〜カ!!」
っと、よく聞く喧嘩の声が店のテラスから聞こえた
「え?なにごと?」
ラトルは車を止めた
別にとめたくてとめたのではない
野次馬が道路に集まってきたのだ
男が二人
テラスで殴り合いを始める寸前のようだ
「やめろ」
小さな声が聞こえた
野次馬には聞こえたようだ
しかし、本人2人には聞こえていない
「やめろ!」
しかし、それにかまわず片方が殴った
「ったく・・・」
ラトルの前を青年が通った
後ろから恋人らしき少女もついていく
「いいかげんにしろ!!」
青年が腕をつかんだ
「んだてめぇ!!?」
男は青年に殴りかかろうとした
青年は目つきを変えて男に膝蹴りをいれた
「ぐっほ!!」
男は一撃で倒れた
「な・・・」
もう一人の男が怖気付く
「あの人すご・・・」
両手に袋をもったユミルが車に荷物をつんだ
レーンも一生懸命袋を持っている
「あれ?ここにいたんですか?」
「まぁお昼時だからね・・・」
ラトルが再びテラスに目をやった
「ってっめーー」
敵味方の区別がつかなくなった男は青年にイスを投げつけた
青年はそれを腕で弾きかえした
すかさずまわし蹴りで下顎を吹き飛ばした
男はそのままテーブルに倒れこんで失神した
「きゃーーー」
その声に青年は群集に目をむけた
さきほど弾き返したイスが野次馬の上を漂っている
「しま・・・!!!」
慌ててイスにむかって走り出す
しかし、追いつけるわけがない
「ユミルさん!!」
「え?」
ユミルはラトルの声にビックリして硬直した
後ろを見れば白いイスが飛んできている
思わず目を閉じた
なにか鈍い音がした
ユミルはゆっくりと目を開けた
目の前をラトルが倒れてくる光景が流れた
ラトルはイスをつかんだまま車に落ちた
そして運悪く工具の袋に頭をぶつけた
「いった!!」
ラトルは叫んだ
そして、失神した
目を開けるとそこは誰かの部屋のようだ
ソファの上で寝ているのが身体の感触でわかる
オレンジ色のソファからゆっくりと身体を起した
「目がさめたようですね」
青年がホットミルクを差し出した
「あ、どうも」
「すまないね、まさかイスがあんな所に飛んでいくとは・・・」
「いえ・・・それより一緒に女の子を見ませんでしたか?」
「あぁ、彼女達なら隣の部屋で女の子3人でゆっくりしているよ」
3人ということは、おそらく一緒にいた少女といるのだろう
手にもったホットミルクを飲んだ
「ボクはラトルといいます」
「ロンだ、よろしく」
ロンの一人称を忘れてしまった今日この頃
一人称をださないようにセリフを考えるのは実に大変です^^;