優しい光は残酷の予兆を語る
『ここは普段、こんなに静かなのか?』
『荒地だ・・・どこも同じようなものだろう』
2機のSPが暗闇の荒野を進む
その後ろを撤退用運搬車両が進んでくる
(ん〜・・・なんかややこしいことになってるなぁ・・・
いつでも出れるように今日ははやめに寝ておこう)
ラトルは外壁より上にある通路を歩いていた
この周辺の拡大地図と世界地図を見ながら歩く
(・・・)
この周辺での戦闘が予想されるため
地理を理解するためにもらったのだが・・・
(これ・・・どうやって作ったんだ?)
衛星など打ち上げたことがないのは明白だった
周辺地図ぐらいなら作れるだろう
しかし、世界地図まであるのは明らかに不自然だ
「・・・・考えてもしかたないか!」
「なにがしかたないの?」
「うぉぉぉ!!!!!!」
後ろからテンションの低い声がした
そこにはユミルとレーンがたっていた
レーンはまだラトルになれていないのか、ユミルの腕をつかんで若干後ろにいる
「夜中にこんなところで独り言いってたら変体に間違われるわよ?」
「す・・・すみません」
部屋は相変わらず素っ気無い感じだ
ホコリなんかのゴミはない
この石の部屋にあるのはベッドが2つ
どこの部屋もこんな感じなのだそうだ
レーンがベッドに入る
するとものの数秒で寝息を立て始める
ユミルは毎晩寝る前に必ず窓から月を見上げる
「月・・・キレイですよね」
「・・・・うん」
月を見上げるユミルの髪は昼間より輝いて見える
肌もよりいっそう白く輝く
どこか神秘的なオーラだ
その反面、どこか寂しげな感じもする
「月・・・好きなんですか?」
「あんまり好きじゃない・・・でも、キライでもない」
正直、ラトルはユミルと今まで話した時間でいえば今回が最長だった
「満月の日に・・・私は全部亡くした・・・でも、大切なものも増えた・・・
もぅ、半分になっちゃったけど・・・」
ラトルが別の窓をのぞいた
「・・・・あれは・・・」
『ここか・・・』
ゲインがアトランティスの動きを止めた
『っで?どうする?』
『ふむ・・・ヘタに隠れると逆に見つかった時に不意をつかれかねん
正面から突っ込むぞ』
『了解』
デスサイズが武器を構えた
灰色の機体に灰色の釜
そして、灰色の釜にかすかに光がやどる
刃は、高圧電流だ
数千度にまで上昇した釜は
たいていのものなら焼ききる
『どーしていっつも夜中に来るのかなネェ・・・ん?』
外壁の向こうで爆発音がした
『なんだ!!?』
リオンが慌ててスクリーンに注目した
『ふ・・・バレバレ・・か・・』
ゲインが余裕たっぷりに答えた
その瞬間、昼間のようにあたりが明るくなった
『ラトル・・・お手柄だぜ!』
『窓からたまたま見えただけですよ』
外壁の入り口に2機のSPがたっている
『あれは・・・ファイアストームとレジスタンスの新型!!』
デスサイズは臨戦態勢にはいった
『援護のつもりが思いっきり主戦力になったな』
ゲインが冗談口調で言った
『『『『行くぞ!!!!』』』』
三日月はきれいな光を放っている
RCS−034デスサイズ
対スパイラルソード用に作られた機体
機動力にすぐれ、巨大な高圧電流の釜を装備
他にも肩にサブマシンガン
背中に翼のような砲身のレーザーキャノンを装備している
高圧電流の釜はコックピットを引き裂くと同時にパイロットは感電死する