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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
悪魔編
9/67

大罪館

 帰り道、リナリアは急に耳鳴りに襲われた。

「ぐうっ・・・!」

 照明の技術がそれほど進んでないギルバート王国では、夜になると人の通りは殆ど無い。無人の通路で、リナリアは倒れこんだ。

 吐き気ならともかく、耳鳴りともなるとリナリアもアニマたちを疑うことはしなかった。しかし、異常なほど長くつらい耳鳴りに顔を歪めた。

「ッ・・・!」

 うずくまるリナリアに、近づいていく影があった。

「・・・」

 レヴィが、静かにリナリアを見下ろしていた。リナリアは耳鳴りのせいでそれに気付いていない。

「すいません、これも任務なので・・・」

 レヴィの振り下ろした手刀が、リナリアの首筋に直撃した。

「ッ、かはっ・・・」

 倒れたリナリアから緑色の光が飛び出して、地面で蛇へと変化した。

「ありがとうございます、ヴァミちゃん」

「キシャァー!」

 レヴィは軽々とリナリアを担ぎ、何処かへと消えていった。






「どういうことですか・・・? 悪魔って」

「微弱だけど、リナリアに悪魔と同じ気配がしたの。でも、見るからに悪魔ではないでしょう? ということは、悪魔が憑依しているか忍びこんで居るのが有力よ」

「つまり、確かめるために呼んだということですか?」

「そう、結論は悪魔が忍びこんでいる、ということよ」

「なら、何故知らせなかったのですか? 対策はあったでしょう」

「・・・様子を見ましょう」

「わかりました・・・」

 類は後々後悔する。ここで、主君の意見に反対してでもリナリアの下へ向かうべきだと。

 事件は翌日起きる。






「ぐおぉおおおー・・・」

 職員室での臨時会議中、臨時教師であるルナドは医務室でイビキをかいて寝ていた。

 医務室のベッドのカーテンを力強く引きながら、養護教諭が女らしからぬ声で叫んだ。

「・・・五月蝿い! 少しくらい静かに寝れないのか!?」

「あぁ!? だぁ、五月蝿いな」

「五月蝿いのはどっちだ! 寝るのは良いが、私の邪魔をしないでもらえるか!?」

「お前・・・普段利口なだけに怒ると怖いな」

「黙れ。さっきだって、突然変な仮面引っさげて転がり込んできたくせに」

「まあまあ」

 そう言ってルナドはもう一度横になった。

「俺は生憎夜行性じゃないんだ。夜には眠くなる」

「じゃあ帰れ」

「・・・サディストめ、生徒の前ではネコかぶりやがって」

「生徒の前でネコをかぶっているのではない、お前の前できつくしているのだ」

「・・・」

 ルナドは諦め、眠りに落ちた。






「ベルゼ、連れてきましたよ」

「ご苦労様。褒美です」

「おぉ!」

 ベルゼの投げたキャンディを猫のようにキャッチすると同時に、気絶したリナリアをベルゼが抱える。

「最後の材料ですね・・・生きた人間」

「それでは、あたいは番の仕事に戻りますね」

 レヴィは飴玉を口に放り込んだ。

「お願いしますよ、異空間とはいえ何が迷い込むかわかりませんからね」

 ベルゼはリナリアを抱えて薄暗い館の中へ向かった。

 館の表札には、【大罪館】と彫られていた。

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