不審者
「お待ちしておりましたよ、リナリアさん」
「はあ・・・は、早く家の鍵を返して下さい」
「さて、なんのことでしょう。とにかく、食事をどうぞ」
「・・・」
類に案内され食堂まで行くと、既にアニマが席についていた。
「いらっしゃい、リナリア」
「はい・・・」
「はいこれ、貴女の家の鍵と財布よ」
「あ! か、返して下さい!」
「やだ」
アニマは笑顔で拒否した。
「な・・・ぁ!?」
「別に、絶対返さないってわけじゃないわ。さて、どうぞ食べて頂戴。念の為言っておくけど毒なんか入ってないわよ。そんな回りくどいことするなら動脈斬り裂くし」
「ッ・・・」
「話なら食事中でも出来るわ」
リナリアは、顔を真っ青にしながら食事を始めた。リナリアは、逃げようとしたら殺されると確信した。
「で、貴女を此処に呼んだ理由だけどもね、貴女に聞きたいことがあるのよ」
「な、なんでしょう」
「貴女、今日の間校舎内でアンケート採ってたじゃない?」
「は、はい」
「あの二人にはアンケート採ったかしら」
「いえ、少なくとも私は採ってません」
「そう」
アニマは肉厚なステーキを口に放り込みながら話す。
「正直、話すこともないのよね。ただ、あなたには此処にいてもらったほうが都合が良い」
「?」
「私の暇つぶしに」
「ひ、ひどい・・・」
突然、天井が軋む音がした。類がそれに反応して上を向く。
「お嬢様・・・」
「行ってらっしゃい」
「了解しました」
類は飛び上がって、小さな窓から外へ出ていった。
「さて、もう食べ終わったかしら? なるべく早く出たほうがいいわよ」
「え・・・?」
アニマに連れられてリナリアは食堂の外へと出ていった。
「あ、あの・・・」
「なに?」
ちなみに、リナリアはまだ食事の半分も食べ終えていなかった。無理矢理追い出されたような状態だ。
「何が分かるんですか? 類さんは、何をしに・・・」
「しっ」
「?」
屋根の上で、誰かが走り回る音が聞こえた。
「誰ですか、貴方は」
類は館の屋根の上で謎の男と対峙していた。男は体を覆うようにマントを羽織って、顔は深く被ったソフト帽と仮面で隠れていた。
「・・・」
「なるほど、そういうつもりですか」
類は懐からナイフを取り出した。
「目的は知りませんが、少なくともこの館の敷地内から出ていかなければそれなりの対応をさせてもらいますよ」
「・・・」
男は少し考えると、帽子を被りなおしてマントを翻した。マントが男の手から離れると、男の姿が消えていた。
「一体、誰だ? 悪魔が偵察に来ていたとも考えられるが・・・」
誰も居ない屋根の上で、類はナイフを懐に仕舞った。
「お嬢様、特に何もありませんでした」
「そう」
類の報告を聞いたアニマは、ぶすっとした顔で頬杖をついた。アニマとリナリアは食堂に戻ってきていた。
「で、本当は何があったのかしら? 本当に何も無いわけがないでしょう」
「はい」
「はい、ってあんた・・・」
「仮面を付けた怪しい男が居たので、適当に追い払っておきました」
「そこは捕まえなさいよ」
「言われていませんでしたので、最善の方法をとりました」
「まあ、いいわ」
「あの・・・私もう帰っていいですか?」
「いいわよ」
「え、じゃなくて・・・鍵・・・」
「ああ、忘れてた。はい」
「では」
リナリアは、逃げるように帰っていった。
「で、一体何のためにリナリアさんを呼んだんですか?」
「・・・分かってなかったの? 私が貴方に指示を出した時点で気付いているものだと思ってたのに」
「いえ、正直分かっていませんでした」
「じゃあ、教えておくわ。あの子・・・自覚はないだろうけど、体内に悪魔が潜んでいるわ」
「え・・・?」
類は動きを止めた。