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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
悪魔編
7/67

類の企み

「おかえり、類」

「只今帰りました」

「同じくです」

「類、やってくれちゃったわねー」

「・・・すいません」

「まあいいわ。とにかく、あの悪魔が問題ね」

「はい。一体、何をしたのかもわかりませんし・・・」

「でも、『どうせもう街を出る』って言ってましたよね」

「そうね。でも・・・嫌な予感がするわ」

「やめてくださいよ。お嬢様が言うと本当になりそうなんですから!」

「あら、ごめんなさい」

「お嬢様、夕食のご希望はありますか」

「んー・・・じゃあ、肉で」

「了解しました」

 類と神菜子は厨房へ、アニマは自室へと向かった。

「さてと、今日は一人分多く作らなくては」

「なんで?」

「客人を、招いていますので」

 類は微笑んだ。






「これで全員か。一体何があったんだか・・・」

 ルナドは、医務室で一人つぶやいていた。医務室の中には、倒れた生徒、野次馬の他にはルナドと養護教諭、そしてリナリアしか居ない。教師数人も倒れていて、養護教諭を呆れさせた。

「全く・・・教師が生徒と一緒になってどうするんだか」

「そのとおりですよ。面倒を見る私の身にもなって欲しい」

「・・・」

「そうだ、お前・・・なんて言ったけ?」

「リナリアです。二年C組です」

「そうか、覚えておく。とりあえずお前帰っていいぞ。後始末は教師がする」

「はい」

 リナリアは、帰り支度のために自分の教室へ走ってい、こうとして歩き始めた。校舎内を走ることに抵抗があるようだ。

 リナリアのいなくなった医務室で、ルナドが口を開いた。

「・・・俺も、仕事するかな」

 ルナドは、医務室をあとにした。

 数分後、倒れていた生徒たちが次々と起き上がった。

 後日、学校側はこの事件を『集団貧血』と公表した。






「はぁ・・・」

 リナリアは、溜め息をつきながら家路に着いていた。彼女がため息をつくのも当然で、普通に考えて目の前で人が次々と倒れたり吸血鬼が現れたりすればパニックになる。彼女がそうでないのは、彼女が不思議なことを望んでいたからかもしれない。

「どうしよう、帰る前に先生に『明日一回登校させてみて、様子を見てその後の方針は決める』って言われたけど・・・」

 彼女は現在一人暮らしで、田舎暮らしの両親のもとを離れて生活している。親に頼りたくないと、自分で学費を貯めているほどだ。

 家についたリナリアは、あることに気がついた。

「あれ・・・? 鍵が・・・」

 無用心にもリナリアがポケットに突っ込んでおいた家の鍵が、いつの間にか無くなっていた。ポケットというのは、制服の上着に付いているもので、リナリアは今日一日上着を脱いでいない。というのも、クリスマス前の気温では上着なしに活動することが困難だったからだ。

「おっかしいな・・・まさか盗られた?」

 リナリアの家に合鍵はなく、あったとしても家の中だ。

「どうしよう・・・入れない?」

 十二月の寒空の下、例え一日でも夜を過ごすのは不可能に近い。しかし、鍵が見つからないなら、何処かに泊まるしか無い。だが、リナリアはさらに残酷な事実に直面する。

「・・・財布も、無い?」

 現金の入った財布までもが無くなっていた。ここまで来ると、原因は確実にスリである。そんなとき、上着の中に覚えのない手紙が入っていた。

『貴女を今夜のディナーに招待します。どうぞ、いらっしゃいませ』

 それを読んでリナリアは確信した、財布と鍵を盗んだ犯人を。

 仕方なく、リナリアは吸血館へ向かった。






「ルシファニー、実験は成功しました」

「そうか、これで・・・実行に移せるな」

「はい。しかし、準備期間に二週間は必要です。完成は、【忌々しい祭の日】となりそうです」

「日付としては、いいな。俺の先祖を堕落させた神への宣戦布告としては丁度良い。だがな・・・それでは俺が退屈じゃないか」

「ちゃんと考えています。今日出会った男・・・間違いなく魔族でした。それに、もう一人・・・どうでしょう、ゲームでも」

「・・・よし、ベルゼ。明日、始めるぞ」

「了解しました」

 それから、薄暗い館は不気味なほど無音になった。

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