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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
66/67

一段落

「『おっと、言い忘れてたわ』」

 装置のセッティングをしながら、サタニットが呟いた。

「『この装置の転送は、有意識状態だと精神に負担がかかって最悪の場合狂うこともある。それと、先刻なゆたと話したけど、貴方達の呪術は元々彼女の父親のものかも知れないの。そこで、レヴィに協力してもらうわ』」

「もひょへ!?」

 口一杯に果物を頬張っていたレヴィが情けない声をあげた。

「『レヴィに一旦、全員の能力ないし長所を吸収してもらう。レヴィの能力で長所を奪われると、対象者は気絶するからこれで転送条件はクリア。そして、レヴィはその後能力を持ち主に返す。この時、能力は本来の持ち主の所に向かうから十中八九なゆたの物になるでしょうね。これでいいかしら』」

「・・・私は構わないけど、質問いいかしら」

「えっと、珂礼? だっけ」

「もう一人、青い髪の子が居たでしょう。あの子に渡したい物があるの。彼女なら・・・」

「正直私が聞きたい」

「・・・」

 その時、食堂の扉が開きベールが食堂に入ってきた。その手には、一冊の本が握られていた。

「これは・・・どういう集まりかしら?」

「ベール!」

 マモーネが立ち上がり、ベールに歩み寄った。

「今までどこに・・・」

「少し、この館を探索させてもらったわ。おかげで、こんなものも見つけられたしね」

「それ・・・って私の!?」

「あら、貴女の?」

「確か私の部屋に締まってあったはずなんだけど・・・」

「いい本の匂いがしたから、入らせてもらったわ」

「な、なんという・・・」

「そんなことより、ベール。あんたに用だってさ」

「サーちゃん、またその装置使うの? 魔力の調達元はどうするのよ」

「まだ魔力が残ってる。使い切っちゃおうと思って」

「そう。で、私に用って何?」

 ベールの前に珂礼が出て、何かを手渡した。

「・・・これは?」

「いつか分かるわ。今は、これをとっておいて」

「まあ、良いわ。どうせ邪魔になるほど活動しないし」

「じゃあ、私の用は終わったわ」

「『それじゃ、閉鎖空間も既に出来てる。レヴィ、よろしく』」

「は、はい!」

 レヴィは髪の毛を撫で、十一人の前に出た。

「『それでは、失礼します』」

 レヴィが左目を露わにすると、レヴィの目を見た者が次々と倒れていった。

「お返ししましょう」

 レヴィの胸から抜け出た緑色の光は、ほとんどがなゆたの元へ向かった。

「珂礼さんと緑さんは、自身の能力と長所でしたからなゆたさんのところには向かいませんでしたね」

「さぁて! これでお別れだ」

 レヴィとサタニットが離れ、装置が起動した。

「それじゃ、あとはマモーネよろしく」

「了解」

 十一人は消え、マモーネも黒い霧に包まれて消えた。

「さて、私達も帰るとするかな」

「そうね。ルシファニーが癇癪起こしても面倒くさいし。何より眠いわ」

「と、言うことで僕達帰るよ。名残惜しいなあ」

「あんたは早く帰れ、変態医者」

「非道いなあ。まあ、またいつか」

「・・・貴女、名前は?」

「私? 零草神菜子。あ、その本はあげるわ。一字一句覚えるほど読んだし」

「あら、悪いわね。じゃあ、貰って行くわ」

「じゃあねー。またいつか」

「また来なさいよ。敵じゃなければ大歓迎だわ」

 アニマが手を振ると、サタニット達は黒い霧に包まれて消え去った。

「さてと、事件も一先ず落着ね。これであの女が見つかれば万々歳なんだけどね」

「無理だろうな」

「まあ良いわ。それよりアリオス、バーベキューの話・・・忘れてないわよね」

「・・・覚えてたか。今度予定があった時にでもうちに招待するよ。普通なら会社の幹部でも入れねえからな」

「ほほう。楽しみにしてるわ」

 そうして、その日の晩餐会はお開きとなった。

 後日、吸血館にはアリオスから食事の誘いと共に、警察が今回の事件を敵国の侵略者による侵略事件とし、主犯格以外が死亡、主犯格の女は逃亡し行方不明と発表したという新聞が届いた。

「アリスさんの仕業でしょうかね」

「でしょうね。彼女、只の警察官じゃなさそうだし」

 類は新聞を畳むと、懐中時計を開き時刻を確認した。

「ところでお嬢様。少し相談したいことがあるのですが」

「何かしら?」

「・・・僕の、魔力のことです」

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