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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
65/67

吸血館食堂にて

 アニマのもとには、丑屋と寅も集まった。寅は目を覚まし、ふらふらとしてるものの歩いた。

「『まだフラフラするけど・・・卯鷺は、倒せたんだよね? なら、良いかな?』」

「『・・・もう、こっちはどれだけ心配したと・・・』」

 そうして、全員はまとまって吸血館へと向かった。

「ただいま! マイホーム!」

「あ、お帰りなさいませお嬢様」

 吸血館に到着したアニマ達は、門の前に居たレヴィと辰蒔、エントランスに居たサタニットと珂礼を含めて、食堂へ集まった。食堂は全員が入っても余裕があり、突然の来客で戸惑うほかの使用人に指示しながら類と神菜子、そして事情を理解したリナリアが配膳を行った。

「・・・アニマ嬢?」

「何? アスモ」

「僕達すぐ帰るって・・・マモーネが言わなかったっけ」

「すぐ食べて帰ればいいじゃない」

「そんな無茶苦茶な!」

「まあ、良いんじゃない? ちょうど、私もお腹が空いてきたところだ」

「そうだ、サタニット。ベールはどこだ?」

「先刻から見当たらない」

「はぁ!?」

「まあ、とにかく食べてって」

 アニマに勧められ、大罪魔も出された食事に手を付けた。

「貴方達も、食べて行って」

「気持ちはありがたいが、その前に」

「?」

「改めて、自己紹介をさせてもらおう。卯鷺の名前で覚えられても困るからな」

「ああ、どうぞ。寧ろ、全員名前を聞かせてほしいわね」

「俺は灰坂千雨。妖猫寺麟之助と共に、悪質な妖怪退治を生業にしてた」

 自己紹介を終えると、千雨はほかの元十二支罪国組メンバーに何かを呼びかけた。すると、丑屋が話し始めた。

「『私は【黄長望きちょう もう】。巫女をやってるわ』」

「ん? ちょ、類? 通訳して」

「承知しました」

 二人のやり取りを無視して、寅が話し始めた。

「『おいらは【黒頭牙こくず きば】。姐さんと一緒に、神社で術の修行中』」

「『私は【辰緑しん りょく】だ。清水の国で、武闘家をしている』」

「私は稗田珂礼。日の本の国の人間側のお偉いさんの補佐兼書記」

「『俺は茶谷亙。飛脚やってる』」

「『・・・下河青葉。暗殺業をしている』」

「『私は、園咲紅子。とある、陰陽師の、式神』」

「『俺っちは橙太佐助! 俺っちに逆らえる犬は、居ないといっても過言じゃないぜ!』」

「『私は笹原紫だ。大工仕事してる』」

「『私は妖猫寺なゆた。国に帰ったら父上の後を継ぐことにします』」

 全員の自己紹介を聞き終え、アニマは口を開いた。

「ところで、どうやって国に帰るわけ? この国の警察も馬鹿じゃないわ。記憶操られてたなんて、人間には通じないわよ」

 アニマの言葉を、類が通訳した。

「『・・・そういえば、私が難破船に見せかけるために破壊してしまったか。あの船は』」

「『うん』」

 そこに、黙々とサラダの甘エビをつついていたサタニットが口を挟んだ。

「『ちょうど此処には次元転送装置がある。こいつを使って、一旦マモーネの閉鎖空間に飛び、そこから座標調整して貴方達の国に飛ぶことが可能よ』」

「『つまり・・・船がなくても良いと?』」

「『そういうこと。それでいい?』」

「『よろしく頼みます』」

「『ちょーっと待ったぁ!』」

 アリオスが、口を挟んだ。

「『その前に・・・妖猫寺なゆた。依頼は破棄ということでいいのか?』」

「『あ、はい。ですが、報酬は払います』」

「『は? 仕事をしないで報酬を受け取るのはポリシーに反するのだが』」

「『最初の契約では、『父親の仇である灰ヶ崎子子丸を殺すのが依頼で、報酬は醜き大宝【呪縛の数珠】』でした』」

「『ああ、そうだ。東方の国はまだ醜き大宝の捜索をしていなかったからな。手に入るだけ手に入れたかったんだが』」

「『ですが、父親の仇は別人だった・・・。卯鷺と千雨さんが接触した時間から考えて、犯人は卯鷺でもなさそうです』」

「『結局、依頼は達成しようがないから破棄・・・ということか?』」

「『はい。ですが、結果私は父親の仇は討てなかったものの、精神的に楽になれました。これは受け取って下さい』」

 なゆたは、袖口から取り出した数珠をアリオスに渡した。

「それじゃ、マモーネ、準備して。私は装置のセッティングをする」

「了解」

「それなら此処でやるといいわ。今、普通の使用人は立入禁止だから」

「ありがとう。使わせてもらう」

 サタニットは、次元転送装置を床に並べた。

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