決着
「どけ! 俺がこいつの力を抑える!」
「よし、分かった」
千雨が刀を構え、暴れる卯鷺の右足へ走り寄った。
「『堕ちろ! 【子丑斬】』」
卯鷺の右足に一閃、千雨の刀が光った。
『ウガァ・・・ギャァアアアアアア! ギザマ! キザマァアアアア!』
「今だ! 角を!」
「しかし・・・」
その様子を見ていたマモーネが、神菜子に叫ぶように言った。
「お前、お前の能力で類の所まで道を作れないのか!?」
「え、時間かけないと、数秒持つか持たないか・・・」
「五秒あれば十分だ。やってくれ」
そう言って、マモーネは手の平を合わせた。
「我望む、全てを砕く堅き刃を!」
マモーネが手を離すと、宙に輝くナイフがあった。
「作ってくれ!」
「はい!」
神菜子が手をかざすと、マモーネの足元から卯鷺の頭付近まで氷の道が出来た。
「我望む、瞬速なる脚を!」
「崩れるわよ!」
「構わん!」
マモーネが走ると同時に、氷の道は崩れた。
「おらぁあああああ!」
「! マモーネ!」
「受け取れ!」
マモーネは氷の道から跳び、ナイフを類に投げ渡した。類は片手で受け取ると、頭上を飛び越えるマモーネを見上げた。
「・・・やっちまいな」
「言われなくても、やりますよ!」
「そいつはダイアモンドだ。力いっぱい叩きこめ!」
類はナイフを角に、力いっぱい叩きつけた。
何かが、砕けた。
アニマ達は、鬼が消えてから現れた巨大な兎を目指して走っていた。
「『なゆた、お前のさっきのあれは何だったんだ?』」
「『分かりません。でも、確か緑色の光が私に入ってきて・・・』」
「『ふむ、緑色の光ねえ。それはうちのレヴィの仕業かもしれない』」
「『あんたは・・・』」
「『色欲の大罪魔、アスモ・ラスティだ。うちのレヴィが能力を使って奪った長所は、基本的に持ち主以外には返せない。もし返ってきた能力が君のものでなければ、それは既に亡くなった君に近しい人の能力だと思われる。死んだ親の能力は、何者かに奪われていた場合その子供に返されることが多い・・・君のお父さんは優秀な陰陽師、だったね』」
「『もしかして、あんたの父さんの・・・?』」
「『ち、父上の・・・?』」
「『そういえば、妖猫寺の、陰陽師は、十三の、呪術、妖術を、扱った、ハズ』」
「『・・・もしや、十二支罪国組の持ってる呪術のうちいくつかは元々、なゆたの親父さんのものなんじゃ?』」
「『私も、違和感が、あった。そもそも、私は、式神。召喚主、無しで、呪術は、使えないし、私の、呪術は、五感を、封じる、なんて、物じゃ、無い』」
「『やはり、卯鷺が知ってそうね』」
「見えてきたわよ!」
「『うわ・・・すげえ』」
駆けつけたアニマ達の目に映ったのは、大量の紙が舞う中を類が卯鷺を抱きかかえて着地する姿だった。
「『私の、力が・・・私の、計画が・・・』」
「『貴女の野望は此処で終わりです』」
「『は、離せ! 私は、こんなところで・・・こんなところでぇえええ』」
「あっ!」
卯鷺は類の腕の中から抜け出し、逃げ出した。
「『こんなところで・・・私は・・・』」
「おい、逃げるぞ!」
逃げる卯鷺を、千雨は追わなかった。千雨に、マモーネが話しかけた。
「あんたは良いのか?」
「・・・あのうさぎっころに、もう悪さする力なんかない。あんな巨大な兎になるほどの妖力と共に、自信の妖力も放出しちまってる。それに・・・」
「それに?」
「あんなやつ斬っても、刀が汚れるだけだ。復讐する気も失せた」
そう言って、千雨は腰を下ろした。
「・・・アイツのことだ、逃げるだろうな」
卯鷺が逃げたことに騒ぎ、アリスは卯鷺を追っていってしまったが、残りの全員の中心にアニマが躍り出た。
「はい皆注目! なにはともあれ、侵略者は無力化出来たんでしょう? 逃げてしまったものはしょうがないわ。あとは警察に任せて、私達、元侵略者の貴方達も私の屋敷まで来なさい! 話も聞きたいけど、その前に休みましょう」
「お嬢様、良いんですか?」
「もっちろん! 結局は、協力者だしね」
それに対して、千雨とアスモが答えた。
「なるほど、それは助かる。俺からほかのやつには説明しておく」
「うーん、僕としては行きたい所なんだけど・・・大罪魔としては、レヴィちゃん達と合流したらすぐ帰らないとね」
「そう、じゃあさっき言ってた話っていうのはまたお預けね」
「そう・・・だね。うん」
そこに、アリオスが加わった。
「俺とテレサはパスだ。後始末もあるんでな。又の機会に」
「残念ね。まあ、良いわ。じゃあ、吸血館に戻るわよ!」
アニマが、声を張り上げた。
「『はあ・・・はあ・・・さて、どうやって日の本の国に・・・』」
「『そこのウサギさん』」
「『!? 誰だ!』」
路地裏に逃げ込んだ卯鷺に、綺麗な着物を着た女が語りかけた。
「『私に付いてきなさい。悪いようにはしないわ』」
「『・・・』」
女は口元に笑み浮かべた。
「『私は【今暁照代】。さあ、この羽衣を』」
次の瞬間、二人の姿は消えていた。




