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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
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クレイジークロック

「『私が持ってる呪術が一つだとでも思っていた? 随分見くびられたものだわね』」

 卯鷺は黒い衝撃波に加え、白い衝撃波も操っていた。二つの衝撃波はお互いに混じり合わずに、別々に類達を襲った。

「『私の前にひれ伏せ! 跪け! 愚民は私のために存在すれば良い! 私に全てを捧げれば良い!』」

「くそ・・・奴の能力がわからない。記憶を操る能力じゃなかったのか?」

「呪術は一人で幾つも持つことが可能だ。麟之助がそうだった。奴は十三の呪術で最強の人間として讃えられるほどの功績を収めた」

「十三!?」

「『なにをごちゃごちゃと・・・喰らえ! 【黒鎚ノ裁き】」

 黒い衝撃波が大きな壁のように類達に襲いかかった。

「甘い時間を永遠に・・・【スウィートタイム】!」

 衝撃波が触れる寸前に、類が時間を止めた。

「妖怪がこの国の魔族と同じなら・・・これで!」

 類の手には銀ナイフがあった。

 類は銀ナイフをジャグリングすると、一つずつ卯鷺に投げつけた。

「タイムアウト」

 時が動き、卯鷺の体にナイフが突き刺さる。それと同時に、衝撃波の壁が霧散する。

「『ぐっ・・・! だがぁ!』」

 周囲に地響きがなり、大量の鬼が現れた。

「こ、こんなに・・・」

「『寅の全ての妖力を使わせて召喚した鬼どもだ! 個体の力は弱いが、その数はまさに畜生! ハハハハ!』」

「『てめえ・・・さっき丑屋を抑えてたのはそういう理由か・・・!』」

「『そうさ。言うことを聞かない道具は、ただ捨てるだけじゃ勿体無い。無理やり言うことを聞かせるのさ。寿命が縮むほど頑張ってくれたよ。ハハハハハ!』」

「『外道が・・・! 俺だけなら、まだ許せた。だが、お前は麟之助も、なゆたも、何人もを騙した! 絶対に許さん!』」

「『言ってろ。私の前でお前たちは無力! さあ跪け! そして、死ね!』」

 卯鷺の手の平から放たれた白い衝撃波が、周囲の瓦礫を巻きあげて煙幕を起こす。

「零草!」

「了解!」

 類の指示を受けた零草が、煙幕を凍らせて視界を開く。

「さあ、俺も楽しませてもらおうか!」

 飛び出したマモーネが、レイピアを思い切り卯鷺に突き立てた。

「・・・!」

「『残念。惜しいねぇ』」

 レイピアが当たったのは、卯鷺の体ではなく、体の表面に発生した白い衝撃波だった。

「『白き波動はいかなる攻撃も通さない!』」

「ぐあぁっ!」

 マモーネがはじき飛ばされ、後ろからアリオスが大剣を振り上げて飛び出した。

「醜き大宝、絶命の大鎌。発動!」

 剣が変形し、大鎌へと姿を変えた。

「『黒い波動はいかなる防御も突き通す!』」

「なら防御しねえ! 攻撃するだけだ!」

 アリオスの振り下ろした鎌と卯鷺の黒い衝撃波がぶつかり、小さな爆発が起きた。

「『くっ・・・!』」

「がはっ! ちくしょう、攻撃が通らねえ」

「傷一つ・・・付けられないなんて」

「鬼も邪魔だ。キリがねえ!」

「・・・俺が鬼をやる。お前たちは卯鷺を任せていいか」

 千雨がそう言い出した。

「良いのか」

「俺もあいつを斬らないと気が済まない。だが、自分一人じゃ敵わないのは分かっている。頼む」

「・・・分かりました」

 類が答えた。

 類は子子丸に向き合い、真剣な眼差しで答えた。

「貴方の願い、しかと受け止めました。鬼を頼みます」

「・・・ああ」

「さあ、行きましょう! 僕が隙を作ります。マモーネ、アリオスさん。隙を見て攻撃を仕掛けて下さい」

「了解だ」

「隙を作るって、お前魔力は大丈夫なのか?」

「不思議と。多分、紅子さんの妖怪の血が何か効いているのでしょう」

「そうか」

 類は懐中時計を開き、呟いた。

「先日の事件から、能力の制御も訓練しました。行きましょう。【クレイジークロック】」

 時が一瞬止まり、再び動き出した。

「『消えた・・・? 何処に・・・』」

「此処ですよ」

 卯鷺に返答したのは、類ではなかった。

「まさか、自分以外の人まで止まった時間の中で動かせるなんてね」

「そのために努力はしましたよ」

「『お・・・前!』」

 神菜子が、卯鷺の背後で氷のボウイナイフを構えていた。脇には懐中時計を握った類も居る。

「『離れろ小娘!』」

「何言ってるか知らないけど、終わりよ!」

「『・・・!』」

 神菜子に気を取られていた卯鷺に、マモーネとアリオスが跳びかかった。

「『しまった・・・!』」

「でやぁああああ!!!」

「はぁあああああ!!!」

「『ふ、ざけるなぁああああ』」

 卯鷺がでたらめに衝撃波を放ったが、二人はそれを避けて各々の武器を振り下ろした。

 その瞬間、国中の鬼が消滅した。と同時に、一般人を含むミレディア周辺の人間、妖怪などが得体の知れない悪寒を感じ取った。

「『人間も、悪魔も、私に逆らうな! 私が正義だ! 私がぁあああああああ!!!』」

 巨大な、七階建ての建物と同じくらいの大きさの妖怪兎が、類達を冷たく見下ろしていた。

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