事件の真相
「麟之助と俺は、生まれ年が同じでな。妖怪と人間ということもあって、周囲には止められたがよく遊んだものさ」
千雨とアリス、そしてなゆたはミレディアに向けて走っていた。
「生まれ年が同じ・・・って、この子のお父さんと同い年!?」
「まあな。だが、人間と妖怪では当然成長する速さも違う。『なゆた、麟之助・・・お前の親父は今年幾つだった?』」
「『・・・四十八』」
「で、あんたはそんな若い姿か」
「妖怪は皆、一番活発な時期で姿が留まるのさ。賢者級の妖怪にもなれば、年齢は四桁で姿は二十代なんてのも当たり前さ」
「死神の私が言えた義理じゃないけど、まるで化物ね」
「化物だからな」
「で、そろそろ総大将について話してもらおうかしらね」
「あ、おう。そうだな・・・まずは、麟之助の事から話さないとな。あいつが死んだと知ったのは、ついさっきさ」
「ついさっき?」
「操られていた記憶が元に戻って、それでようやく分かったんだ。俺が記憶を操られたのは、恐らく麟之助に会いに行った日だ」
千雨は、小さく舌打ちをすると話し始めた。
「『一年前、麟之助は俺にある話を持ちかけてきた』」
「『来てくれたか、千雨』」
「『当たり前だ』」
「『・・・お前は、この戦いどう思う』」
「『麟之助、愚問だな。人間のお前と仲良くしてる時点で、答えは出てるだろう』」
「『違いないな。で、相談というのはほかでもない。俺と協力して、人妖同盟の成立の手助けをして欲しい』」
日の本の国では、長らく人間と妖怪による戦いが続いていた。百二十年前の大一揆からは、妖怪のほうが優勢であった。麟之助は、国内一の陰陽師であったが、人と妖怪の争いを悲しんでいたため、戦いには参加していなかった。
「『娘がな、夜な夜な泣くんだよ。あいつは俺以上の素質を持ってる。妖怪も人間も日々死んでいくこの国で、何かが聞こえてるんだそうだ』」
「『悲しいな。お前の娘は、人一倍優しい。苦しませておくべきではない』」
「『人妖同盟は、人間の王の了承は得た。あとは、妖怪の大将の同意さえあれば・・・』」
「『協力したいのは山々だが、俺は大将に会えるほどの人望はないぜ。まあ、機会があれば命かけてでも伝えるさ』」
「『ありがとう、我が友』」
「『おうよ、我が友』」
二人はその後、それぞれの帰路へと向かった。しかし、麟之助が自宅近くの橋を通りがかった時だった。
「『・・・千雨?』」
「『・・・』」
橋の向こう側には、帰ったはずの千雨の姿があった。麟之助が近づいた次の瞬間、麟之助の腹を千雨の刀が貫いた。
「『・・・?』」
「『さようなら、麒麟の子よ』」
「『千雨・・・じゃないな・・・』」
「『騙すにはこの姿がいいと思ってね。お前は首を突っ込みすぎた。その悪い首・・・頂戴する!』」
麟之助の首が、宙に舞った。
「『・・・なんだ、今の気配』」
同時刻、千雨は自分のねぐらへと森を歩いていた。
「『・・・気のせいか』」
「『やあ、子子丸』」
「『誰だ?』」
木々の間から、布で顔を隠した女が出てきた。
「『子子丸? 人違いだ。俺の名前はそんな名前じゃ・・・』」
一瞬にして女の姿が消え、次の瞬間千雨の背後から声が聞こえた。
「『いや、君は今日から子子丸だ。今日からは私と一緒に働いてもらう』」
千雨の記憶は、その瞬間背後に立っていた卯鷺によって変えられてしまった。
「『と、言うことだ』」
「なるほど・・・貴女は、帰り道で卯鷺に襲われたと」
「『そういう事になる』」
「『そして、卯鷺は私の家に父上の首を投げ込み、それを目撃した私の記憶をも弄った。それも、千雨さんを犯人にして』」
「『兎に角、卯鷺に全て吐かせる。白黒はっきりしないまま終わらせたくない』」
「行きましょう」
三人は走る速さをあげた。
その頃、吸血館の門前にて・・・




