卯鷺の企み
アスモは鬼神と申竹に追い詰められ、ボロボロになっていた。
「ま、さか・・・ここまでとはね」
「『弱い。もう、終わりにしようか』」
申竹が爆弾を構えた。
「『死ね』」
申竹が爆弾に火を点けようとしたその瞬間だった。空から降り注いだ無数の文字が、申竹と木の上の女に降り注いだ。
「『な、なんだ・・・!』」
「『・・・』」
文字に覆われ申竹は、その場に倒れた。
「何だ一体・・・!」
『ガァアアアアアアアア!!!』
「しまった、こっちはまだ居たか!」
アスモが鬼神の攻撃を避けると、鬼神の翼が大木を靡き、上に居た女が落ちた。
「『いでっ』」
その直後だった。
「『・・・今、邪魔したな?』」
今までとは打って変わって、殺気に満ちた声だった。
「『君は・・・』」
「『黙ってて。一寸今虫の居所が悪いんだ』」
アスモは彼女に話しかけるのを止めた。女の顔は、怒りと殺気に満ちていた。
「『全部思い出した。だが、そんな事どうでも良い。私は単純な女さ。目の前のデカブツをぶっ飛ばさないと怒りが鎮まりそうにない』」
女の腕から黒い炎が吹き出した。
「『謝って許しを請いて這いずりまわって殺されるのと、甚振られて皮剥がされて辱められて死ぬの・・・どっちがいい?』」
炎の勢いが強まった。
テレサが首輪を外すと、テレサが右腕を撫でた。すると、右腕が蛇のような鱗だらけの姿へと変形した。
「はぁっ!」
「『うひゃう!?』」
戌太は驚いたものの、すぐに反撃を始めた。
「『子供だと思って舐めるなよ!』」
「・・・ふっ」
テレサは微笑むと、右腕で戌太をはじき飛ばした。
「『あがっ・・・!』」
「さあ、懺悔するにはまだ間に合いますよ」
地面を転がる戌太を見下しながら、テレサは右腕を元に戻した。
「『な・・・んで、勝てない・・・』」
気絶した戌太に無数の文字が降り注ぎ、完全に包み込んだ。
「な、マスター!」
「すまんな、こっちも忙しくて・・・ねぇ!」
アリオスは鬼神の突進をすんでの所で躱すと、大剣を構えた。
「今すぐ終わらせる。待ってな。醜き大宝【絶命の大鎌】よ、我が言葉に応えよ!」
大剣が変形し、大きな鎌となる。
「さぁて、まずはその邪魔くさい角からだ」
アリオスの振るった鎌が、鬼神の角を刈り取った。
「ジ・エンドだ」
鬼が霧散し、紙へと戻った。アリオスは紙を拾い上げまじまじと見ると、放り捨てテレサの方へと向かった。
「なんだ?」
「この人・・・」
「あ?」
アリオスは倒れた戌太を覗き込み、言い放った。
「放っとけ。死んじゃいないさ。それより、早・・・」
アリオスが放送施設に向かおうとしたその時、アリオスのズボンを戌太が掴んだ。
「ん?」
「『待って・・・』」
「『何だ』」
「『思い出したんだ・・・全部。いい事教えてあげるよ』」
戌太は笑いながら言った。
「『全部全部悪いのは卯鷺さ。俺っち達の記憶を弄ったんだ。全部思い出した!』」
「『卯鷺?』」
「『何処に居るかも知ってるよ!』」
「『・・・! よし、言え』」
アリオスは力強く戌太の肩を揺さぶった。
「『そ、そんな馬鹿な・・・』」
一瞬で、鬼神はベルゼに喰われた。ベルゼが右腕で払いのけると、一瞬で右腕に出現した口に吸い込まれていったのだ。
「『不味くもなければ美味しくもない。元が紙なら、仕様がありませんか』」
「『う、うわぁあああ!!』」
午里は怖気付き、逃げ出した。しかし、空から降り注いだ文字に包まれ気を失った。
「? 今のは何でしょうか。まあ、良い」
ベルゼは空を仰ぐと、空気の匂いを嗅いだ。
「あちらから、怪しい匂いがしますね」
そう呟くと、ベルゼは歩き出した。
「『う、うぐっ・・・!』」
無数の文字に囲まれた子子丸が、頭を抑えて蹲った。刀は振るわれることなく地に落ちた。
「『くそっ・・・! なんだ、これは・・・!』」
そこへ、一体の鬼神が現れた。
『我が名は【魚人鬼神】! 主の言葉通り、子子丸殿に助太刀いたす!』
「く・・・、チャンスだったのに!」
『ウルァアアアアア』
アリスは鬼神の一撃を躱そうとしたが、鬼神の腕が伸びてアリスをはじき飛ばして居た。
「う、うぁああああ!!」
「『アリス!』」
鬼神は追い打ちをかけるようにアリスの上にたちはだかった。
「しまっ・・・」
『ダァアアアアアアルアァアアアアアアア!!』
鬼神の腕が振り下ろされたその瞬間、鈴の音が空気を切り裂いた。
卯鷺の背後で二人がうめいた。
「『な、なんだ・・・これ』」
「『う、卯鷺・・・なんでお前は・・・』」
卯鷺は焦った。その挙句、卯鷺は小刀を取り出すと女の首筋に突きつけて寅を脅した。
「『その術は稗田の力か・・・。読みが浅かった。寅、丑屋を殺されたくなかったら、大人しく鬼を出せ』」
「『う、卯鷺・・・?』」
「『ね、姐さんを離せ!』」
「『良いから鬼を召喚し続けろ! 私はこの作戦を成功させないといけないんだ! どんな手を使っても!』」
「『卯鷺・・・あんた、何を・・・』」
卯鷺は口元に笑みを浮かべて囁いた。
「『私はあんたら全員を騙して、日の本の国と罪の国を自分の物にするのさ。復讐を遂げるためにね!』」




