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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
53/67

鬼の角

「『な、なぜ貴女が・・・!?』」

「『説明は、後。今は、この鬼神を、倒すのが、先』」

 紅子は、三人に呼びかけた。

「『鬼の、弱点は、どれだけ、巨大に、なっても、どれだけ、強くなっても、角。だから、角を、折れば、簡単に、倒せる』」

「『角! あれか!』」

 マモーネはレイピアを構え、砕けた氷の壁を飛び越えて、壁にもたれかかって体勢を立てなおした鬼神に向かって突っ込んだ。

「角は頭にあるよな・・・貰った!」

 マモーネのレイピアが、鬼神の角に直撃した。が、

「な、なに・・・!」

「『鬼の、角は、鬼の、強さに、比例して、強くなる。鬼神ほどになれば、鉄にも、等しい』」

「さ、先に言え・・・!」

 体勢を崩したマモーネに、鬼の腕が振り下ろされた。

「しまっ・・・!」

「マモーネ!」

「! お前・・・」

 類がマモーネと腕の間に入り、腕を蹴飛ばした。

「吸血鬼の力を最大限活用すれば、この程度!」

「不完全な吸血鬼のお前は、吸血鬼としての力が欠如してるんだぞ? もしも力が足りなければ、お前も潰されてたぞ!」

「潰されませんよ。たしかに僕は魔力を光弾にして放つこともできないし、魔力を身に貯めることもできません。しかし、怪物一匹跳ね飛ばすことくらい出来ますよ」

「・・・そうかい」

「さて、行きましょうか」

「ああ」

 攻撃態勢に入っていた鬼神に対して、類とマモーネは二手に分かれて挟み込んだ。

「マモーネは足元を中心に攻撃を!」

「了解! お前は?」

「僕は角を砕きます!」

「分かった、やれ!」

 一ヶ月前までは敵だったとは思えないような、連携だった。マモーネはレイピアを使い鬼神の足元を崩し、類は鬼神の隙を突いて飛んだ。

「行け!」

 マモーネが叫ぶが早いか、類の翼が羽ばたいた。

「止まった時間では、僕以外の全ては僕の支配下になる」

 神菜子の目には、類が瞬間移動したように見えたが、それが時を止めたからだと分かった。

「不味い・・・非常に不味いですね。やはり、人間以外では」

「お前、能力が・・・!?」

 魔力がないにもかかわらず能力を使い、鬼の角を砕いた類の口元には血が滴っていた。

「この、鬼の血を吸って魔力に変えました。即席で、そのくらいなら出来ますよ」

「・・・そうか」

「はい。さてと・・・では、説明してもらいましょうか」

 類は紅子に対して言った。

「貴女は僕達を襲った。だが今は僕達の味方をしている。その理由を、教えてください」

 紅子は、少し唇を噛んだ。






「私は日の本の国の【人間側の王】に使える書記。私は見たもの聞いたものすべてを忘れない瞬間絶対記憶能力を持っている。だから、誰が何をして記憶を操ろうとしたのか分かっている」

「瞬間絶対記憶能力?」

「そして、私の【記憶復元呪術】を使えばほかの皆が操られた記憶とは別に元々あった記憶をねじ込むことが出来る」

「そんなことが・・・」

 サタニットは珂礼の言葉一つ一つに驚いていた。様々な分野の学者である彼女には、興味深いことなのであろう。

「だが、次元転送装置の燃料がなければ・・・」

 その時だった。

「此処にあります!」

「リナリア!?」

 リナリアは二階からエントランスに降り、サタニットに一つの小瓶を差し出した。

「緊急時用にと、お嬢様が教えてくれました。お嬢様用の生き血ですが、魔力の代わりにならないですか!?」

「す、すごい優秀な燃料だ! これなら・・・」

 サタニットは嬉々として転送装置のセッティングを始めた。

 珂礼は、それを見下しながら蛇のような笑みを浮かべていた。






「『うっ・・・』」

「『気が付きましたか?』」

 辰蒔を抱え、レヴィは言った。

「『だ、誰ですか貴女は・・・!』」

「『え?』」

「『な、何も覚えていない・・・』」

「『えぇ!?』」

「『それは、術を解いた副作用ね』」

 ベールがいつの間にか現れ、レヴィに説明した。

「操られていた記憶が消滅しただけよ。もうじき、操られた過去の記憶は消えて貴女と、操られて戦ったという記憶は徐々に戻るわ」

「そうなんですか?」

「まあ、それも必要なさそうだけど」

 ベールは、吸血館を見据えて呟いた。

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