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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
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三体の鬼神

 アスモの足元には、アスモの劇薬注射により消滅させられた鬼の残骸とも思える紙が大量に落ちていた。

「『凄いね、あんた。常人では一体足りとも相手には出来ないっていうのに』」

「『生憎常人ではないんだ。ところで、君はいつまでそうしてるつもりだい? 敵味方もあったもんじゃないね』」

「『だから、戦いたい奴が戦えばいいのさ。自分の利益にもならないのに戦いに勤しむくらいなら、大人しく寝てるほうが何倍もマシさ』」

「『なるほど、一理あるね。僕は、この国が乗っ取られると困るからこうして戦いに勤しんでるわけさ。医者なのに』」

「『へえ、あんた、医者なんだ。奇遇だね、私もだ』」

「『! それはそれは、奇遇だ』」

 そこへ、何者かの羽音が聞こえてきた。

「『・・・あんた、逃げたほうがいい』」

「『え?』」

 先刻までのふざけた口調ではなく、突然張り詰めた声で言った。

「『悪いことは言わない。今すぐここから離れろ。今までの鬼とは違う』」

「『そうは言っても、敵を目の前に逃げ出すなんてことはできないのさ』」

「『良いからっ・・・!』」

 女が叫んだその瞬間、何かが落ちた音がした。地面が少し揺れるのを感じた。

「『・・・遅かったか』」

 大木に背を向けアスモが周囲を見渡すと、すぐ近くに鳥のような姿の鬼と申竹が居た。

「『・・・行け』」

『我が名は【空牙鬼神】! 主の命で邪魔者は容赦なく屠る!』

「『・・・全く、ずるいなぁ。一人に対して二人だなんて。まあ、関係ないけどね』」

 アスモはニヤリと笑うと、銃を構えた。

「『・・・私は知らん。寝る』」






 カーリーゴーダン支部。ここは、最新の通信機器が揃っているため本部に戻らずとも国中に放送が行える無人施設である。カーリーは二年前に出来たばかりの会社でありながら、国王の依頼すらも受けるほどの大きな会社になっていた。その成果とも言えるのが、全国放送権限だった。

 アリオスとテレサは、全国民に現状を伝えるために此処に来ていた。しかし、施設に入ることは出来なかった。

「おい、テレサ」

「はい、なんでしょう」

「あれはなんだ」

「・・・巨人、でしょうか」

 施設に通じる道の上に、巨大な鬼と小さな少年が立っていた。

「『わん! 此処はこの【砂垣戌太すなかき いぬた】が通さないぜぇ!』」

『我が名は【巨塔鬼神】! 主の言葉に従い、貴様らは此処を通さぬ!』

「・・・良いね、そそるぜ」

「御主人様・・・いえ、マスター。戦闘許可を」

「子供のお守りは任せた。俺はあのデカブツを殺る」

「承知しました」

 テレサが、首輪に手をかけた。






「ほう、美味しそうな獲物が」

 ベルゼは蛇のような姿をした鬼と午里と対峙していた。

「『卯鷺の計画、従っといたほうが良いかもね。俺の快楽も満たされる』」

「『僕の空腹も少しは満たされそうですよ』」

『我が名は【蛇姫鬼神】! 主の囁きに応じ、貴様を喰らい尽くす!』

「『出来るものなら』」

 ベルゼは不敵に微笑んだ。






「サーちゃん」

「ベール! どうして此処に」

「次元転送装置の回収するために此処に来たんでしょう? で、見つかった?」

「ああ」

「動かすことは出来る?」

「それが・・・」

 鬼が完全に駆逐された吸血館で、サタニットは次元転送装置を持ちだしてベールに説明した。

「実は、燃料が・・・」

「燃料?」

「これを起動させるためには魔力を固形にしたものが必要なんだ。前回はベルゼの無尽蔵の魔力を使ったが・・・今回は固形魔力は持ってない」

「つまり、使えないのね」

「まあ・・・な」

 その時、吸血館の入り口が開き何者かが入ってきた。

「誰だ」

「警戒しないで良い。私は傍観者。戦う気はないわ」

「・・・ムイラク語?」

 その女は、見るからに東方の国の服を着ていた。しかし、ギルバートの国語を流暢に使っていた。

「蛇木巳城、なんて呼ばれてるけど・・・本名は【稗田珂礼ひえだ かれ】。簡単にいえばスパイ。私はこの計画を妨害するためにこの国に来たのよ」

 珂礼は、意地悪そうに微笑んだ。

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