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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
49/67

鬼神

「『ぐあっ!』」

 辰蒔の体が、捻ったレヴィの右足に吹き飛ばされ吸血館の外壁に叩きつけられる。

「あはははは! 妬ましい! この世の全てが妬ましい! 憎い! 羨ましい! だから! 壊す! 奪う!」

「『なんだ・・・急に、雰囲気が変わった・・・?』」

 レヴィの体の周りに、火花が散っている。バチバチと音を立てている。

(何なんだ・・・この女)

 辰蒔の顔に焦りが生まれた。






「そういえば」

 アニマが飛び去った後、ベルゼが呟いた。

「そういえば?」

「いえ、アニマお嬢様の館にはサタニットとレヴィを向かわせました。お二人は知りませんよね」

「ああ」

「知らないな」

「・・・」

 ベルゼは少し考えて、アリスとテレサを交互に見た。

「すいません、少しテラと交代してくれませんか」

「んぁ? いいけど」

 アリスとアリオスは、日の本の国の言語が扱える。そのため、テレサよりもアリスのほうがなゆたとのコミュニケーションは取りやすいのだ。

 アリスに呼ばれたテレサが、アリオスに抱きつくように近づいた。

「さて、僕はこの国を守る守らない以前に目的があって此処へ来ました。正直、あの侵略者と出くわしたのは偶然なのです。侵略者の気配を感じたときに咄嗟に地獄に居たレヴィに連絡して呼び出してもらいましたが」

「・・・ほう」

「本来の目的は、アリオスとテラ二人に少し情報を与えようと思いまして」

「随分と、上から目線だな」

「良いんですか? この情報は、随分大事なものですよ。テラを治す方法だというのに」

「なんだと・・・?」

 テレサの体がびくついた。

「それには僕達大罪魔、貴方達カーリー、そして・・・チャイルドデビルの力が必要です」

「チャイルドデビル・・・?」

「これから、説明しましょう」

 ベルゼは不気味に微笑むと、口を開いた。






 申竹の攻撃は四方八方から繰り出されていた。それと同時に、午里も攻撃を仕掛けてくるせいで三人は防戦一方だった。

「くそっ! お前、時間止めてどうにか出来ないのかよ!」

「それが、魔力切れです」

 類は能力を発動するのに、懐中時計に封じたアニマの魔力を使用する。しかし魔力を貯めるには当然アニマの魔力を消費する。類から魔力を要求することはしないため、先日の悪魔との戦いから魔力は補充されていない。なけなしの魔力を使い切った類は、これ以上能力を発動することが出来なかった。

「私が一瞬だけ相手の攻撃を防ぐ! その間にどうにかして!」

「零草!」

 零草が午里の目の前に踊りでたその瞬間、ピタリと攻撃がやんだ。それと同時に、午里が飛び退る。

「『来たか・・・鬼神!』」

「『巻き込まれるのは困る』」

 午里は走り去っていった。申竹も離れたようだ。

「なんだ・・・鬼神って?」

「! あれ・・・」

 類が指さす先に、黒い闇をまとった人形の紙が浮いていた。

『・・・』

 一瞬にして、類達の周囲の鬼が消滅した。紙が現れることはなく、鬼が居た場所から霧散した何かがその紙に集まって行った。

「おい、やばいぞ・・・こいつは、本当にやばい!」

 マモーネが叫んだその瞬間、紙を覆っていた黒い闇が形を変え、鬼の姿となった。

『我が名は丑寅鬼神! 我が主の名において、貴様らを葬らん!』

 鬼神は叫んだ。大気が震えるのを、類たちは感じた。






「来たわね」

 誰もいない街路で、ベールが呟いた。

「先に調べておいてよかったわ。情報さえあればどうということはないから」

 そう言ってベールは空を仰いだ。

「あの人達の協力があれば、十二人の内数人は・・・」

 ベールの独り言は、誰にも聞かれることもなく空へ昇った。

「鬼神だけは、戦ってはいけない。マーちゃんには、気づいてほしいわ」

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