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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
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鬼の親玉

 街を走りながら、類達三人は鬼を撃退していた。

「倒しても倒しても出てきやがるな! 親玉がどっかに居るんじゃないか!?」

「虫みたいな話ですね」

「私、虫嫌いなんだけど! これが全部虫だったらと思うと・・・」

「変な妄想してないで戦え!」

 神菜子は鬼の足を凍らせ、動きを封じてから全体を凍らしていたが、マモーネは能力を一切使わずレイピア一本で鬼の喉元や左胸を貫き物凄いスピードで鬼を排除していた。しかし、問題は類だった。

「お前! そんな小さなナイフで戦えてるのか?」

「まあ、銀ですからよく効いてますけど・・・いかんせん小さくて」

「一個貸せ! お前、剣使えたよな?」

「はい、まあ」

 マモーネは受け取ったナイフを手に、一言呟いた。

「我望む、悪鬼退けし銀の刃!」

 ナイフは一瞬で形を変え、長剣へと変化した。

「ほらよ、使え。加工しただけだから、素材は変わらねえぜ」

「ありがとうございます。では」

 類は、長剣を振り回した。普段の身のこなしと、その体つきからは想像できない速さで鬼を切り倒していった。

「そういえば、アリスさんはこの怪物は召喚者が居るって言ってましたね」

「そいつが親玉か・・・」

「探しましょう・・・!」

 神菜子が鬼を凍らせた手を止めて、街路の奥を見た。嵐の中で、その人物の周辺には雨は降っていなかった。しかし、ベールとは少し違い、雨が降っていないというよりは雨が避けているように見えた。

 神菜子は気付いた。そして叫んだ。

「二人とも! 壁に寄って!」

 神菜子の呼びかけを聞いて、二人が壁に近づいた瞬間だった。何かが異常なほどのスピードで通り過ぎ、そして再び戻ってきた。通り道に居た鬼はことごとく跳ね飛ばされ、類たちも風圧で壁に押し付けられた。

「『いけねぇいけねぇ。これじゃ猪だぜ。お前たちだろう? この国を乗っ取るのを邪魔する奴は』」

「『・・・お前は誰だ。当然、敵のようだがな』」

「『俺は十二支罪国組の一員、【山谷午里やまたに ごさと】だ! お前たちを倒して、この国は俺たちのものにするぜ!』」

 午里が、敵意に満ちた表情で三人を睨んだ。

「『それと、敵は俺だけじゃないことをわすれるなよ?』」

 午里の言葉を聞き終えるより早く、マモーネと類が斬りかかった。しかし、午里の姿はその場になかった。






「あんたは、死神と聞いてどんな想像をする?」

 そう言ってアリオスは語りかけた。

「きっと、黒装束着た骸骨でも想像したんじゃないか?」

「まあね」

「実際、そういう奴が大半さ。死神には二種類居る。生まれつきの死神と、他の種族から変化したものだ。骸骨は前者で、俺たち姉弟は後者だ。死神っていうのは会社と言うかギルドと言うか、そんな感じでな、何回か試験があって、それに合格すると位が上がっていく。それと同時に、いろんな物が支給されるのさ」

「例えば? その馬鹿でかい剣とか?」

「まあな。ほかにも、特殊な能力が一人にひとつ与えられる。位が上がるごとにそれは強くなるんだ」

「因みに、私はAAで、このバカ弟は・・・憎たらしいことにAAAだ」

「最低ラインはEで、最高はSだ。で、この能力っていうのは魔力とかは必要じゃない。持ち主の寿命を消費して使うが、死神になった時点で寿命なんてものは存在しない。無尽蔵だ」

「無茶苦茶な力ね」

「で、そのかわり死神には、地縛霊や悪霊の強制冥界送りと、

人間界にある醜き大宝を回収する仕事がある。」

「醜き大宝?」

「死神専用の道具で、さっき言った支給品のほとんどは醜き大宝だ。冥王の所持する醜き大宝の内ほとんどが、四年前に起きた事件で人間界に散らばっちまったのさ。」

「へえ。まあ、ぼんやりだけど死神については分かったわ」

「で、次は何について話せば良い。できるだけ早くしてくれ」

「じゃあ、今回の侵略者について説明して。情報が少なすぎるわ。知ってるだけ話して」

「それは情報が少ないが、知ってる限り話す」

 再びアリオスは話し始めた。






「『あら、早かったじゃないのさ。子子丸』」

「『・・・名前で呼ぶな』」

 小さな家の地下室で、四人の男女が集まっていた。家は無人で、空き家を乗っ取ったようだった。

「『先刻妙な男と殺り合った。俺たちとも違う、禍々しい気を放っていた』」

「『この国も、一筋縄じゃいかなそうね』」

「『おいらが居る限り、簡単には負けないさ!』」

「『そうよ、卯鷺、子子丸・・・』」

 地面に座り込んで、何枚もの紙に字を書いていた二人の男女が口を挟んだ。

「『もう少しで書き上げるわ。これで、しばらくはもつでしょう』」

 女の手には、一枚の人形の紙があった。

「『合作、【丑寅鬼神】よ』」

 女は紙を宙に投げた。紙は、フワフワと地上へ向かった。

「『さて、子子丸。貴方も、行ってらっしゃい』」

「『そうだ! おいら達と違って子子丸は戦えるだろ!』」

「『・・・仕方ない。じゃあな』」

 子子丸と呼ばれた男は、仕方なさそうに地上へ向かった。

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