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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
45/67

それぞれの悪魔

 アスモは、レトサムとゴーダンの間に位置する【レスト自然公園】に居た。彼は暴れる鬼には目もくれず、ある一本の木の下へと歩み寄っていった。

「『やあ、そんな所で隠れてないで君も出てきたらどうだい?』」

「『・・・こんなに天気がいいのに、戦いに勤しむなんて可笑しいだろ? そんなこと、鬼どもにやらせておけばいいのさ』」

 木の上には、一人の女が寝転んでいた。十二支罪国組の一員だ。

「『戦う気はないってことだね』」

「『そゆこと。私はお国の大将の考えも知らないし興味もない。ただ、従わなければ殺されるから此処に居るだけさ』」

「『そうかい。じゃあ、安心したよ』」

「『・・・何かするなら私の眠りを妨げないことだね。身のためにも』」

「『・・・』」

 アスモは少し微笑むと、公園で暴れまわる鬼に向けて注射器型の銃を向けた。

「『邪魔はしないさ。あくまで紳士気取りなんでね』」

 銃から、注射器の針が発射された。






「あんた、名前は?」

「り、リナリアです」

「そうか。私はサタニットだ。リナリア、あんたんとこのお嬢様の部屋は何処だ?」

「す、すぐそこです」

「案内して。そこに用があるの」

「?」

 事情が飲み込めないまでも、サタニットに敵意がないことに気付いていたリナリアはアニマの寝室まで案内した。道中の鬼は、全てサタニットが撃ち殺し、ことごとく穴の開いた紙に変化していた。

「あってくれよ・・・あった!」

 サタニットは、ベッドの下から奇妙な装置を引き出した。

「それは・・・?」

「以前の誘拐事件の時に使った転送装置。これを使って、閉鎖空間にあの三人を招待したってわけ」

「それを、回収するために・・・?」

 サタニットは三つの装置を引き出し、もう一つを探っていた。

「まあね。まあ、この館を守るのも仕事の一つだけど。・・・ん? 可笑しいな、ひとつ足りない」

 サタニットが仕掛けた装置は四つ、見つかった装置は三つだ。

 その時、廊下から轟音と使用人たちの歓声とも悲鳴ともつかない声が上がった。

「何・・・?」

 リナリアが廊下に出て、二階であるその場からエントランスを見下ろした。すると、そこには深紅の槍で鬼を薙ぎ倒し疾走する、仮面を着けたルナドの姿があった。

 ルナドは二階に跳び上がり、リナリアの目の前で仮面を外した。

「よお、顔が見られると少々まずいんでな。一応、怪盗だし」

「先生! この怪物は何なんですか!?」

「さあな。分かるのは、放っとくとヤバイってことくらいだ」

 そう言ってルナドは、抱えていた箱を地面に置いた。

「話は聞いたぜ。俺の聴覚を舐めるなよ。こいつが必要なんだろ」

「それは・・・!」

 ルナドの置いた箱の中には、装置が入っていた。

「な、なんであんたがこれを!」

 部屋から飛び出してきたサタニットがルナドに詰め寄る。

「いや、宿主が居ないってんで侵入して物色してたら、面白いものがあったんで盗んだんだ。そしたら怪物が入ってきて出るに出れなくなって、即席で仮面とマント作って正体隠したのさ。で、お前らの声が聞こえたんでエントランスから戻ってきたってわけさ」

「はぁ・・・」

「まあ、何でも良いわ。装置は全部揃った。後は、この野蛮な怪物を排除するだけよ」

「俺はパスだ。面倒事は嫌いなんで」

「あ、先生!」

 ルナドはコウモリの翼で、飛びさっていった。

「行っちゃった・・・」

「ちっ、あの男には恨みがあるっていうのに」

 サタニットは小声で言うと、銃を取り出して走りだした。

「貴女は安全なところに居なさい! 門はレヴィが守っている。これ以上怪物が来ることはないわ!」

「は、はい!」

 サタニットは、使用人を襲う鬼を中心に始末をし始めた。






「消えた?」

 アニマが声を漏らす。ベルゼと激しい鍔迫り合いを繰り広げていた男の姿は消えていた。

「逃しましたね」

「ああ、もう! 色々と状況が読めないわ! 侵略者に、死神、戻ってきた悪魔・・・ちょっと、誰か説明して!」

 アニマが叫ぶと、アリオスが返事をした。

「それについては全部俺が説明できる。だが、少し待ってくれ。彼女を・・・」

「?」

 アリオスは、座り込むなゆたに近づいた。

「『大丈夫か?』」

「『逃した・・・。父上の仇だったのに・・・』」

 なゆたは、涙を流していた。

「・・・参ったな」

「て、テレサが様子を見ます! 話せなくても、その位は・・・」

「ああ、頼む」

 そう言ってアリオスはテレサになゆたを任せると、アニマに話し始めた。

「じゃあ、何から説明すれば良い」

「まずは、貴方達の正体ね。死神だなんて、魔力を持たないのにあんな能力使えるのは何故?」

 アニマの質問に、アリオスは答え始めた。

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