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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
44/67

殲滅開始

「詳しい説明は省いて、簡単に説明する」

 そう前置きしてマモーネは話し始めた。

「前回の誘拐事件で、ルシファニーはルシファーに相当こっぴどく叱られてな」

「そうですか」

「で、当の本人は実家で不貞寝中だ。謹慎食らったんでな。だが、俺たちは命令に従っただけとお咎めなし。それどころか、俺とベールとサタニットはルシファ二ーに貰った招待状で人間界のパーティーにまで参加していた」

「それで、船にも会場にも居たんですね」

「でだ、途中で用事が出来たってんでサタニットは帰ってしまったんだが、今日まで俺達はパーティーを普通に楽しんでいた。だが、ものすごい形相でお前たちが出ていくのをベールが見たってんで興味が出てな。ベールがどうしても此処まで来るって言うからきたんだよ」

「しかし、なぜ僕達の手助けを? 僕達を助けても、あなた方に得はないでしょう?」

「助けて得はない。助けなかった時の損がデカイのさ」

「?」

「ルシファニーはどうにか説得して、侵略は諦めさせた。だが、何処かギルバートには執着している節がある。またルシファニーに暴れられても困るんだよ」

「ああ、なるほど」

「此処に来るまでにベルゼと会った。ベルゼの話では、吸血館には既に二人行っているらしい。誰が行っているかまでは知らないが」

「アスモが行っているのはありえないわ。彼はサタニットともレヴィとも共に行動することはない。彼は見かけによらず一匹狼のような所があるわ」

 アスモという名前を聞いて、若干神菜子の表情が歪んだ。

「館の方は心配ない。それより、街のほうが危ない。今、鬼と呼ばれる怪物が発生して街中大暴れしてる。このままじゃ、占拠されるまでもなく崩壊するぞ」

「そんな・・・」

「なら、僕達で止めるしかないでしょう」

「・・・まさか、あの時の欲望がこんな所こんな早くで解消されるとはな」

「?」

「次何処かで会ったときは敵なんて関係でないことを祈ります、ってお前が言ったんだろう」

「あ、ああそうでしたね。敵でなくて本当に良かったです」

「さて、今回はルシファニーの命令ではないが、大罪魔総出だ。全面協力するぜ」

「ありがたいです」

 ベールがか細い声で、眠たそうに話した。

「私の能力は怠惰の力。あまり行動するのは好きじゃないの。でも、今回は協力してあげるわ。私が寝てる間に、皆を打ち倒した貴方達に興味があるし」

 そう言うとベールは、倒れている亥威の側にしゃがみ込んだ。

「マーちゃん、先に行ってて。私は大丈夫だから。すぐに追いつくから」

「ん、ああ。俺たちは散らばらないほうが良い。相手も大人数だからな」

「分かりました。行きましょう」

 ベールを除く三人は、嵐の中を走り去った。

「・・・」

 ベールは亥威の頬に手を添えると、呟いた。

「・・・記憶操作系能力ね。解除してあげましょう」

 ベールの手のひらが青白く光った。






 ベルゼと男による、激しい鍔迫り合いが起きていた。近づくことすらままならい威圧感があった。

「あれが、ベルゼ・イーター? 前に対峙した時とは大違いよ?」

「アニマ嬢、あんた本気のベルゼを見たことないだろ」

「?」

「俺も、テレサも、四年前に魔界でベルゼと戦った」

「四年前・・・!? それって・・・」

「魔界を、魔王の支配から解放した救世主なんて呼ばれてたさ。俺はそんなつもりじゃなかったんだがな」

「やっぱり・・・」

「その時のベルゼは、暴食と言うよりは侵食って感じだった。思い出すだけで寒気がする」

「そんな様子、前はなかったわよ」

「見てれば分かるさ。あいつは負けを知らない」

 ベルゼはいつの間にか持ち替えた包丁を曲芸師のように扱っていた。

「【オードブル・血まみれ鼠の髪の毛添えサラダ】」

「『【子子斬り】』」

 包丁と、男の不思議な剣がぶつかり合った。大きな鈴の音が響いた。






「『おや? 鬼たちはどれほど手間取っているんでしょう。未だに制圧できていないのですか』」

 辰蒔が、吸血館の下へとたどり着いた。門前に立つ女に、訝しげな視線を送る。

「『そこをどきなさい。死にたくなければ』」

「『嫌です!』」

「『誰ですか貴女は。不気味な女め』」

 女は声高らかに答えた。

「『緑眼鬼、レヴィ・ジェラシア! またの名を大罪館門番レヴィ! 以後お見知りおきを』」

「『門番・・・、邪魔する気ですか』」

 二人の間に、火花が散った。

(サタニットさん・・・中は任せましたよ)

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