大罪魔、再び
「貴方・・・この間の!」
アニマがベルゼを見て驚く。かつて自分を攫った悪魔が、目の前にいれば当然のことである。
「言いたいことは山ほど有るでしょうが、後にしてください。まずは、そこの薄汚いネズミを片付けるのが先です」
ベルゼはそう言うと、なゆたと男の間に入った。
「『下がってください。邪魔です』」
「『な!? わ、私は・・・』」
「『死にたくないなら、下がっていなさい』」
そう言うと、ベルゼは何処からかナイフとフォークを手に取ると、男に向けて話しかけた。
「『貴方達の明確な目的がわかりませんが、君主の命令により貴方達を排除します』」
「『排除? 面白いことを言うな』」
「『まあ、一度侵略しようとした国を自分たちの手で守るというのも確かに変な話ですがね』」
ベルゼはジャグリングのようにナイフとフォークを弄びながら誰へともなく言った。
「この国には今、侵略者を排除するために大罪魔が六人集結しています。ルシファニーは来てませんがね」
「あの悪魔が六人・・・!?」
「先日出番がなかった、あの人も出てきていますからね・・・」
ベルゼはナイフとフォークを構え、男に言い放った。
「『捕食を始めましょうか。頂きます』」
「『何、・・・!?』」
酉居の羽が、空中で凍り砕け散った。
「『あっ・・・ぐぁあ・・・ッ!』」
亥威が右肩を抑えて倒れこんだ。それと同時に類が自由になる。
「全く、しようがないわね」
「この程度の相手に、俺は負けた覚えはないぜ」
「・・・お前は!」
倒れこんだ亥威の背後から、レイピアを持ったマモーネと、何故か周囲に雨が降っていないベールが居た。
「『誰だ・・・貴様ら!』」
「『大罪魔。貴方達の敵とだけ言っておくわ』」
「ベールさん、悪魔だったんですか・・・」
「そうよ。隠しているつもりはなかったんだけどね」
「さて、俺・・・というかベールはあまり動けないのでな、お前ら好き勝手に倒せよ」
「言われなくても・・・」
「やるわよ!」
「『ひぃ・・・!』」
「『な、んで・・・、私が・・・!』」
類と神菜子が、亥威と酉居に向きあう。
「貴女にかかった術は私が解いたわ。思い切りやりなさい」
「【時止】、だっけ? 好きなようにしな」
神菜子が空に手をかざした。
「お嬢様に教わった秘策・・・【アイスシャワー】!」
雨粒の一つ一つが凍り、猛スピードで酉居に向かって降り注いだ。
「『う、あぁ!』」
類は、ナイフを取り出して空へ投げた。
「時を切り裂け。【リーパー・リッパー】!」
次の瞬間、倒れこんだ亥威の周囲、四方八方からナイフが襲いかかった。
「『がっ・・・はぁ!』」
妖怪の二人はその場で倒れた。しかし、気を失ってはいなかったため、亥威と酉居の一言をその場に居た全員は聞き取ることが出来た。
「『私達がやられても、この街の呪的中心さえ占拠すれば・・・あの館さえ・・・』」
「『辰蒔が、既に、行っている頃。鬼も、十数体、連れていった・・・』」
二人はそのまま気を失った。
「館・・・? この街には吸血館しか・・・!」
「類! 急ごう!」
「おい、ちょっと待て」
走りだそうとした二人の襟を、マモーネが掴み引き止めた。
「何をするんですか!」
「話を聞け、でないとこの騒ぎは収まらない」
「ですが、館には使用人たちが・・・」
「だから、話を聞けって」
「私たちは、此処に来る途中にベルゼに伝言を受けたわ。貴方達にも悪い話じゃない」
「?」
二人は、マモーネの話を聞き始めた。
「きゃー!」
吸血館に、数体の鬼が侵入していた。使用人たちは各々逃げ惑っていた。その使用人の中に、学校が休みだったリナリアも居た。
「ぐるぁああああああ!!!」
「い、嫌・・・」
鬼の腕が、大きく振り上げられた。狙いはリナリアだ。
「がぁあああああ!!」
「ッ・・・?」
何か大きな音と共に、鬼の叫び声が途絶えた。
「大丈夫かい。全く、だから野蛮な奴は嫌いなんだよ」
「あな・・・たは?」
「んー・・・悪魔」
そこには、拳銃を鬼に向けて放ち額を撃ちぬいたサタニットが余裕の表情で立っていた。




