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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
42/67

暴食の悪魔、再び

「・・・何? 類? 何処?」

「え・・・?」

 神菜子が、目の前に居る筈の類を探し始めた。距離的に認識できないはずはなく、類はそれに違和感を感じた。

「なんで? 真っ暗・・・」

「『この娘の、視覚を、遮断した。彼女は、今、自分の姿すら、見えない』」

「なっ・・・」

「『ところで、あの娘は知り合いかい? だとしたら同情するよ。酉居の殺し方は残酷だからね』」

「『なんだって? 零草はそう簡単に殺されない』」

「『どうかな。現にあんたも身動きとれないだろ? 酉居は、私より強い。あの娘は確実に死ぬ』」

「う・・・」

 神菜子は、這いつくばるように動いた。しかし、視覚を奪われたことにより向かっている方向は的はずれだった。

「零草!」

「類? 何処?」

「『次は、聴覚』」

 酉居が手をかざした。すると、神菜子が耳を抑えてうずくまった。

「あぁ! いぎっ・・・っ!」

「『すぐに、耳鳴りは、消える。そして、何も、聞こえなくなる』」

「『何をした!』」

「『アレが酉居のやり方さ。相手の五感を封じる呪術を使って、相手の恐怖心を煽り、殺す』」

「『外道・・・め』」

「『人じゃない私らに、人間の道を説くのはお門違いさ』」

「『亥威、今から、殺す』」

「『了解』」

 酉居は、背中から生えた黒い翼から羽を一枚毟りとった。そして、その羽根を神菜子に向けて投げつけた。羽は付け根の方から神菜子の足に突き刺さった。

「あっ・・・!」

「『彼女は、今、自分の、声以外の、音が、聞こえていない』」

 そう言いながら、酉居は何本もの羽を投げ続けた。

「『この羽根は、殺傷能力が、著しく、低い。急所以外では、ほぼ、無駄』」

「痛っ・・・! ひぃ・・・! 類、何処? 何処に居るの?」

「零草!」

 類の言葉は、神菜子には届かなかった。

「『最後に、触覚を、遮断。これで、痛みを、忘れて、死ね』」

 酉居が羽を神菜子に投げつけた。その瞬間、神菜子の目に光が戻り、それと同時に亥威の右肩がレイピアに貫かれた。






「! アニマ嬢!?」

「あら、アリオスのところのメイドじゃない」

「こっちに、なゆたさんが来ませんでしたか!? 見失ってしまって」

「見てないわよ。私も先刻きたところだから」

「そうですか・・・」

「ところで、先刻の鈴の音聞いた? レトサムから聞こえたのよ」

「レトサム、って・・・随分離れてるじゃないですか!」

「そうなのよ・・・」

 その時、再び鈴の音が聞こえた。

「! あっちからね」

「あ、アニマ嬢!」

 テレサは、なゆたが鈴の音に反応したことから、鈴の音の聞こえた方へ向かった。

 アニマが歩みを止めた。視線の先には、小刀を構えたなゆたと、なゆたに小刀を向けられた灰色の髪の男だった。男は剣らしきものを携えており、キセルを持っていた。

「『お前を殺すために! 私は此処まで来たんだ!』」

「『・・・ご苦労な事だな。無駄な事を』」

「『何を・・・!』」

「あ!」

 なゆたは、小刀を持って男に走り寄っていった。男は、鋭い眼光を放ちながらキセルを弄っていた。

「『父上の敵ぃいいいいい!』」

「『・・・つまらん』」

 男が振り返った瞬間、男は何かを悟り後ろに飛び退った。

「『・・・誰だ』」

「・・・勘の良い鼠ですね」

「! 貴方は・・・」

 アリオスとアリスに加え、もう一人の招かれざる客がそこに居た。

「お久しぶりですね、Tテラ。四年ぶりですね」

「ベ・・・ルゼ?」

 不機嫌そうなアリオスの横に、不敵な笑みを浮かべ緑色の軍服を着たベルゼが立っていた。

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