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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
悪魔編
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吸血執事

「あの人が、何かしたかも分からないわね」

「はい・・・」

「ところで、貴女名前は? 私は零草神菜子」

「わ、私は【リナリア・ルフィス】といいます。リナリアと呼んで下さい」

「分かったわ。ところで、そのことは誰かに話した? 先生とかに」

「いえ、今から・・・」

「目を覚ましたわよ! 皆!」

 リナリアの声を遮るように、医務室の方から野次馬に向かって叫び声が聞こえた。

「目を覚ました!?」

「行きましょう! リナリア」

「は、はい」

 二人は、医務室に走っていった。

 野次馬に囲まれた女生徒は、教師の質問攻めを受けていた。

「なんで倒れたか、覚えてる?」

「・・・目に、吸い込まれるような感じでした」

「は? 何を言っている」

「み、緑色の目が・・・私を・・・」

「緑色の目!?」

 神菜子は、緑眼の女を見た。医務室の方を見つめて笑っていた。

「あ、あの人の目・・・」

「本当だ、緑色・・・」

「まさか、あの人がなんかやったんじゃない?」

 野次馬が教師の制止を振りきって緑眼の女に近づいていった。






 校舎の裏で、アニマと類は話していた。

「・・・類、貴方も気づいているでしょ?」

「はい・・・」

「あの二人、人間じゃないわ」

「はい。それでいて、僕達とも違う何かですね」

 類はモノクルを外し、懐にしまった。

「日光に耐性のある貴方なら任せられるわ。あの二人を監視しなさい」

「はい」

 その瞬間、類の髪がすこしずつ白く変化していった。それと同時に、茶色だった目は赤く、犬歯が鋭く尖っていった。

「昼間に吸血鬼の姿になるのは、やはり疲れますね」

 類のその姿はまさしく、お伽話に出てくるヴァンパイアのようだった。それもそのはずで、類の正体は・・・

「吸血鬼の姿が、板に付いてきたわね」

「それはどうも」

 類は、元々は人間であった。しかし、ある事件で大怪我を負ったためにアニマから血を貰って、混血の吸血鬼となった。そのため、吸血鬼としての能力が一部欠如した不完全な吸血鬼なのだ。

 血を渡したアニマは純血の吸血鬼で、幼女のような姿だが年齢不詳。本人曰く、『この国が出来る前には物心がついていたわ』だそうだ。ギルバート王国が建国したのは、今から七百年は前になる。

「いい仕事してね。類」

「了解しました」

 類は、校舎の屋上まで跳び上がった。それを見れば、類が人間ではないのが分かる。

「ふふ、あとは頼んだわよ。類」

 次の瞬間、アニマの姿は消えていた。

 その頃、校庭では・・・






「なんの用でしょうか?」

「とぼけないで! 貴女が何かしたんでしょ?」

 女生徒が緑眼の女を責めたてるが、緑眼の女は微笑みながら佇んでいた。

「あたいが、何かした証拠がありますか?」

「だって、あの子が緑色の目がなんちゃらって・・・」

「この国に、緑色の目の人なんて珍しくありませんよ」

「今日の客の中に、緑眼の人なんて貴女しかいないわ! 受付をしてたから分かるのよ!」

「そうですか」

「そうですか、って・・・まだしらばっくれるの!?」

「人聞きの悪い。それに、あまりしつこいとあたいも怒りますよ」

「なにっ・・・!?」

 突如吹いた突風で、緑眼の女の前髪が乱れた。そして、前髪に隠れた左目があらわになった。

「・・・見てしまいましたね」

「ッ・・・!」

 その瞬間、野次馬のほとんどが同時にバタバタと倒れた。

「なっ・・・!?」

「あら・・・不可抗力とはいえ、思ったより倒れましたね」

「! 貴女・・・!」

 神菜子が、緑眼の女の目の前に飛び出た。

「なんですか? あたいが何もやってないのは見たでしょう?」

「なにもやってない? ふざけないで! 今の発言、狙ってたとしか思えない!」

「・・・」

「貴女、一体何者!?」

「ふふ、何者・・・ときましたか」

 緑眼の女は前髪を元の形に整えると、神菜子に言った。

「あたいは悪魔。嫉妬の大罪魔、【レヴィ・ジェラシア】!」

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