アルカナと死神
「あんた、最初私に魔力を感じないっていたわね?」
「え、ええ」
「それはそうよ。私は吸血鬼でも、まして人間ですらないもの」
「!?」
「さて、あんたらの出番はお終い。こいつは私が片付けるんだから」
アリスがポケットからタバコを取り出し、咥えた。
「【13】」
アリスの手には、一枚のタロットカードがあった。
「死神に殺されたことはあるかい?」
投げられたカードは空中で形を変え、大きな鎌を持った白骨になった。その姿は、お伽話、小説、絵画でお馴染みとなった死神の姿そのものだった。
「切り裂け、グリムリーパー」
死神が、怪物の体を真っ二つに切り裂いた。その瞬間、怪物の体が消滅して二つに避けた紙がひらひらと落ちてきた。
「さて、怪物はこいつだけじゃない。来るまでの間に既に三体殺してきた」
「そんなに・・・!?」
「こいつはとんでもない事件になるかもしれない・・・。こんな怪物が町中を歩きまわって、しかも凶暴ときた。しかも、私のアルカナと同じで召喚者が居る」
「召喚者?」
「私は、タロットカードでアルカナと呼ばれるものを召喚する。それと同じように、先刻の怪獣も同じように、誰かが・・・」
「ちょっと待って。貴女、魔力を感じないのよ。それなのに、なんでそんな能力が・・・」
「そんなことか。あんたら、私の弟は会ったか?」
「弟?」
「アリオスっていう出来損ないのバカ弟なんだが・・・」
「あ、アリオス!?」
三人は、ついさっきまでバーベキューの約束をしていた男の顔を思い出す。
「急に事件が起きたんで行けなかったが、私もパーティーに行くつもりだったんだ。で、その弟になにか感じなかったか? そこの、吸血鬼のお嬢さん?」
「・・・なんで私が吸血鬼って」
「私とアリオスは、魔力も聖力も・・・魂すら持たない」
「・・・?」
「死神さ」
「死神?」
「そう。死神には生けとし生ける者全ての魂が見えるのさ。生物によってその性質が違うから、簡単に分かる」
「な・・・」
「さて、事細かく説明していられるほど時間はなさそうだ。私はこれから、ゴーダンと北東にある街【サザンナ】を警官隊と捜索する。下手をすれば、軍隊も出撃しないといけないかもしれない」
「そんな・・・」
「では」
アリスはそのまま走り去っていった。
「どうしましょうか」
「どうするも何も、とにかく吸血館へ向かうわよ」
三人は、レトサムへ走っていった。
「そりゃ!」
アリオスは、小舟にテレサとなゆたと共に乗り込んだ。
「行くぜ。しっかり掴まってろ!」
アリオスは大剣を取り出して、構えた。
「テレサ、その娘しっかり押さえてろよ」
「了解!」
「『!?』」
「【デスサイズ】!」
大剣が形を変え、大鎌へと姿を変えた。
「どぉ・・・りゃ!」
アリオスが鎌を一振りすると、船が勢い良く進み始めた。
「『さっきの話、本当だな?』」
「『ほ、本当です! ですから、約束は・・・』」
「『約束は守る。ただし、報酬はちゃんと払ってもらうぜ!』」
船は、ギシギシと音を立てながら猛スピードで進んでいった。
「良いの? 追いかけなくて」
「ああ、良いさ」
「サーちゃんも初日で帰っちゃったし」
「・・・だな」
「マーちゃん、そろそろ飽きたわ。帰りましょう」
「そうしようか」
ベールは、きちんと正装をした茶髪の男と話していた。男の腰にはレイピアが携わっていた。
「・・・いえ、やっぱり気が変わったわ。行きましょう、ギルバートへ」
「? なぜだ」
「面白い人達にあったわ。会いに行くのもめんどくさいけど、このまま帰るのもめんどくさい。なら、会いに行くのよ」
「・・・分かったよ。行こうか」
ベールと茶髪の男は、ゆっくりとした歩調で船へ向かった。
「珍しいな、怠惰なお前が自分から何か動くなんて」
「たまには、私もマーちゃんみたいに強欲になってみるのよ」




