アリオスの誘い
パーティに来てから三日目、アニマの機嫌が良くなかった。
「どうしました? お嬢様」
「類、先刻聞いた話じゃ、東方の国の客が突然来れなくなったって」
「そうですか・・・」
「来る予定だった妖猫寺家は、少し交流があったから楽しみにしてたのに・・・」
不貞腐れたように机に突っ伏すアニマに、何者かが近づいてきた。
「アニマ嬢、暇そうだな」
「あんたは・・・アリオス?」
近づいてきた者は、アリオスとテレサだった。類が前見かけたときには気づかなかったが、テレサの首にはアクセサリーには見えない首輪が着いていた。
「俺達もあんたらと同じように一昨日此処に来たんだが、大幅に予定が狂っちゃってな。最終日は城の目の前の砂浜が開放される。そこでバーベキューをするつもりなんだが、一緒にどうだ? 少し話がしたい」
「バーベキュー? 肉は食えるの?」
「それがバーベキューだろう」
「良いわねぇ。参加させてもらいましょうか」
「そうか」
「では、テレサは材料を街まで買いに行ってきます」
「あ、私も行きます!」
「え、え?」
買い出しに行くというテレサに、神菜子が近づき、耳打ちした。
「他人が用意したものだと、お嬢様がいちゃもんつけるのが目に見えているので。私がお嬢様用の食材を揃えますので」
「あ、そういうことですか」
「ではお嬢様、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
二人は、街に買い出しに向かった。
二人の姿が消えると同時に、アリオスの顔つきが変わった。
「丁度良かった。出来れば、あのメイドには席を外してもらいたい話があったんでな」
「・・・どういうこと?」
「あんたら、吸血鬼だろ?」
「!?」
「なぜそれを・・・?」
「おっと、警戒しないでくれ。敵意はない」
「・・・」
「俺の会社は知っているよな。民間軍事会社だ。表向きはな」
「表向きは?」
「そう、表向きだ。裏ではな・・・能力者の保護をしている」
「能力者の保護? どういうことなの?」
アリオスはタバコを取り出し、火をつけて咥えた。
「人、人外関係なく、能力者を保護している。例えば、能力のせいで迫害を受けたやつや、能力を持っていたせいで何らかの組織に狙われていたりな」
「そう、で、私達にそれを話した理由は?」
「ああ、あんたらにも協力してほしいことがあるんだ」
「なに?」
アリオスは一呼吸置いて、言葉を発した。
「この国が危険に晒されそうになった時、臨時でうちの社員と一緒に戦って欲しい」
「え、神菜子さん私より年下だったんですか?」
「はい。私は十八ですけど」
「テレサは二十です」
「そんなに変わらないじゃないですか」
「ですね」
そんな会話をしながら、二人は商店街を歩いていた。
「お嬢様は生レバーを軽く炙ったものが大好物です。たしかこの間ココらへんで売ってた気が・・・!」
「? どうしました?」
テレサの問いかけを無視して、神菜子は一目散に建物の隙間の道へと走っていった。それを見て、テレサも神菜子を追いかけた。
「! これは・・・」
「しっかり! 大丈夫?」
路地裏には、明らかに外国のものと思われる服を着た少女が倒れていた。少しやつれていて、顔色が悪かった。
「テレサさん! 医者か、古城まで運びましょう!」
「はい! でも、その前に・・・」
「?」
テレサはおもむろに右腕の袖をまくった。
「【エレメント・ホーリーウッド】」
「え・・・!?」
テレサの右腕から、小さな薬草が生え出した。




