ベール・ス・ローズ
しばらくして、船は小島に到着した。類たちは、他の乗客と共に外へ出た。日光を避けるためのアニマの日傘が、他の乗客を軽く押しのけていた。
「あら、小島は小島だけど、普通に街もあるのね」
アニマの言う通り、島にはパーティ会場となる古城のほかに、商店街らしき街並みが見えた。
「あの古城は、パーティーの主催者の別荘らしいですよ」
「そうなの? 神菜子。別荘ねえ・・・」
類たちは島に上陸し、島で待ち構えていた案内人に招待状を見せ、古城に案内された。
古城の中では、一人ひとり部屋が割り振られ、そこにパーティ開催中は滞在できるとのことだった。
「じゃあ、一段落ついたら食堂に集合ね」
「食堂・・・って、また食べるんですか?」
「まだ朝食を摂ってないわ」
「いつもは寝てるじゃないですか」
「いいのよ。特別なのよ」
「じゃあ、お嬢様、類、またあとで」
「では」
「じゃあね」
三人はそれぞれ、自分の部屋へ向かった。
「ふぅ・・・お酒を飲まされなくてよかった」
結局アニマは類に酒は勧めず、ひたすら外国のお菓子の食べ方を類に聞いていた。
「早く行かないと、お嬢様に怒られるのは目に見えている」
類は燕尾服に着替えると、部屋を出て食堂へ向かった。
「ようやく解放された・・・」
アリオスは、古城の廊下を歩きながらため息を吐いていた。船のではほぼずっとにテレサが付いていたため、落ち着く暇がなかったのだ。
「俺・・・一体何のために此処に居るのか分からなくなってきたぜ。姉貴を見つけねえとなんにも始まらねえんだがな」
アリオスは、食堂に向かっていた。パーティーは食堂で時間ごとに、別の催しがされている。アリオスの目的は、まず自分の姉に会うことだった。
「呼び出しといて、出迎えにも来ねえ! 出迎えに来ない上に、場所すら知らせねえ!」
アリオスは、姉への怒りを顕にしながら食堂へ走っていった。
「来たわね、類」
「類、さっき凄い人が走っていった!」
「?」
「カーリーって分かる? あそこの社長が鬼のような形相で走ってったわ。もう私爆笑しそうに・・・」
「お嬢様、それは失礼ですよ。私も吹き出しそうになりましたけど」
「二人揃って、なにしてるんですか」
「カーリーって会社の名前も、外国の戦の神からとったらしいわよ。案外、先刻の社長さん本人かもしれない」
「・・・そんなわけないでしょうに」
三人が話していると、食堂のステージに人が上がって、話し始めた。
「本日も当パーティーに出席いただきありがとうございます。私、この城の城主【ハイド・グルッセル】でございます。どうぞ、ごゆっくりして行ってください」
「ハイド・グルッセルねえ・・・聞いたことないわね」
「私も聞いたことありません」
「僕もです」
「ハイド・グルッセルはギルバート王国の有名な地主よ」
「!?」
いつの間にか、先日の奇妙な少女が背後に立っていた。
「あ、貴女は?」
「私は【ベール・ス・ローズ】。ベールでいいわ」
「有名な地主・・・ですか」
「有名といっても、一般的には知名度は低いわね」
眠たそうにベールは話す。
「やっぱり昼間はダメね。眠たくて話にならないわ。またどこか出会いましょう」
ベールは、食堂を出ていった。
「なんなのかしら、あの娘」
「さあ?」
「・・・ベール・ス・ローズ。ハイド・グルッセル・・・」
パーティーは何事も無く終わった。翌日も、類たちは街を探索したりしながら過ごした。
そして、パーティー最終日に事件は起きた。




