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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
34/67

ベール・ス・ローズ

 しばらくして、船は小島に到着した。類たちは、他の乗客と共に外へ出た。日光を避けるためのアニマの日傘が、他の乗客を軽く押しのけていた。

「あら、小島は小島だけど、普通に街もあるのね」

 アニマの言う通り、島にはパーティ会場となる古城のほかに、商店街らしき街並みが見えた。

「あの古城は、パーティーの主催者の別荘らしいですよ」

「そうなの? 神菜子。別荘ねえ・・・」

 類たちは島に上陸し、島で待ち構えていた案内人に招待状を見せ、古城に案内された。

 古城の中では、一人ひとり部屋が割り振られ、そこにパーティ開催中は滞在できるとのことだった。

「じゃあ、一段落ついたら食堂に集合ね」

「食堂・・・って、また食べるんですか?」

「まだ朝食を摂ってないわ」

「いつもは寝てるじゃないですか」

「いいのよ。特別なのよ」

「じゃあ、お嬢様、類、またあとで」

「では」

「じゃあね」

 三人はそれぞれ、自分の部屋へ向かった。

「ふぅ・・・お酒を飲まされなくてよかった」

 結局アニマは類に酒は勧めず、ひたすら外国のお菓子の食べ方を類に聞いていた。

「早く行かないと、お嬢様に怒られるのは目に見えている」

 類は燕尾服に着替えると、部屋を出て食堂へ向かった。






「ようやく解放された・・・」

 アリオスは、古城の廊下を歩きながらため息を吐いていた。船のではほぼずっとにテレサが付いていたため、落ち着く暇がなかったのだ。

「俺・・・一体何のために此処に居るのか分からなくなってきたぜ。姉貴を見つけねえとなんにも始まらねえんだがな」

 アリオスは、食堂に向かっていた。パーティーは食堂で時間ごとに、別の催しがされている。アリオスの目的は、まず自分の姉に会うことだった。

「呼び出しといて、出迎えにも来ねえ! 出迎えに来ない上に、場所すら知らせねえ!」

 アリオスは、姉への怒りを顕にしながら食堂へ走っていった。






「来たわね、類」

「類、さっき凄い人が走っていった!」

「?」

「カーリーって分かる? あそこの社長が鬼のような形相で走ってったわ。もう私爆笑しそうに・・・」

「お嬢様、それは失礼ですよ。私も吹き出しそうになりましたけど」

「二人揃って、なにしてるんですか」

「カーリーって会社の名前も、外国の戦の神からとったらしいわよ。案外、先刻の社長さん本人かもしれない」

「・・・そんなわけないでしょうに」

 三人が話していると、食堂のステージに人が上がって、話し始めた。

「本日も当パーティーに出席いただきありがとうございます。私、この城の城主【ハイド・グルッセル】でございます。どうぞ、ごゆっくりして行ってください」

「ハイド・グルッセルねえ・・・聞いたことないわね」

「私も聞いたことありません」

「僕もです」

「ハイド・グルッセルはギルバート王国の有名な地主よ」

「!?」

 いつの間にか、先日の奇妙な少女が背後に立っていた。

「あ、貴女は?」

「私は【ベール・ス・ローズ】。ベールでいいわ」

「有名な地主・・・ですか」

「有名といっても、一般的には知名度は低いわね」

 眠たそうにベールは話す。

「やっぱり昼間はダメね。眠たくて話にならないわ。またどこか出会いましょう」

 ベールは、食堂を出ていった。

「なんなのかしら、あの娘」

「さあ?」

「・・・ベール・ス・ローズ。ハイド・グルッセル・・・」

 パーティーは何事も無く終わった。翌日も、類たちは街を探索したりしながら過ごした。

 そして、パーティー最終日に事件は起きた。

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