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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
東方編
33/67

カーリー社

 船はこの後一つの港に寄り、その後小島に向かうようだった。類は船員に手渡されたパンフレットを見ながらクロロの懐中時計を開いた。先日購入した時計は吸血館の自室に保管してあり、未だに未開封である。

「現在八時十五分か」

 小島への到着予定時刻は九時三十分。まだ一時間以上ある。

「どうしましょうかね・・・。きっぱりお酒を断る気で、お嬢様の所へ行ったほうがいいかもしれませんね・・・」

 類が船の中へ向かおうと振り返り、来た道を戻っていると、アリオスの隣に不思議な女がいることに気が付いた。その女は、髪の毛をポニーテールに結び、白と黒の反転したメイド服を着ていた。背はアリオスよりひと回り小さく、メイド服を着ていなければ兄妹にも見える。

「やっぱり、社長ともなると使用人の一人や二人普通なんでしょうかね」

 類は足を止めず、船の中へと向かった。






「めんどくせぇな・・・」

「アリスさんの言うことには逆らえませんねぇ」

「気持ち悪い・・・俺乗り物嫌いなんだよ」

「マス・・・御主人様? 薬飲みますか?」

「いや、良い・・・。そんなことよりテレサ、会社に置き手紙してきたか?」

 テレサと呼ばれた女は、ポケットの中からメモを取り出して読み始めた。

「幹部四人には直接伝達。残りの社員には、それぞれの幹部から部下に伝えるようにしました」

「お前もか?」

「【木】の班の方々には伝えました」

「んじゃいいわ」

 アリオスは胸ポケットからタバコを取り出し、マッチで火をつけた。

「暇な船旅と正月という口実で開催される外交パーティー。仕事休んでまで行くほどのものなのかねぇ?」

「さあ? でも、テレサは御主人様と二人きりだから良いですけど・・・」

「おい」

 アリオスは、擦り寄ってくるテレサを抑えつけ、タバコを口に咥えた。

「全く、姉貴は何やってんだ・・・」






「あ! 類! 調度良かったわ!」

「なんでしょう?」

 船内に入った類は、アニマたちと合流していた。

「これ、一体何かしら? 怖くて食べれないんだけど」

「それは・・・大福じゃないでしょうか」

「【だいふく】?」

「一度諏訪子さんに御馳走になったことがあります。思いの外美味しかったです」

「んじゃあ、一口」

 アニマは大福を一齧りすると、驚いたように口をすぼめた。

「す、酸っぱ・・・」

「え!? 甘かったはずですが・・・」

「熟れてない苺が入ってる・・・」

「・・・それは知りません」

「ぐぅ・・・」

 そうこうしてる間に、船は最後の港に到着した。

「さて、これから一時間近くはどこにも止まらず会場に向かうのね」

「そうですね」

「暇ねえ」

 アニマはそう言っているが、見るからに船の食事を満喫しているようだった。






 此処は地獄。レヴィとベルゼが大罪館の前で立ち話をしていた。

「二日後に、人間界に行った三人は帰ってきます。それまでに、ルシファニーが機嫌を直せば良いですが・・・」

「無理じゃないですか?」

「無理ですね」

「さて、ルシファニーが八つ当たりを始める前に逃げるとしましょうかね」

「どこにですか?」

「秘密です。レヴィは門番の仕事をサボらないように」

「・・・はい」

 ベルゼは軍服らしき服を着て、大罪館の目の前にある真っ赤な湖に飛び込んだ。レヴィはそれを、がっかりしながら見つめていた。

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