三人
「類、それは何?」
ニヤニヤと笑いながら、アニマは帰ってきたばかりの類から招待状をひったくった。
「あら、なんで貴方がこれを持ってるのかしら? 私も持ってないのに」
「諏訪子さんから頂きました」
「ふーん・・・」
「僕は使いませんので、お嬢様に差し上げましょうか」
「というか、これ一枚で三人なのね」
「? ええ」
「・・・三人ねぇ」
「行く気・・・なんですね?」
「当たり前でしょう」
アニマは少し考えると、閃いたように類を指さした。
「私と、類と、神菜子。三人丁度よ」
「僕も・・・ですか?」
「もちろん! 明日の朝、港に行くわよ。会場はここから近い小島のようだし」
「小島・・・ですか」
吸血鬼であるアニマの弱点は、日光やにんにく、十字架などの他にも流水などがある。流動する水の塊である海は、魔除けにも使われる塩の力もあってか吸血鬼に甚大なるダメージを与える。類には、それだけが怖かった。
「平気よ。招待状に書いてある港には、大きな客船しかないわ」
「なら・・・屋内にいれば大丈夫そうですね」
「ということだから。神菜子には伝えておいてね」
「了解しました」
アニマは上機嫌で寝室へと向かった。アニマの睡眠時間帯は午前十一時から午後七時だが、気まぐれで起きてくる時がある。そういう時は決まって、飽きるとベッドに戻っていく。今回も例外ではなく、現在二時三十分、アニマは眠りに就こうとしている。
「さて、零草にも知らせに行くか」
類は神菜子を探しに館内を捜索し始めた。
「『長い船旅だな』」
「『そう言ってやるな。船での移動は全員同意だろ?』」
「『それはそうだが、こうも長い間何もない船の上っていうのもな・・・』」
「『嵐や雨は私がどうにかしているが、退屈はどうにもならない』」
男二人が、船の船頭で話していた。
「『本当に国を攻め落とす気なのかね? お国の偉い奴は』」
「『さあ? ところで、そろそろ酔ってきたので船内に戻りません』?」
「『そうするか』」
二人の男は船の中へと入っていった。
「『今月中に到着しなかったらどうするつもりなんだろうな。卯鷺はどうする気なのか』」
「『着きますよ。私がいればね』」
ハロベルト高等学校第二学年のリナリアは、放課後から吸血館でメイドとして働いている。ほかの使用人とは違う特別なシフトだ。
「只今帰りました」
「おかえりリナリア」
ほかの使用人に挨拶をして、リナリアは使用人室へ向かった。執事とメイド長以外の使用人は性別ごとに合室である。
「みんな出てるのか・・・」
リナリアが着替え終わり部屋の外に出ると、神菜子が部屋から出てきたのが見えた。
「神菜子さん」
「あ、リナリア。おかえり」
「何か仕事ありますか?」
「んー・・・明日から暫く、私と類とお嬢様は出かけるらしいからね。今日は仕事ないけど明日からは掃除お願いね」
「分かりました」
「あ、そうそう、こないだ貸した本読んだ?」
「読みましたよ」
「お嬢様も寝ちゃったし仕事もないし、ちょっと話さない?」
「良いですよ」
二人は、ティールームへ雑談をしに行った。アニマのディナーの準備までこれといった仕事はない。実質、リナリアは夜中しか働かないようなものだ。
「そうだ、明日からリナリアに頼みたいことがあるんだけど」
「?」
そして、翌日。




