緑眼の女
校舎へ入った三人は、様々な出し物を回っていた。
「占いは楽しかったわね。東方の国の占いはなにがなんだか分からなかったけど」
「そうですね」
廊下を歩く三人の目の前に、女生徒が現れた。前髪で顔の上半分が隠れた女生徒と、ハキハキとした女生徒の二人組だった。
「すみません、ちょっといいですか?」
「なに?」
「私達、お客さんの中からアンケート採っているんです。ご協力お願いします」
「いいわよ」
「ありがとうございます!」
アンケートに神菜子とアニマが答えている間、類はハキハキとした女生徒しか話していないことに気が付いた。前髪の長い女生徒は、もう一人の女生徒の後ろに隠れていた。
女生徒も類の視線に気がついたのか、顔を真っ赤にして隠れた。
「ありがとうございました! では、引き続きお楽しみ下さい!」
「どうも」
女生徒は、また次の客のもとへと向かっていった。
「・・・」
「どうかしたの? 類」
「いえ・・・」
「次の所へ行きましょう!」
アニマが歩き出そとしたその時、校庭から悲鳴が聞こえた。
「何!?」
生徒たちがざわつく。
「類、確認してきて!」
「はい」
類が校庭に駆けつけると、野次馬の隙間から倒れている女生徒が見えた。
「死んでるの?」
「分からない。突然倒れて・・・」
「やだ、怖い・・・」
騒然とする校庭に、教師がやって来た。
「何があったんだ? 説明しなさい」
「突然、彼女が倒れて・・・」
「突然?」
野次馬の間を通りぬけ、類は倒れた女生徒に近づいていった。
「あ、貴方は誰ですか!? なにを・・・」
「静かに」
類は女生徒の首に手を当て、脈を測った。
「脈はありますね。呼吸もしている・・・」
生死を確認している類に、ルナドが近づいていった。
「何をしている? 小僧」
「生死の判断です。生きてはいます」
「ほう、こんな場面で冷静に生死の確認を買って出るような奴、そうそういないぜ。お前、名前は?」
「八草類です。貴方は?」
「俺か? 俺はルナドってんだ。この学校で歴史を担当している。つっても臨時だけどな」
「彼女を医務室に運ぶのを手伝って下さい。死んでは居ませんが、気絶をしているので」
「なら、俺一人で十分だ」
ルナドは女生徒を担ぎ上げ、類に一言告げた。
「お前、面白いな。覚えておく」
「?」
ルナドは医務室へと向かっていった。
それと同時に、神菜子が駆け寄ってきた。
「お嬢様は?」
「校舎の中よ。日傘持ったまま出てったでしょ?」
「あ・・・」
類から傘を受け取った神菜子は、アニマと共に戻ってきた。
「どう? 何があったか説明できるかしら?」
「はい。女生徒が一人、突然倒れたとのことです。今は、医務室にいます」
「そう」
その時、アニマがはっとしたように横を向いた。アニマの視線の先には、緑眼の女と金髪の男が佇んでいた。
「お嬢様?」
「・・・あいつ」
「え?」
「類、来なさい」
アニマは神菜子から傘をひったくると、校舎の裏の影に走っていった。それを追って、類も走りだした。
「あ、私も・・・」
走りだそうとした神菜子は、横から走ってきた女生徒とぶつかってしまった。
「いたた・・・」
「だ、大丈夫ですか!?」
「へ、平気・・・貴女こそ、大丈夫?」
「わ、私は大丈夫です!」
「あれ? 貴女は・・・」
神菜子とぶつかったのは、アンケートを採りに来た前髪の長い女生徒だった。
「す、すいません!」
「いや、いいわよ。それより、なんでそんなに急いでいたの?」
「じ、実は・・・」
「何?」
「私、見てしまったんです。あの人が話した直後に、彼女が倒れたのを・・・」
「あの人・・・?」
女生徒の指差す先には、緑髪の女が立っていた。
「・・・」
緑眼の女は、蛇のような笑みを浮かべていた。