元の世界へ
「あれ? 大罪館に戻ってきた?」
「アスモ、何をしてる」
大食堂に大罪魔が六人集合していた。
「あ、マモーネ。吸血鬼のお嬢様たちに事細かに説明してたところだったのに・・・」
「? 説明なら使用人の二人組にもしたぞ」
「そうじゃないんだよ・・・あのお嬢様の力を借りれば王国の乗っ取りも楽勝だったのに」
「どういうことだ、それは」
「ルシファニー、知らないのかい? あのお嬢様の正体」
「吸血鬼だろ?」
「そうじゃなくて、職業としてだよ。普通に考えて、あの見た目で働けるわけもない。しかも彼女の館には家族は居ない。しかしあれほどの財産を持っていること、不思議に思わなかったのかい」
「全然」
「・・・」
「アスモ、続けてくれ」
「そうだ。続けろ」
アスモはため息を吐きながら話し始めた。
「ギルバート王国が今どんな状況かも分かってないんじゃないのか? ルシファニーは」
「知らん。どうせ乗っ取るなら知らなくていいだろう」
「甘いな。そんな考えじゃ精々表の王国しか支配できない」
「表?」
「ギルバート王国には現在、法律の届かない、人間の立ち入らない裏の社会がある。アニマ・シェイドルは裏社会の権力者の一人だ。マモーネなら知ってると思ったんだけど」
「いや、知らなかった」
「そう。まあ、覚えておいたほうがいいよ」
「そうか、じゃあ今からもう一回攫ってこよう」
「ルシファニー、お前懲りてないな」
「あ?」
「・・・ルシファーに報告な」
「んなっ・・・」
マモーネとルシファニーを尻目に、アスモは傷だらけのレヴィに近づいていった。
「レヴィちゃん」
「あ、アスモ」
「傷薬だ。火傷や切り傷くらいなら一瞬で治癒する」
「ありがとうございます」
「で、ひとつ頼まれてくれるかな?」
「なんでしょう?」
「サタニットちゃんにもその薬渡しといてよ。僕が行くと殺されかけるから」
「あ、はい」
アスモは適当な席に腰を下ろし、頬杖をついた。
(面倒事に巻き込まれるのは御免だけど、今回は得をした。あのメイド・・・良いね)
アスモは不敵に微笑んだ。ベルゼが無傷の右腕で食事を運んでいるのを見ながら・・・
「ふっ・・・ざけるなっ!」
リナリアが眠る医務室で、ルナドは養護教諭に怒鳴られていた。
「お前仮にも教師だろう! 授業に出ずに無断欠席してた生徒探しに行ったら家の前で倒れてるのを発見したとか、ほかに言い訳らしい言い訳がないのか!」
「だから、本当だって言ってんだろ」
実際は、ルナドと共にリナリアはリナリアの自宅の前に居た。龍の力を持ってしても、空間の崩壊による移動は避けれなかったのだ。
「お前をこの学校に入れるためにどれだけ苦労したと思ってる! クビになったりでもしたら私がお前の首と胴体を切り離す!」
「おお、怖・・・」
「冗談だと思うなよ」
「分かったよ。アンジェリカ」
「全く・・・」
ルナドがそそくさと医務室をあとにすると、アンジェリカと呼ばれた養護教諭は眠っているリナリアを見ながら呟いた。
「この間の魔力が消えている・・・やはりルナドも気づいていたのだろうな」
リナリアは寝息をたてて眠っている。まるで今までの事件が夢であると信じこむように。
気がつくと類は自室のベッドの中に居た。服はベッドに入った時のままで、今まで気付いていなかったがここで、閉鎖空間ではパーティー用の燕尾服を着ていたことに気が付いた。
「夢・・・だったのか?」
しかし、その淡い期待は一瞬にして打ち破られてしまう。
「類! 無事!?」
「・・・零草、部屋に入るときはノックをしてくださいと何度も・・・」
「だって! 心配じゃない・・・」
「・・・夢じゃないか」
「うん。お嬢様が呼んでたわ。着替えてお嬢様の部屋まで」
「了解」
神菜子が部屋を出るのを見届けると、類はため息を吐きながらクローゼットから着替えを取り出した。




