キメラ
「この生物は一体・・・?」
「それは捕獲したキメラさ」
「・・・誰?」
振り向いたアニマとリナリアの目の前に、無傷のアスモが立っていた。
「いやあ、それを捕まえるのには苦労したよ。なにせ森の中を飛び回っているのを見つけたものだからね」
「まあ、誰でもいいわ。一体、これはなんなの?」
「それはキメラ。合成生物といって、異なる数種の生物を融合させて作った人工生命体さ」
「キメラ・・・聞いたことないわね」
「それもそのはずさ。キメラは本来魔界にしか生息していなかった。いや、出来なかったというのが正しいかな」
「それが、なんで此処にいるのよ」
「キメラは頭の狂った科学者が作ってしまった生物だ。しかもその科学者っていうのが先代大罪魔、つまり悪魔だった。最初は魔獣と呼ばれる強化生物を作った。次は何も無いところから生物を創りだすことに成功した。そして、キメラが作られた。その後も研究は進み、科学者はキメラを量産して魔界の王と結託して魔界を完全に支配した。その後、人間界にも進出するために作られた一部のキメラがこうして人間界に生息してしまったというわけだ」
「? 結局進出してないの?」
「ああ、計画は途中で中止になった。計画の途中段階で作っていた人間を核とした【エレメントキメラ】の半数が事故で逃げ、その内の一人は人間界から迷い込んだ人間と裏切り者の悪魔と結託して魔王に反旗を翻した。その結果、残るエレメントキメラも魔王を裏切り、魔王は捕らえられた」
「ちょっと待ってください! なんなんですか、魔界とか人間界とか・・・」
リナリアが間に入って問う。自分を挟んで行われる会話が理解できなかったのだ。
「この世界は大きく分けて三層で出来ている。上から、天界、人界、地界だ。魔界は地界の一部、人間界は人界の一部だ。地界や天界は様々な細かな世界が集まって出来ているが、人界だけが特殊で、いくつもの人間界によって構成されている。此処はその内の一つということになる。いや、此処は違うか」
「そう! それよ! 此処は一体なんなの? 太陽が出てないから快適そうな世界だけど」
「此処は強欲の大罪魔マモーネの能力で創られた閉鎖空間だ。どの世界にも属さないインスタントな世界さ」
「閉鎖空間・・・」
「此処から出たいならルシファ二ーに頼むといい。もう僕はゲームも何もどうでもいいんだ。徹夜して作ったゲームは破壊されるし、ボコボコにされるし・・・まあカワイコちゃんに倒されるなら本望だけどね」
「そうじゃないかと思ってたけど、貴方も悪魔なのね」
「まあね。でも敵意はないよ。やっぱり僕には悪事は似合わない。というか成功するはずがない」
「じゃあ、そのルシファニーって奴のところまで案内してくれないかしら。道に迷ってるのでね」
「いいけど、正直無駄だと思うね。ルシファニーは邪魔が入るのが嫌いだから今頃部屋は封鎖されている」
「どうにかしなさいよ」
「無理だよ」
「使えないわね」
「ごめんね」
「誠意が感じられないけど」
アスモは部屋に入って、檻の一つの前に立った。
「連れていけない代わりといっては何だけど、僕達、というかルシファニーの目的について教えてあげようか。僕はこの計画自体には賛成だけど、今回の悪意あるゲームは阻止したかったんでね」
「あら、貴方も大層な裏切り者じゃないの?」
「人聞きの悪い。正直ルシファニーは頭がよすぎて、それでいて傲慢すぎる。だからこそ、ルシファニーに思いつかない方法が僕には思いついたんだ」
「?」
「アニマ・シェイドル、貴女について事前に調べた。裏社会の女帝たる貴女の力が欲しい」
「う、裏社会の女帝・・・?」
「・・・何故それを知ってる?」
「大罪魔には裏社会の元住人が居るのでね」
「・・・」
「では、お話ししましょう。【ギルティキングダム計画】について・・・」
アスモは指を鳴らした。アニマとリナリアは、アスモの話に耳を傾けた。そして、その計画の内容に愕然とした。
「ん、っく・・・!」
サタニットはゆっくりと身を起こした。
「あの男・・・手加減しやがったな」
サタニットの体は何処も傷ついた様子はなく、至って普通だった。
「頭痛い・・・。一体何なんだ、あの炎。まあ、この先に行ったってことは彼奴もただじゃ済みそうにないな」
サタニットは立ち上がって銃を拾い上げた。
「暇つぶしでこんな目に遭ってちゃたまらないわ。いつになったらギルバート王国は私たちの物になるのかしら」
ギルティキングダム計画、それはギルバート王国を悪魔の国とする計画である。




