処刑ショー
ルナドが扉を開くと、そこには劇場のような大広間があった。
「? どういうことだ?」
ルナドが顔をしかめた。それもそのはずで、大広間は奥に進むにつれて下がっていて、およそ三階にあるような施設ではなかった。
類は扉を閉めながら話した。
「悪魔の住むような館です。外の様子もそうですが、此処はもしかしたら僕達が住むところとは別の世界なのではないでしょうか」
「ああ、それなら知ってる」
「なんですって?」
「あー、もう面倒くさいし、お前には教えてやるよ。俺はドラキュラっていう種族でな、龍と何かしらの生物、俺の場合は人間のハーフなんだ。龍って生物は便利なもんで、如何なる結界や呪術的壁があろうと何処へでも移動できるんだ。俺はその能力を使って此処へ来た。此処は今まで来たことのあるどの世界とも感じが違う。なんというか、例えれば作られたばかりの他人の家、ってところか」
「良く意味がわかりませんが、貴方がどういう方法で此処に来たかは分かりました」
「で、追い打ちをかけておこう。お前たちは、俺の協力なしでは元の世界に帰れない。でなければ、此処の悪魔の総大将をぶっ飛ばして帰してもらうくらいだな」
「とりあえず、この部屋から奥には・・・」
類の言葉を遮るように、足音が近づいてきた。
「誰ですか?」
「・・・類?」
扉の脇には、よくみると下からの階段があった。その階段から、神菜子が登ってきたのだ。
「零草!」
「良かった・・・」
しかし、神菜子に近づいた類が動きを止めた。
「・・・本当に零草なんですか?」
「? そうよ」
「なんででしょう、少し違和感が・・・」
「・・・そう」
「どうかしたんですか?」
「私、悪魔とのゲームに負けちゃって・・・そいつの作った新薬の実験台にされたの」
「・・・」
「でも、良いの! これで私は、類と対等になれたの!」
「どういうことですか?」
「薬は、魔力を持たぬ生物に魔力を持たせる薬で、私は今魔力と一緒に冷気を操る能力を手に入れたの。もう、類やお嬢様に頼るだけじゃないわ!」
神菜子は強気に言ったが、類には分かっていた。神菜子が、人間の枠を越えたことに対する不安や恐怖を感じていることが。
類は微笑みながら神菜子を抱きしめた。
「ありがとうございます。ですが、実はお嬢様を助ける必要はなくなりました」
「?」
「この方、ルナドさんがお嬢様とリナリアさんを解放してくれました。あとは、この空間から出れればいいんですが・・・」
「お、お嬢様は今何処に!?」
「あー、それならエントランスにほうってきた。すごい物音がしたぞ」
「! それって、大丈夫なの?」
「知らん」
「わかりませんが、とにかくこの空間から出るためにはルナドさんの協力が必要です。ルナドさん、目的の物は近いのですか?」
「まあな、というか此処に有りそうだ。いや、近づいてきてるな」
「近づいてきてる?」
ルナドの言葉通り、扉が勢い良く開いてベルゼが入ってきた。
「・・・サタニットがやられていたのでもしやと思いましたが、まさかここまでたどり着いてしまうとは」
「! お前か、お宝持ってんのは」
「宝? なんのことですか。それより、たった今からゲームは中止です。貴方のせいで本当に面倒くさいことになってしまった」
ベルゼは不機嫌そうにルナドを指さした。
「ルシファニー! 聞いてるでしょう! ゲームは終わりです!」
大広間にベルゼの声が反響した。すると、大広間の一番下に黒い霧が発生し、集まっていった。
「全く、俺様の退屈が全く解消されてないぞ」
黒い霧の中から、金の椅子に座り林檎を齧る男が現れた。
「ゲームは中止です。人質が逃げました」
「逃げたってお前・・・完全に素通りしてきたじゃねえか」
「不意打ちでもなければあの吸血鬼は捕らえられません。それよりも、この侵入者を捕食すべきと考えました」
「まあ、お前の判断は正しい」
林檎を食べ終えると、男は立ち上がって話しだした。
「俺の名はルシファニー・エンペル。この館の主だ。俺の退屈しのぎに付き合ってくれて感謝するぜ。まあ、全くしのげてないがな」
ルシファニーは腕を大きく広げた。
「ゲームは中止だ」
ルシファニーが腕を振り下ろすと、類と神菜子が地面に叩きつけられた。
「これから、俺様主催の処刑ショーを始める!」
ルシファニーの高笑いが大広間に響き渡った。
「どう? 立てそう?」
「ええ、おかげ様です」
「じゃあ、行くわよ」
「はい」
二人は立ち上がり、上を向いた。
「さて、じゃあ私をおぶってくれるかしら?」
「? どうしてですか」
「いいからいいから、ちゃんとおぶらないと死ぬわよ?」
「・・・はい」
アニマはリナリアに飛びついた。
「行くわよ!」
「ひっ・・・きゃぁあああああああああ!!!」
アニマは翼を広げて飛び上がった。
「貴女一人くらい簡単に運べるわ!」
「きゃぁああああああ!!」
アニマは、勘を頼りに最上階へ向かっていった。




