龍の子
サタニットの銃撃を、類は全て辛うじて避け、ナイフを投げて反撃していた。しかしナイフは拳銃には分が悪く、簡単に避けられてしまった。銃撃を避けるために類は距離を取ったため、狙いを定めるのも難しくなっている。
「避けてばっかりじゃ、勝てやしないよ!」
「くっ!」
サタニットは反動を感じてないかのように乱射していた。
「もう魔力のストックが殆ど無いというのに、仕様がありません」
懐中時計を取り出し、類は呟いた。
「甘い時間を永遠に【スウィートタイム】!」
周囲の時間が止まり、銃弾が宙に浮いているのが見えた。
「止まっている銃弾の間を通ることなど容易い」
類は銃弾の間を潜ってサタニットの背後に辿りついた。
「タイムオーバー」
時間が動き出し、銃弾が廊下の壁に当たった。それと同時に、類はサタニットを羽交い絞めにした。
「い、いつの間に・・・!?」
「負けを認めて下さい。そうすればすぐに終わります」
「勝手なこと・・・言ってんじゃないわよ!」
サタニットは類を睨みつけ、叫んだ。
「汚らわしい・・・男が私に触るんじゃないわよ!」
類の体の至る所から血が吹き出した。
「な・・・に・・・?」
「【アングリー・ドラゴン】! 愚者に憤怒の鉄槌を!」
思わず類が体を抑え、サタニットの体が自由になった。サタニットは類に掌を向けて、攻撃の体制をとっていた。
「しまった・・・!」
「死ね!」
その瞬間、類とサタニットの間を深紅の槍が横切った。
「お楽しみの所悪いが、中断させてもらうぜ」
「・・・誰だ?」
「あ、貴方は!」
「お? あ、小娘の使用人ってお前だったのか・・・」
ルナドは帽子を被りなおしながら二人を見比べた。
「まあ、どうでもいい。俺はこの先から匂う宝さえ手に入ればいいんだ」
ルナドが扉の前へ歩き出すと、サタニットがルナドに銃を向けた。
「それ以上進むな」
「・・・物騒なもの出すものじゃねえぜ」
「どうやってここまで来たかしらないけど、これ以上先に進ませる訳にはいかないわ」
「なら、力尽くでいかせてもらうぜ」
ルナドの背中から生えた蝙蝠の翼が、大きく羽ばたいた。
「【ドラクルエンブレム】」
ルナドの腕が龍のように変形し、爪が鋭く尖った。
「・・・りゅ、龍?」
「龍の叫びを聞け」
ルナドが腕をサタニットに叩きつけた。波紋のように紋章が浮かび上がり、サタニットの包んだ。
「ぐはっ・・・!?」
次の瞬間、サタニットが炎に包まれながら地面に叩きつけられた。
「うっ・・・ぐあぁあああああ!!」
「る、ルナドさん・・・? 貴方、何者ですか?」
「ん、龍の子、とでも言っておこう」
いつの間にか火が消えたサタニットの体は、傷はあったが燃えた様子はなかった。
「さて、お前は俺のジャマをするのか?」
「いいえ、そもそも僕は他人と争う気は毛頭ありません。僕の目的はお嬢様の救出ただひとつです」
「・・・マジで?」
「?」
「ひっ、ひーはっはっは! いやあ、そいつは悪いことをした。お前のところの小娘なら俺が牢から出したぜ」
「え!? か、鍵は?」
「そいつは教えられないが、これでお前さんの目的は終了だ」
ルナドは厳重な扉に手をかけて言った。
「使用人はもう一人いるそうだな。もう一人の方へ、学園祭にも来てた男が向かったぞ」
「零草・・・!」
「最上階で折り返せば向こう側にも行けるだろう。付いて来るか?」
「はい、行きます」
「物分りが良くてよかったぜ。お前とは協力できそうで、小僧」
「小僧・・・」
ルナドは、扉を開いた。




