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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
悪魔編
20/67

龍の子

 サタニットの銃撃を、類は全て辛うじて避け、ナイフを投げて反撃していた。しかしナイフは拳銃には分が悪く、簡単に避けられてしまった。銃撃を避けるために類は距離を取ったため、狙いを定めるのも難しくなっている。

「避けてばっかりじゃ、勝てやしないよ!」

「くっ!」

 サタニットは反動を感じてないかのように乱射していた。

「もう魔力のストックが殆ど無いというのに、仕様がありません」

 懐中時計を取り出し、類は呟いた。

「甘い時間を永遠に【スウィートタイム】!」

 周囲の時間が止まり、銃弾が宙に浮いているのが見えた。

「止まっている銃弾の間を通ることなど容易い」

 類は銃弾の間を潜ってサタニットの背後に辿りついた。

「タイムオーバー」

 時間が動き出し、銃弾が廊下の壁に当たった。それと同時に、類はサタニットを羽交い絞めにした。

「い、いつの間に・・・!?」

「負けを認めて下さい。そうすればすぐに終わります」

「勝手なこと・・・言ってんじゃないわよ!」

 サタニットは類を睨みつけ、叫んだ。

「汚らわしい・・・男が私に触るんじゃないわよ!」

 類の体の至る所から血が吹き出した。

「な・・・に・・・?」

「【アングリー・ドラゴン】! 愚者に憤怒の鉄槌を!」

 思わず類が体を抑え、サタニットの体が自由になった。サタニットは類に掌を向けて、攻撃の体制をとっていた。

「しまった・・・!」

「死ね!」

 その瞬間、類とサタニットの間を深紅の槍が横切った。

「お楽しみの所悪いが、中断させてもらうぜ」

「・・・誰だ?」

「あ、貴方は!」

「お? あ、小娘の使用人ってお前だったのか・・・」

 ルナドは帽子を被りなおしながら二人を見比べた。

「まあ、どうでもいい。俺はこの先から匂う宝さえ手に入ればいいんだ」

 ルナドが扉の前へ歩き出すと、サタニットがルナドに銃を向けた。

「それ以上進むな」

「・・・物騒なもの出すものじゃねえぜ」

「どうやってここまで来たかしらないけど、これ以上先に進ませる訳にはいかないわ」

「なら、力尽くでいかせてもらうぜ」

 ルナドの背中から生えた蝙蝠の翼が、大きく羽ばたいた。

「【ドラクルエンブレム】」

 ルナドの腕が龍のように変形し、爪が鋭く尖った。

「・・・りゅ、龍?」

「龍の叫びを聞け」

 ルナドが腕をサタニットに叩きつけた。波紋のように紋章が浮かび上がり、サタニットの包んだ。

「ぐはっ・・・!?」

 次の瞬間、サタニットが炎に包まれながら地面に叩きつけられた。

「うっ・・・ぐあぁあああああ!!」

「る、ルナドさん・・・? 貴方、何者ですか?」

「ん、龍の子、とでも言っておこう」

 いつの間にか火が消えたサタニットの体は、傷はあったが燃えた様子はなかった。

「さて、お前は俺のジャマをするのか?」

「いいえ、そもそも僕は他人と争う気は毛頭ありません。僕の目的はお嬢様の救出ただひとつです」

「・・・マジで?」

「?」

「ひっ、ひーはっはっは! いやあ、そいつは悪いことをした。お前のところの小娘なら俺が牢から出したぜ」

「え!? か、鍵は?」

「そいつは教えられないが、これでお前さんの目的は終了だ」

 ルナドは厳重な扉に手をかけて言った。

「使用人はもう一人いるそうだな。もう一人の方へ、学園祭にも来てた男が向かったぞ」

「零草・・・!」

「最上階で折り返せば向こう側にも行けるだろう。付いて来るか?」

「はい、行きます」

「物分りが良くてよかったぜ。お前とは協力できそうで、小僧」

「小僧・・・」

 ルナドは、扉を開いた。

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