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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
悪魔編
17/67

神菜子の敗北

 類が開けた扉の奥には、首を吊る形で布製の人形が佇んでいた。

「・・・なんだ、人形か」

 類は扉を閉め、次の扉に手をかけた。類が扉を押し開けると、目の前にはしごがあった。

「怪しいですが、行くしかないようですね」

 類ははしごを上って上の部屋へ行った。上の部屋には扉が一つあるだけで、ほかには何もなかった。

「さて、行きますか」

 扉を開け外に出ると、そこには何の変哲もない廊下があった。しかし、廊下の奥には厳重に閉ざされた扉があった。

「もしや、あそこに?」

 類が足をふみ出すと、扉の前に人が現れた。

「そこまでよ、侵入者」

「!」

「さて、ゲームをしましょうか」

 煙草を咥えながら、その女は言った。

「私はまどろっこしいルールとか考えるの嫌いなんだ。だからさ・・・単純に殺し合いでどう? ルールは簡単、どちらかが死ぬか、負けを認めるか、気絶するなりなんなりで抵抗が出来なくなったら負け。貴方が勝ったら好きに此処を通れば良いわ。まあ、私が勝てば貴方は屍だけどね」

「いいですね。僕も正直、複雑なルールは嫌いなんです。トランプだってポーカーよりババ抜きのほうが好きですし。いいでしょう、行きますよ」

 類は懐からナイフを取り出した。しかし、女が取り出したものを見て類は戦慄した

「私は憤怒の大罪魔【サタニット・アング】。ルシファニー程じゃないけど私も退屈は嫌いなの。楽しませてよ!」

 サタニットの手には、二丁の拳銃があった。






「う・・・はぁ・・・」

「頑張るね、でもそろそろ限界じゃない?」

 現在、神菜子は四つの小瓶を空けてそのうちひとつが痺れ薬だった。神菜子は今、立っていることがやっとの状態だ。それに対してアスモは、五本の小瓶を空けて無事である。

(あいつが解毒剤を一回飲んだとしても、私にとっての毒は今テーブルの上には二本・・・テーブルの上の小瓶は六本、猛毒さえ飲まなければまだ私に分はある!)

「どうしたんだい? 君の番だよ」

「分かってる・・・わよ!」

 神菜子は小瓶を一つ手に取り、開けた。

「う・・・くっ・・・!」

 神菜子はそれを飲み干した。体に異常はない。

「運がいいね。じゃあ次は僕の番だ」

 そこで、神菜子は気が付いた。もしもこれでアスモが無事ならば、自分にとっての毒は残り一本、もしもテーブルの上に解毒剤が残っていれば毒はなく自分の勝ちだと。

「おっと、しまった。痺れ薬だ」

 しかし、アスモは痺れ薬を飲んでいた。

「さて、君の番だ」

「ッ・・・!」

 毒は少なくとも一本。それも、四本中の一本だ。仮に痺れ薬だったとしても、この状態で飲めば先に進むことはできない。

「はぁ・・・はぁ・・・」

「どうする、降参するかい? その場合には、毒ではないけど僕の作った新薬の実験台になってもらうけどね」

「・・・ッ!」

 神菜子は耐え切れず、小瓶を全てなぎ倒した。小瓶が地面に叩き付けられて割れる。

「それは、降参ということで良いかな?」

「はぁ・・・はぁ・・・」

「・・・」

 アスモは神菜子に近づいた。

「僕はこれでも医者だ。無駄な殺生は美学に反する。だから殺しはしない」

「・・・」

「でも、君は負けたんだ。相応の代償は払ってもらうよ」

 そう言ってアスモは神菜子を抑えつけてキスをした。

「ッ!?」

「・・・」

 痺れ薬で動けないはずのアスモは全く動きが鈍っていなかった。だが、神菜子は薬のせいで動けず、抵抗すら出来なかった。

「はぁ・・・はぁ・・・」

「さて、これで効果が出るはずだ」

「な、何を・・・! あぁ、あぁああああ!!」

 神菜子が胸を抑えて顔を歪めた。

「僕の能力は毒と薬を創りだす能力【ホーンオブゴート】だ。今口渡ししたのは最新作、魔力を持たぬ生物に魔力を持たせる薬だ」

「!?」

「鳩や犬にはやってきたが、人間の実験台が居なくてね。もし君たちがゲームで勝てなければ、人質の女の子も実験台にするつもりだったよ」

「リナリアを・・・うぐっ、あぁ・・・」

 神菜子の周りの空気が凍り、細氷が舞い始めた。

「魔力を持たぬ人間にも、それぞれ自然に特殊な能力が芽生えることは稀にある。君は、冷気のようだね」

「苦・・・しい、寒い・・・」

「大丈夫、すぐに楽になるさ」

「うぅ・・・うぁあああああああああ!!!」

「!?」

 神菜子を中心に、冷気がうずを巻いて暴発した。






「おい、ベルゼ」

「なんでしょう」

「外でなにかやってるのか?」

「いえ、レヴィが居るだけのはずです」

「デケェ音が響いたぞ。お前、ちょっと見てこい」

「了解」

 ベルゼの周りに黒い霧が発生し、ベルゼが消えた。それと同時に、門の前にベルゼが現れた。

「・・・! レヴィ!」

 ベルゼは、門の前で倒れているレヴィに気が付いた。

「ベ・・・ルゼ? すいません・・・侵入者です」

「侵入者? この空間はマモーネの作った閉鎖空間です! 簡単に侵入できる場所じゃない!」

「ど、ドラゴン・・・龍の力です」

「龍?」

 ベルゼはレヴィを置き、立ち上がった。

「ゲームは中断せざるを得なさそうですね・・・」

 ベルゼは走って館の中へ入っていった。

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