ポイズンorメディスン
階段を登った類は、周囲に階段が見当たらないことに気が付いた。L字型の廊下は奥まで見渡すことができす、仕方なく類は曲がり角まで進んでいった。しかし廊下の奥にも階段はなかった。
「・・・まさか、扉の奥に?」
廊下の両側の壁にはいくつもの扉がある。この奇妙な館なら、扉の向こう側に階段があっても違和感こそあれおかしくはない。
「一つ一つ開けていきますかね」
類は一番近くの扉を開けた。そして、類は後ろに飛び退った。
「あ、螺旋階段」
階段を登った神菜子の近くに、上へと登る螺旋階段があった。
「・・・最上階に行くならこれでいいよね」
神菜子は螺旋階段を登っていった。階段を登り終えると、目の前にはひとつの扉があるだけだった。
「? この部屋のためだけに階段が?」
神菜子が後ろを振り向くと、螺旋階段が徐々に消えていった。
「え、ちょ、待ってよ! お、降りれないじゃん!」
「まあまあ、そう焦らないで」
「!? 誰!?」
気がつくと扉は開いて、中から優男が出てきていた。
「僕は色欲の大罪魔【アスモ・ラスティー】。ある意味此処はハズレって感じかな。僕とのゲームに勝てば、僕の部屋から奥へ進める」
「・・・悪魔ね。良いわ。ゲームって何?」
「そうだな・・・ゲームというのはお互いが同等のリスクを負わないと面白くない。ということで、こんな物を用意しておいた」
アスモは神菜子を部屋に招き入れた。医務室のようなその部屋、寧ろ医務室そのものだが、その部屋の真中に小瓶が十五個並んだテーブルが置いてあった。小瓶の中には透明な液体が満たされてあった。
「この液体は、七個が人間に有毒なもの。七個が悪魔に有毒なものだ」
「・・・もう一つは?」
「解毒剤さ。このゲームは交互に小瓶の中から一つ選んで飲む。そして、死んだ方の負けだ」
「ッ・・・」
「ただし、死んだほうが負けということはつまりだ、死なずにゲームが続行できれば毒を飲んでも勝ちだ。そのために、いわゆるジョーカーとして解毒剤が入ってる」
「毒を飲んでも、解毒剤を当てさえすれば続行できるってわけね」
「七つの毒の内三つは痺れ薬程度のものだ。つまりお互いの死ぬ確率は十五分の四、いや痺れ薬程度のものでも連続して飲めば危ういかな」
「・・・いいわ、受けてたとうじゃないの」
「良い覚悟だ。じゃあ、先攻後攻はコイントスで決めるとしようか」
「私は表」
「じゃあ、僕が裏だ」
アスモが投げたコインは、テーブルの上で回った後裏を上にして倒れた。
「じゃあ、僕が先攻をもらおう」
「ちょっと待って! 最初から並んであった小瓶の位置は信用出来ないわ! 私が並べ替える!」
「いいよ。じゃあ、僕は後ろでも向いてるよ」
神菜子は念入りに小瓶を並べ変えた。
「いいわよ」
「ん、じゃあこれだね」
アスモは躊躇なく一つの小瓶を手にとって、飲み干した。
「ふぅ。さあ、次は君の番だよ」
「・・・」
神菜子は震える手で小瓶を手に取った。
「どうしたんだい?」
「ッ・・・!」
神菜子は液体を飲み干した。
「おお」
「うっ・・・苦・・・」
「じゃあ次は僕の番だ」
アスモは次の小瓶へ手を伸ばした。
「・・・?」
レヴィは目を覚ました。それは、何者かの気配を感じたからであった。
「? だれも居ない?」
「おっと、少し道を聞きたいんだが」
「!?」
レヴィの背後にはルナドが立っていた。
「だ、誰ですか貴方! この空間には、マモーネの能力か装置がないと入れないはず!」
「おいおい、道を尋ねただけでひでぇな」
「何のようですか・・・? まさか本当に道を聞くためじゃないでしょう!」
「まあな、ちと宝探しだ」
「どうやってここまで来たんですか!?」
「道を尋ねてるのは俺だぜ? まあいい、教えてやるよ」
ルナドは試験管の中の液体を飲んだ。
「・・・ドラゴンの雄叫びを、聞いたことはあるか?」
「! あぁ・・・あ・・・」
「・・・【ドラクルエンブレム】」
門の前に爆音が響き渡った。