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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
悪魔編
15/67

君主ルシファー

「時・・・止?」

「そうです。それが、僕の吸血鬼としての能力」

「そんな・・・私、今まで知らなかった・・・」

「話すのは初めてです。何時か話そうと思っていましたが、まさかこんな緊急事態が来るとは思ってませんでしたので」

「で、それが何なんだ?」

 類は懐中時計を掲げた。

「この懐中時計は前執事のクロロさんから貰ったものです。何の変哲もない様な時計ですが、ただの時計ではありません。この時計は、魔力を吸収して蓄えることができます」

「なんだって?」

「僕は元々人間ですので、生まれついて魔力を持っているわけではありません。しかし、幸か不幸か僕は吸血鬼になったときにあまりに強力な能力を手に入れてしまいました。なので、緊急事態がきた時のためにお嬢様がこの時計に魔力を蓄えてくださったのです。そして、僕はその魔力を使って能力を使うことができます」

「で、その能力が・・・?」

「時止・・・文字通り時間を止める能力です。僕としてはこんな能力必要ではありませんでしたが、お嬢様の役に立つため、救うためになら惜しげも無く使わせてもらいましょう」

「・・・道理で、俺のイカサマの裏をかけたわけだ」

「ええ。貴方が何らかの不正を行うのは目に見えて居ましたが何をするかまでは見抜けませんでした。なので、時を止めて貴方のレイピアと入れ替えさせてもらいました。相手を負かせるためには、相手のレイピアを銀にするでしょうから」

「ふっ・・・ははは! 俺の負けだ。完全に、それこそ文字通り完敗だ」

 マモーネは床で胡坐をかいた。

「で、質問ってのは何だ?」

「ええ、この質問をする前に僕が零草に自分の能力のことを話してしまったので少し脱線してしまいましたが、改めてお聞きしましょう」

 類は一呼吸置いて口を開いた。

「貴方達は七つの大罪を司る悪魔といってましたね。なら、貴方達の君主はどの大罪でしょうか」

「そんなことか。君主の名はルシファニー・エンペル、堕天使ルシファーの子孫であり、傲慢の大罪魔だ。万が一にも、例え時が止めれても遡らせても、お前が勝つことはできない。奴こそがこの世界の王だ!」

「傲慢・・・」

「さて、質問タイムは終わりだ。ルシファーが飽きる前に、さっさと進んだほうがいいぜ。奴に飽きられれば、玩具は即刻処分だ。人質って玩具とかな」

「ッ・・・!」

「最後にいい事を教えてやる。この館には俺の創った術式がいくつもある。そして、新しくつくることも出来る。つまり、こういうことだ!」

 マモーネは地面に手の平を叩きつけた。次の瞬間、類と神菜子の間に透明の壁ができ、館ごと完全に分断された。

「なっ・・・!」

「類!」

「最上階を除く館全域を壁で分断した。まあ、精々一人で頑張れ。もしかすると、一人のほうが楽かもしれないぜ? クールな執事さんよ。じゃあな」

 マモーネが指を鳴らすと、マモーネの周囲に黒い霧ができて、霧が消えるとマモーネの姿も消えていた。

「どうしよう・・・類・・・」

「どうするも・・・後ろを見てください」

 神菜子が後ろを見ると、入り口にも壁が出来ていた。

「・・・行くしかないようです。心配なようなら此処で待ちますか? 安全である保証はありませんが」

 神菜子の顔から血の気が引いていった。引きつった表情で神菜子は話し始めた。

「どっちにしても危険なら、お嬢様を助けるために精一杯頑張るわ。私だって、吸血館のメイド長よ!」

「零草・・・分かりました。では、零草はそちら側から最上階を目指して下さい」

「分かったわ。類も、って言ってもあんな強い能力を持ってるなら心配なさそうだけど、気をつけて」

「分かってます。では」

 二人は、各々階段を登って最上階を目指した。






「あ、そうだ!」

「?」

 アニマは何かを思いついたように起き上がり、何かに気づいて表情を曇らせた。

「あ・・・駄目だ」

「???」

「いやね、私は吸血鬼だから腕を切り落としたくらい一瞬で治せるのよ。だから最終手段として腕を切り落としてこの手錠を外せばと思ったんだけど・・・」

「こ、怖いですよ・・・」

「そもそも今の私には人間レベルの力しか無いから切り落とすことすらできないのよね。もう、やる気も何もかも削がれた気分だわ」

「あー・・・」

「嗚呼、甘いお菓子と紅茶が恋しいわ・・・」

 その時、何者かの足音が近づいてきた。

「誰!?」

「こんにちは」

「・・・その声、昨日の・・・」

「覚えていてくれましたか。嬉しいですね」

「話は良いから、私達を早く出しなさいよ! それもこんな真っ暗な所で!」

「おお、怖い。ですが、出すことはできませんね。しかし、これくらいは出来ますよ」

 突然部屋に明かりがついた。その光景を見て、リナリアが絶句する。

「ぁ・・・ひぃ・・・!」

 部屋の四方の壁の内、一つは鉄格子で外にベルゼが立っていた。しかし、残りの三つの壁にはおびただしい数の動物の骨が飾ってあった。

「今、執事一人とメイド一人がこの館に侵入してきました。貴方がたを助けに来たんでしょうね」

「類と神菜子が?」

「さあ。ですが、そんなちっぽけな希望、僕が捕食してかき消してあげましょう」

 ベルゼは鉄格子の前から姿を消した。

「わ、私達もこの骨みたいに・・・?」

「落ち着きなさい!」

「うっ・・・ひっく」

 遂にリナリアは泣き出した。それを見て、アニマも焦り始めた。

「これが、今まで数回しか体験して来なかった死への恐怖・・・何百年生きていても慣れることはなさそうね」

 アニマは下唇を噛み締めた。






 ルナドのもとにコウモリが戻ってきた。

「そうか・・・いいねぇ、面白そうだ」

 ルナドはコウモリを握った。すると、コウモリは再び液状に戻って試験管の中へ戻っていった。

「さてと、俺も行くか」

 ルナドが試験管の中の液体を右手にかけた。すると、液体は腕を包み鋭い刃になった。

「串刺公の名の下に、お宝頂戴するぜ」

 ルナドは、高く飛び上がった。その背中には、コウモリのようなの翼が生えていた。

「ひひひ!」

 彼はルナド。ツェペシュの異名を持つ大怪盗。その正体は、ドラゴンの子、ドラキュラ。

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