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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
悪魔編
13/67

クロロの懐中時計

 執事のクロロは、幼い類に自分の懐中時計を渡した。

「これを、君に渡そう」

「・・・?」

「お守りみたいなものだ。大事にしておきなさい」

「はい」

「よし」

 その時の懐中時計は、今も類が使っている。






 レヴィは驚愕の表情を浮かべた。レヴィが振り下ろした腕は地面にめり込んでいたがそんなことはレヴィにとって当然のことだった。レヴィが驚いていたのは、

「いない・・・?」

 拳を振り下ろした場所に、いるはずの神菜子がいなくなっていることだった。

 レヴィが周りを見ると、神菜子を抱き抱えた類が膝をついているのが見えた。

「どういうこと・・・?」

 類と神菜子は離れた位置に居た。物理的に考えて、類が神菜子を抱き抱えて走り去るのは不可能だった。にもかかわらず、レヴィは地面に腕を突き立て、神菜子は無事なのだ。

「先刻、貴女は魔族には特殊な能力が備わっていると言いましたね」

「まさ・・・か?」

「僕は中途半端に魔力を持っているので、あまり能力は使えないのですけどね。少しくらいなら使えますよ」

 類は手に持った懐中時計を開いた。時刻を確認する様子はない。

「さてと、零草。立てますか?」

「うん」

「では・・・いきましょう」

 類が、パチンと音を点てて懐中時計を閉めた。そして、ほんの一瞬の出来事だった。

「ッ・・・!?」

「クロロさんから教わった護身術の応用です。相手の動きを封じるだけですので、ご安心を」

 レヴィを羽交い絞めにしたあと、足をかけてレヴィを転ばせた類は、レヴィの首に爪を当てた。

「これで、ねじ伏せたことになるんでしょうかね」

「くっ・・・」

 レヴィは悔しそうに類を睨んだ。

「どうなんですか? それとも、このまま首を裂かなければいけないんでしょうか」

「ひっ・・・!」

 レヴィが情けない声を出した。先刻までの強気な態度は微塵もない。

「通ってもいいですよね?」

「は、はい!」

「だ、そうです。行きましょう、零草」

「え? う、うん」

 二人は館の中に入っていった。

 レヴィは起き上がり、顔に手を当てた。冷や汗と荒い息で、焦り具合がわかる。

(今・・・なにをされた?)

 類が何をしたのか、レヴィにも見当がつかなかった。しかし、一つだけ言えることがあった。

(あの執事・・・思っていたよりも危険!)

 レヴィは指笛を吹いた。何処からとも無く一匹の蛇が近づいてきた。

「ヴァミちゃん、ルシファニーにこの手紙を」

 レヴィは大急ぎで書いた手紙を蛇の背中にくくりつけた。蛇はまた、何処かへ消えていった。

「・・・はあ、またちゃんとできなかった」

 レヴィはため息を吐くと、門に寄りかかって寝始めた。その様子を、ベルゼが見ているとはつゆ知らず。






「・・・」

 ルナドは人気のない裏路地にいた。

(さてと、ここらでいいな)

 ルナドは内ポケットから試験管を五つほど取り出し、中に入った液体をばら撒いた。

「・・・行け」

 液体が数十体の赤いコウモリに姿を変え、散り散りに飛んでいった。

「・・・」

 ルナドはそのひとつひとつが見えなくなるまでコウモリを見ていた。

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