ゲーム
「ようこそ、お待ちしておりましたよ」
「貴女は・・・!」
洋館の門には、レヴィが悠々と佇んでいた。
「貴方がたにはゲームに参加してもらいます」
「ゲーム?」
「はい。ゲームです」
「馬鹿なことを言わないで下さい。それより、此処が何処か教えて下さい」
「あ、言い忘れてましたが貴方がたに拒否権はないですよ」
「なに?」
「現在、この館の地下牢にアニマ・シェイドルとリナリア・ルフィスを囚えています。救出するためにはこの館の最上階にいるあたいたちの君主、【ルシファニー・エンペル】の持つ鍵が必要です」
「お嬢様を・・・?」
「二人を助けたければ、ゲームに参加して下さい」
「・・・」
類と神菜子は迷った。本当に二人が捕まっているか分からないし、そもそも、何故自分たちが此処に居るのかすら分からない。ましてやこれからどうするべきかなど、二人には分かるはずもなかった。
「信じられてないようですね。なら、これでどうでしょう」
レヴィは手を開いて一つの髪留めを見せた。それをみて、類の表情が変わった。
「お、お嬢様の・・・!」
「え?」
「どうですか? これで、少しは信じてもらえましたか?」
「くっ・・・」
「ルールを説明しましょう。ゲームに参加するなら、このルールに従ってくださいね」
「・・・」
「ルールは至極簡単です。鍵を入手し、地下牢の鍵を開ければ貴方がたの勝ちです。手段は問いませんが、地下牢の檻は特殊な材質なので力ずくで壊せるなんて思わないでくださいね」
類が足をふみ出すと、レヴィが威嚇するように地面に足を叩きつけた。
「なにをしているんですか? まさか、このまま入れると思ってませんよね? あたいは大罪館門番レヴィ! 此処を通りたくば、あたいを倒して行って下さい」
「・・・そういうことですか」
類は、懐からナイフを取り出した。
「ふんぎぃいいいいい!!!」
「もう、諦めましょうよ」
アニマは未だに手錠と格闘していた。
「ぜぇ・・・ぜぇ、何この手錠。ただの手錠じゃない?」
「夕方にやってた、シャドーなんとかってできないんですか?」
「できたらやってるわよ。でーきーなーいーかーらーこーまーってーるーのー!」
「は、はあ・・・」
「んもう! 何をやってるのよ類と神菜子は! 私がこんなことになってるのに何処に居るんだか」
「・・・」
アニマは騒いでいたが、リナリアは内心とても怯えていた。人生で初めて体験した『誘拐』『監禁』というものに、恐怖を感じていた。
「・・・大丈夫よリナリア。心配いらないわ」
「え?」
まるで最初から知っていたようにアニマが話しだした。
「あの二人を舐めないほうがいいわ。少なくとも、平凡に暮らしてきた貴方よりも修羅場をくぐってるから」
「修羅場・・・?」
アニマは不敵に微笑んだ。
「・・・」
廊下を歩くルナドは、無断欠席したリナリアについて考えていた。
(成績はともかく、出席率は昨日まで百%だったあいつが無断欠席・・・? 何か訳がありそうだが・・・)
ルナドは足を止め、進行方向を変えた。校舎の外に出るとルナドは、手持ちのカバンの中から怪しい布を取り出した。
「・・・行くか」
布の中から、怪しい仮面が落ちた。
ルナドはマントを羽織った。