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吸血執事と懐中時計  作者: 王星遥
悪魔編
1/67

吸血館

 ギルバート王国の南に位置する街【レトサム】にある館、吸血館で【八草類(やくさ るい】は紅茶を楽しんでいた。

 現在時刻は午後三時、ちょうどおやつ時だ。

「はぁ・・・今日のダージリンはまた一段と香りが良い」

 吸血館には使用人が男女ともに三十人ほど居る。その中でも、執事は男性使用人、メイド長は女性使用人を統括する重要な役職だ。類は執事であり、十八歳という若さにして使用人を統べている。容姿端麗で礼儀正しいためか、女性使用人に人気があるのだが本人は気付いていない。

 おやつ時は吸血館の使用人の休憩時間でもある。類は、休憩時間を自室で過ごすことが大概で、今もこうして自室でティータイムだ。

「類!」

 静かに紅茶を飲んでいた類の部屋に、突然侵入してきた人物が居た。

「入る時くらいノックして下さい」

「あ、ごめん」

 彼女の名は【零草神菜子れくさ かなこ】。吸血館のメイド長で、類と同い年だ。

「で、何の用ですか?」

「そうそう、これなんだけど」

 神菜子は一通の手紙を類に見せた。

「近所にある【国立ハロベルト高等学校】の学園祭の招待状なの。招待状がないと、入れないらしいのよ」

「で、なんで君が持ってるんですか?」

「お嬢様が『今日行きましょー』って」

 類は紅茶を吹き出しそうになったのを耐え、聞き返した。

「お、お嬢様が?」

「うん。四時から行くから準備しろって」

「え、僕もですか?」

「うん。お嬢様の付き添い」

「まあ、お嬢様の決定なら行くしかないでしょう」

「じゃあ、四時にロビーに集合ね」

「はい」

 神菜子が部屋から出たあと、類は紅茶を飲み干して自分の机の引き出しを開いた。

 引出しの中には、隠すように銀ナイフとダガーナイフが仕舞ってあった。

「・・・」

 類は、ナイフを手に取ると懐に仕舞い、モノクルをかけ直した。






「ふふ、言っておくけどお祭りっていうのに興味があるだけよ。遊びに行くわけじゃないからね」

「はいはい」

 類の持つ日傘の影に入りそわそわしながら歩く吸血館の主【アニマ・シェイドル】は、満面の笑みを浮かべて小さな体を揺らしていた。

「お嬢様、そろそろ着きますよ」

「本当?」

「はい」

 神菜子の言った通り、学校にはすぐに着いた。

「思ったより、大きな学校ですね」

「それはそうよ。この国で一番大きな女子校だから」

「・・・女子校?」

 類は踏み出そうとした足を止めた。

「女子校って、聞いてないんですが」

「え? 言ってなかったっけ」

「聞いてませんよ」

 類が周りを見渡すと、殆どの客が女性なのに気付いた。

「・・・入る前から心が折れそうなんですが」

「何言ってるのよ! 楽しそうじゃないの!」

「お嬢様・・・」

「ほら、お嬢様の決定なら行くしか無いんでしょ?」

「うっ・・・」

 類は、渋々学校の門をくぐった。

「招待券はお持ちでしょうか?」

「はい。ちょうど三枚よ」

「はい。どうぞお通り下さい」

 受付を通り、三人は催し物を見るために校庭へ向かった。

「まずは、食べ物を制覇ね!」

「食べ過ぎないで下さいよ」

 アニマは、真っ先に食べ物の出店に向かった。





 

 類達と同じく、ハロベルト高等学校の校舎にいた謎の男女二人組が話していた。男は金髪碧眼、女は緑髪緑眼で左目が髪で覆われていた。

「あまりはしゃがないでくださいよ。これも、任務のうちですので」

「分かってます。あたいだって子供じゃないんですから、命令くらい守れますよ」

「本当かどうか・・・まあ、信じましょう」

「では」

 緑眼の女は、颯爽と校庭へ走り去っていった。

「うまくやってくださいよ・・・」

 金髪の男は、不敵に微笑んだ。

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