表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

古い僕と新しい僕

作者: 空(くー)

《僕》


クラスメイトの女の子が死んだ


だからといって悲しくはなかった

僕はクラスで一人だった

いや、僕は一人なんだ

どこででも

そんな僕にも一応の感情はあった

だから彼女の葬式に参加したんだ

彼女は人気者だったそうだ

たくさんの女子が泣いている

男子にも泣いている人がいた

僕は彼女が羨ましく思えた

人気者だからではなく。先に行けたのだ。と

「ん?おい。見てみろよ。あいつ来てるぜ。あいつにも感情があったんだな」

うるさい

クラスの男子が僕のほうを見ながら言っていた

うるさい

放っておいてくれ

僕は一人で生きていくんだ

僕のほうを見るな

僕を見て笑うな

うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!


それでも僕は学校に行っていた

学校に行かなければ将来危ないから?

それとも友達が欲しいから?


葬式が終わって何日か過ぎた

また変わらぬつまらない日々が始まっていた

あーうるさい。みんなうるさい。すべてがうるさい。

僕は静かに暮らしたいだけなんだ


そして僕は眠りについた。



《僕2》


朝起きると、僕の前を僕が走っていた


なんだろうこれは

夢かな

でも夢のわりにははっきりしていた

僕は上から走っている僕を見ていた

確かにあれは僕だ

でも、だったら僕はなんなんだろう

やがて僕は教室についた

そして

「みんな!おはよう!」

クラス中がざわついた

なんだ?僕はなにを言っている?

その下にいる僕は次々にクラスメイトにあいさつをし、そして世間話さえも始めていた

当然クラス中が驚いていた

いままでクラスでまったく目立たなかった暗いやつがこんなにも明るく振る舞っているのだから……

僕はこうなりたかったのだろうか

その願望が爆発したのだろうか


僕はべつにどうでもよかった

今みんなの前にいるのは、僕だけど僕ではない

だからどうでもいい

好きにしてくれ


この方がいいのだろう

僕はそう思った

そして、明るくなった僕を見つめながら数日が過ぎたある日

僕の家にいたその僕は

唐突に僕の方を向いてこう言った

「この体。私がもらってもいい?」



《僕3》


僕は

「いいよ」

と言った


「ありがと」

と、その僕は言った


僕は考えなかった

だってこの数日を見て今の僕の方がいいのだろうと思っていたからだ

今の僕はクラスの人気者になっている

家でも家族と楽しくしゃべっている

どっちの僕の方が相応しいかは明らかに見えた

だから僕は体を譲った

今、僕が僕に戻ってもまたあの日々が始まるだけだ

ならこの方がいい


そして、その。新しい僕を、

僕は眺めていた



《私》


私には好きな人がいた


その人はクラスで目立たなかった

暗いイメージがあった

でも私は彼の優しさを見逃さなかった

彼は教室に入ってきた虫を殺したりしなかった

逃がしてあげていた

風でとんだプリントを拾ってあげていた

野良犬と戯れていた

掃除を真面目にやっていた

人をバカにしたりしなかった


そんな彼の些細な優しさを私は見ていた

いつしか彼を見るのが日課になっていた

そして、彼を好きになっていた


でも、

私は死んだ

よくは覚えていないけど、最後に私は車の前に立っていた気がする

私は死にきれなかった

好きな人に想いを伝えてなかったから

私はただ、彼のことだけを考えていた


…………

気が付けば

私は彼になっていた



《私2》


私には彼が見えていた


でも、考えてみれば

私は彼と話したことがなかったのだ

だから私は恥ずかしくなってしまって、彼に話し掛けることができなかった

そこで私は思いついた

せっかく彼になったのだから私が彼のいいところをみんなに教えてあげよう!

そう思った


私は頑張った

始めはみんなも困惑していたが

数日で溶け込めるようになっていた


私はもっと頑張ろうと思った

彼のために

何よりも、こうしていれば私はずっと彼と一緒にいることができる

だから私は彼にこう言ったのだ

「この体。私がもらってもいい?」

私なら彼を明るくできる!

自信があったからだ

そして彼は

「いいよ」

と、答えてくれた


私はうれしかった

これからも彼の力になれるのだと

そう思った


そして私はさらに明るく頑張った



《僕4》


また数日がたった


あいからわず新しい僕は人気者だった

僕では考えられなかった

そこにいるのはもはや僕ではなかった

ではどうして僕はまだいるのだろう

それがわからなかった

古い僕はもう必要ないはずなのに…………


ある日、新しい僕が僕に言ってきた

「私ね。ずっとあなたのことが好きだったの」


僕には何を言っているのかわからなかった

理解できなかった


そのあとの新しい僕の話によると、この間の葬式の女の子だと言うことがわかった

だけど僕には名前がわからなかった

もともとクラスに興味がなかったからだ

彼女は少し残念がっていた


そしてその日から僕達は会話をするようになった



《私3》


私には言わなければならないことがあった


私は彼に私の想いを告げた

彼は理解してないようだった

だから私が何者なのかを伝えた

彼は私の顔しか覚えていないと言った

私は少し残念だったが

それだけでうれしかった


その日から私達は会話をするようになった

私はその時間が幸せだった



《僕5》


また数日がたった


僕は会話をすることしかできなかった

自分の体に入れなかった

それでも僕はそんなに残念ではなかった


ずっとこのままでいけたらいい

そう思っていた


しかし

それは続かなかった


あぁ、そうか

四十九日か…………


僕はどうすればいいのだろう

いまさら自分の体に戻ったとしても何をすればいいのかわからなかった


僕はとたんに恐くなった


行かないでくれ、行かないでくれ!!

僕を一人にしないで!

「私だって嫌だよ!あなたと離れたくない!でも、どうしようもないんだよ……」

だからって……僕にどうしろって言うんだよ

僕は臆病者だ

現実から逃げていただけだ

そんな僕にどうしろと……

「大丈夫。あなたならできる。私のことを見てきたあなたならできる!自分を信じて。私を信じて!」

いつのまにか僕は自分の体に戻っていた

もうこの現実からは逃げられなかった


僕は泣いていた

僕は気付いた

彼女のことが好きだと

だから僕は言った

「僕は君のことが好きだ!!」


そこに彼女はいなかった



《今の僕》


人はすぐには変われない


結局、残ったのは僕だった

この結果いいのかはわからないけど

だけど僕は少しずつ変わろうと思う

彼女の残した

この道にのって


そして僕は教室に入ってこう言った

「みんな!おはよう!」

『。』が殆ど無いので読みにくいかもしれませんね。初めて書いた短篇なので、批判や感想を正直に言ってくださると嬉しいです。それでは読んでいただきありがとうございました!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なんだか少し切なかったですね。
[一言] 面白い設定です。はじめ、よくわからなかったのですが、途中から≪私≫が出てきたことではじめのシーンが理解できました。もしかしたらはじめのところでもう少しだけにおわすようなことを書いていると後に…
[一言] ´ω)あとがきでやっと「。」がない事に気付きました。 どうりでスラスラ読んでたわけだ! なかなかだと思います。 でも、やっぱり行の始めは一マス開ける事ですかね。それさえ出来たら文章と作品評…
2006/12/05 03:18 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ