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宰相の代名詞は地獄耳である。

短いです><


 目の前に倒れたアホ王子――アルヴィンを蹴りながら、居場所がばれた異様な速さについて考えていた。

 どう考えたっておかしいでしょ、なんでわざわざ王都から馬車で数時間の何の変哲も無いただの田舎村が、なんで私の隠れ家だって分かるわけ!? 水鏡で建設中は人の目を避けに避けて不可視魔法までかけて、壁塗り中だって部屋に篭って結界張りまくってたのに…! どうしてどうして、なんでばれるのよっ!? 今までは絶対ばれてなかったはず…


「…あ」


 あれ。

 言ってた?

 こっち来る直前…小声だったけど、私、はっきりと、「マグメル村」って。

 ……


「ま、まさかねー…あんなの、よっぽど地獄耳でなきゃ聞き取れないわ! そうよ、聞こえるわけないわ…」


 無理に明るく独り言したけど。

 地獄耳ならものすごく心当たりがある。っていうか、恐らくこのアホに情報垂れ流してくれちゃったのも多分ヤツだ。けどヤツはやらないと思ったのに…そんなキャラじゃないって、そんな口軽くないって、そんな私に興味ないって、信じてたのに…。

 地獄耳は、王宮では宰相ユリスモール・イーデンの代名詞といってもいい。

 無口無表情無感動と、なに考えてんだか全く分からない男。まるでギリシャ彫刻みたいな風貌はメイドたちに大人気で、ファンクラブまであるらしいけど私には分からない。言い換えれば冷徹を体現したようなイメージしかないからだ。

 そんな宰相ユリスモールにかかればマグメル村の位置特定、そして私が隠れ家を作るとすれば村のどの位置か、なんてものの数秒で出てしまうだろう。

 

「…ユーリの馬鹿やろー。なによなによ、こんなの送ってくんじゃないわよ!」


 私はやるせない気持ちと煮えたぎる怒りを吐き出すように、アルヴィンを蹴って王宮へ空間移動させた。









 よぉ。レナードだ。

 親友のアホ…失礼、アルヴィンがさっさと出て行ってしまったため、今から報告に行こうと思う。陛下も執務中でお忙しいとは思うが、アルヴィンが勝手な行動をしてしまったためにはしょうがないだろう。

 全く、困ったもんだ…と溜息しつつ、扉に手を掛ける。と、俺が開かないうちに向こうからやや乱暴に開けられ、小柄の少女が入ってきた。

 

「兄さん! 僕のお菓子食べたでしょ――…って、あれ?」


 淡い色の金髪を揺らし、紫色のつぶらな目で部屋をきょろきょろと見回す。タイミングを逃した俺は運悪く、少女と目が合ってしまった。


「レナード、兄さんは?」


 首をかしげて可愛らしく尋ねる少女。慣れぬ者ならきっと頬を赤らめるかナンパしだすかするのだろう、可愛らしいしぐさだ。ただ、瞳ははっきりと「正直に言え」と凄んでいるが。

 俺は密かに冷や汗を垂らした。


「アルヴィンならマグメル村の――」

「マグメル村ね。わかった」


 最後まで聞かずに、少女は入ってきたのと同じく乱暴に扉を開け、さっさと部屋を去った。少女がさったことに俺は胸をなでおろし、そしてまたソファに座る。


 俺はあいつが苦手だ。

 あの「少女」? ――いや。

 アルヴィンの弟、女装癖のあるエリシア王国第二王子エルヴィス。

 まるで女のように振舞うあいつがどうしても苦手だった。

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