無題詩19
農民は流行病で苦しみ、
武士は戦で殺され、
将軍は毒を盛られる。
たらちねの母は死に、
うつせみの命は枯れ、
八雲立つ出雲で世は終結する。
集結する餓鬼どもは、
地の獄で戦慄いて、
腐乱した肉を貪る。
血の匂いが鼻を刺し、
閻魔の怒号が耳を劈いた。
羽衣を使って天へ飛翔した。
卑小な僕を誰も救ってくれない、
天の国には天使はいない。
雲の間から日華が咲いた、
神々しい後光は差さず、
一輪の蓮が馥郁と香るだけ。
僕たちは。生きている。
僕たちは。生きている。
美しい落下を目指して。
美しい落下を目指して。
蝋の翼は燃え尽き、僕は堕ちていく――
蜘蛛の糸は千切れ、僕は墜ちていく――
嗚呼、これで――飛び立てる。
――僕は高層マンションから――そして、
ぶつっ。