第九羽 春の訪れ
冬が静かに幕を閉じ、森にやわらかな日差しが差し込むようになった頃。
ぽてえなは、こたつの中で丸くなったまま、じっと耳をすませていた。
彼女は…あれから一度も来ていない。
だけど、こたつもホットミルクセットも、キャンプ用の道具も、
全部そのまま同じ場所に残っている。
—まるで、
「また来るね」
と約束されたように。
ぽてえなはそれを、何度もこっそり確認していた。
ぷいっとしながら、目だけきょろきょろ動かして。
こたつの中は、まだほんのり暖かい。
冬の間はここでぬっくぬっく生き延びてきたけれど、
春が来て空気が変わると、外の匂いが気になり始める。
でも。
「……いやいや……」
出たくない。
外は広いし、風も吹くし、知らないものも多い。
何よりこたつを離れるのが、むり。
だけどほんの少し、
「また彼女が来るかもしれない」
そんな気持ちが、ぽてえなの背中をちょこっと押した。
気づくと小さな羽でそろりとこたつの端を押し上げ、
ぴょこんと顔を出していた。
外は明るい。
少しあたたかい。
雪は溶け、土と草の匂いがまざる春の香りがする。
「……むり……でも……ちょっとだけ……」
ぷいっと横を向きながら、
ほんの数歩だけ外へ踏み出すぽてえな。
こうして、
冬のこたつ依存生活から、
ゆっくりと新しい季節へ歩き出していく——。




