第八羽 ある日のぽてえな〜飛ばされた宝物〜
森の風が、春の入口みたいにそっと吹き抜けた。
こたつの中でぬくぬく丸まっていたぽてえなは、
ちょこっと首だけ出して外の様子をうかがう。
「……風……きらい……でも……ちょっと気になる……」
外の雪面には、里香が残していった空のホットミルク容のフタは紙でできた簡易なものである。
ぽてえなが大切にしている木の実のコレクションと並べてある。
その瞬間——
ふわっと大きな風が吹き込んで、
木の実も、紙くずも、フタも、ぜんぶ空へ飛ばされてしまった。
「!? ——むりむりむり!! まって!!」
羽をばっ!と広げて、
こたつから勢いよく飛び出すぽてえな。
でも一歩外に出た瞬間、
ぶるっ……と全身が震える。
冷たい風が羽に当たり、
「ぷいっ!」と反射的に後ずさる。
でも大事な宝物が飛ばされてしまった。
ツンデレでも、これは放っておけない。
「……ちょこ……ちょこ……(がんばる音)」
羽を縮めたり開いたりしながら、
雪面に落ちた木の実を追ってぴょこぴょこ跳ねる。
でも風がまたひゅっと吹けば、
木の実はくるくる回りながら遠くへ転がる。
「ぷ、ぷいぃ……!! なんで動くの……まって……!」
小さな足で雪を蹴り、
体をぐらぐらさせながら必死に追いかける。
飛んだフタは、ぽてえなの頭上でひらひら空を舞う。
それを見上げながら
「むりぃ……むりぃ……高い……」
と半泣きみたいに羽を震わせる。
それでも、諦めたくない。
頑張って風の向きを読んで、
タイミングを合わせて飛び上がり——
ぱしっ。
頭の上にフタが乗った。
ぽてえなは固まる。
そっと視線だけで上を確認する。
「……とれた……? ……とれた!!」
雪の上に着地すると、
そのままフタを抱えてころんと転ぶ。
「……ぬっく……(安心の声)」
冷たい風に負けて涙目になりながらも、
宝物をひとつずつ回収してこたつの中に戻る。
丸まってぷいっと背を向けながら、
でもほんの少し誇らしげ。
「……がんばった……わたし……むりじゃなかった……」
羽をちょこっ、と震わせて、
こたつの暖かさにとろけるように沈んでいく。




