第三羽 陰の優しさ
ぽてえなは、気づけばそこを自分のおうちにしていた。
こたつの布にくるまり、
マグカップの底に残ったミルクの香りを楽しみ、
夜は焚き火跡の灰の近くでぬくぬく眠る。
本来、雪の森を飛び回り、仲間と寄り添って生きるはずのぽてえな。
なのに今は、
暖かさ > 本能
になってしまっていた。
だって、こたつは安心だった。
ホットミルクの香りは幸福だった。
そして何より――
ひとりでも、寂しくなかった。
ぽてえなは毎朝、こたつの中でぽかぽかしながら羽をふくらませ、
それが当たり前の日常になっていった。
でもある日。
こたつが――
ふっ…
と静かになった。
あの温かさが、消えた。
ぽてえなは布の中で小さく震える。
不安、焦り、胸に広がる冷たい感覚。
「……こたつ……?」
体はふるえ、外の世界に出る勇気もすぐには出ない。
でも寒さに負けて、ぽてえなは外へ出た。
外は冬の風。
雪の森の空気は澄んで、美しいけれど厳しい。
ぽてえなの体は震える。
けれど、そこで――
人間が戻ってきたのを見た。
慌てた様子で跡地を確認し、
壊れたこたつの近くにしゃがみ込み、
凍った手で電池を取り替え、直している。
息を白くしながら、
焚き火にも火を入れている。
ぽてえなは木の影からそっと見ていた。
こたつがまた光り始めた。
焚き火がぱちぱちと音を立てた。
ホットミルクの甘い香りが再び空気に混ざった。
人間はそしていなくなった。
ぽてえなの胸がぎゅうっと熱くなる。
「わたしのため……じゃないよね」
その瞳は、こたつの灯りよりも綺麗に輝いていた。




