表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/23

第二十二羽 ありがとうの続き

山のふもと。


風は冷たくない。

春の匂いがする。


里香は、ぽてえなを両手でそっと包み込んでいた。


強くはしない。

逃げ道を残すように。


「……いっておいで」


声は、小さかった。




手が、ひらく。


ぽてえなは、最初、何が起きたのかわからなかった。


あれ?

ここ、ぬっくじゃない。


地面。

空。


「……?」


反射的に、里香のほうへ戻ろうとする。




「……」


里香は、何も言わず、

ただ手を振った。


にこっと笑って。




そのとき、ぽてえなは察した。


わからないけど、

わかってしまった。


これは、お別れなんだ。


胸が、きゅっと縮む。




ふと、思い出す。


雪の地面。

指で書かれた、あの文字。


「ありがとう」


読めなかったけど、

あたたかかった。




ぽてえなは、地面に降りる。


小さな足で、

必死に書いた。



「あ」という文字を。


形にならない。

でも、いい。


伝えたいだけ。




里香は、それを見た。

拙い「あ」という文字だった。

その先はなかった。

でも里香には何を言いたいのかすぐ分かった。



そして、

泣いた。

溢れる涙。


声を出さずに、

静かに。




ぽてえなは、もう振り返らない。


羽を広げる。


春の風が、背中を押す。




空へ。


高く、高く。


山のほうへ。




里香は、見えなくなるまで手を振っていた。


ぽてえなは、飛びながら思う。


こたつも。

ホットミルクも。

いらない。


心の中に、

ちゃんと、ぬっくがある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ