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第二十羽 ぬっくの手

夜の町は、落ち着かない。


音が多くて、

光が強くて、

風の流れが、森とちがう。


ぽてえなは、電線の上で羽をすぼめていた。


「……むり」


下を見ないようにして、

上も見ないようにする。


そのとき。


ごうっと、強い風が吹いた。


「……っ」


体が、持っていかれる。


羽を広くしようとして、

うまくいかない。


ぽてえなは、そのまま落ちた。


「——あっ!」


声がした。



地面にぶつかる前に、

やわらかい何かに包まれる。


あたたかい。


「だいじょうぶ……?」


人間の声。


ぽてえなは、びくっと体をこわばらせる。


「……足、少し擦れちゃったね

お家で手当てしてあげるね」


怖い。

でも、逃げられない。



里香は、そっと手のひらを閉じた。



強くはしない。

ただ、風をよけるように。


「怖くないよ、もう大丈夫だよ」


その声に、

ぽてえなの胸が、きゅっとなる。



——知ってる。

あの時の人間だ。



家に着くと、

里香は小さなカゴを用意した。


布を敷いて、

ぽてえなを包む。


「……これでいいかな」


ぽてえなは、じっとしている。


逃げない。

でも、近づきもしない。


「……ぷいっ」


小さく顔をそむける。

「ふふ、かわいい」

里香はキッチンへ。


キッチンから、音がする。




水を温める音。

カップを置く音。



「……!」



ぽてえなの目が、きらっとする。


におい。


あの、ぬっく。


里香は、少し冷ましたホットミルクを

小さな容器に入れて、そっと近づけた。


「少しだけね」


ぽてえなは、迷った。


人間。

知らない場所。

でも——


「……ぬっく」


ちょん、とくちばしをつける。


あたたかい。


お腹の奥まで、

じんわり広がる。


気づいたら、

飲み終わっていた。



胸も、

お腹も、

いっぱい。



ぽてえなは、羽をゆるめる。


里香のほうを、ちらっと見る。



里香は、微笑んだ。



「笑った...」



「……なんか」


心が、落ち着く。

ぽてえなは、布の中で目を閉じた。


——あの冬の、

ぬくもり。


思い出じゃない。


ここにある。


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