第十九話 町へ
町の木々は、音が違う。
風じゃない音。
水でも、葉っぱでもない。
ぽてえなは、少し高いところを飛んでいた。
「……ん」
下から、声がする。
硬い道を歩く音。
遠くで鳴る、知らない音。
怖い。
でも、止まらない。
枝から枝へ。
いつの間にか、木が減っている。
土の色が変わる。
匂いも、少し違う。
でも——
「……ぬっく」
あのにおいが、
ときどき、混ざる。
ぽてえなは、屋根の上に降りた。
つるつるして、変な感じ。
でも、あたたかい。
見下ろすと、
人間がたくさんいる。
動いて、しゃべって、
それぞれの場所へ帰っていく。
「……ひと、いっぱい」
胸がきゅっとする。
ぷいっとそっぽを向いて、
でも、飛ばない。
夕方。
町に、灯りがともる。
ひとつ、またひとつ。
窓の向こうで、
湯気が立つ。
「……!」
ぽてえなの羽が、ぴくっと動く。
追いかけるつもりはなかった。
でも、
あのぬっくの気配を見失いたくなくて。
気づいたら、
森はずっと後ろにあった。
夜。
静かな場所を探して、
電線に止まる。
下に見える、小さな部屋。
灯りがついている。
カップを持つ人影。
ぽてえなは、息をひそめた。
「……ここ?」
わからない。
でも、不思議と逃げたいとは思わなかった。
遠くで、風が吹く。
森の匂いは、もう薄い。
それでも。
胸の奥は、
あの冬より、ずっとあたたかい。
ぽてえなは、羽をたたんだ。
「……ちょっと、ここ」
今日は、ここまで。




