第十八羽 暖かい気配
春の森は、よく飛べる。
雪はすっかり消えて、
風は冷たくない。
ぽてえなは、なんとなく高いところを飛んでいた。
目的はない。
ただ、羽が軽かった。
そのとき。
においがした。
「……?」
甘くて、やさしい。
どこかで知っているにおい。
火のにおい。
湯気。
あの、ぬっく。
ぽてえなは、木の枝に止まる。
下のほうで、
人間たちが何かをしている。
布を張って、
丸い道具を並べて、
笑いながら、座っている。
——キャンプだ。
「……ひと」
胸が、きゅっとなる。
怖い。
でも、逃げない。
火がゆらゆらしている。
マグカップを両手で包んで、
人間が息をふーっと吹きかける。
白い湯気が、空にのぼる。
「……これ」
ぽてえなの羽が、すこしだけ震えた。
飛び去ろうとして、
やめた。
前に出て、
また引っ込む。
「……ぷいっ」
でも、目は離せない。
ぽてえなは、少しずつ近づいた。
枝から枝へ。
屋根の上。
電線。
森の外へ。
気づいたら、
人里が見えていた。
知らない場所。
知らない音。
でも、あのぬっくの気配は、
まだそこにある。
ぽてえなは、遠くからキャンプを見ていた。
ついていってしまったことに、
あとから気づく。
「……まぁ、いっか」
羽をたたんで、そう思った。




