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第十七羽 月夜の羽化


ある日の月夜。

森は音をひそめ、光だけが枝を照らしていた。


ぽてえなは、いつものように

あの風の当たらない枝に止まり、

さなぎを見守っていた。


何も起きない時間に、もう慣れていた。

待つことは、怖くなくなっていた。



——そのとき。



さなぎが、ふっと揺れた。


音もなく、殻がひらく。

月の光を受けて、

そこから一羽の蝶々が生まれた。


ゆっくりと羽を広げ、

夜の空気を確かめるように一度だけ舞う。


蝶々は、ぽてえなのほうを向いた。


小さく、会釈して。

にこっと、笑った。



言葉はない。

でも、それで十分だった。



蝶々は月の光の中へ、

静かに、まっすぐ飛んでいった。





ぽてえなは、追わなかった。


枝に止まったまま、

その後ろ姿を見送る。


胸の奥に、寂しさが広がる。

でも、不思議と冷たくはなかった。



「……ありがとう」



声には出さず、心の中でそう言った。


月は変わらず、やさしく光っていた。


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